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南シナ海で台風19号発生 日本の南には20号と21号になるかもしれない熱帯低気圧

饒村曜気象予報士
3つの熱帯低気圧に伴う雲(10月14日0時)

令和4年(2022年)の台風

 フィリピンの東海上では、インド洋から南シナ海を通ってやってくる西風と、太平洋高気圧の南へりをまわる東風がぶつかり、モンスーントラフと呼ばれる気圧の低い領域ができています。

 ここで、熱帯低気圧が発生し、その熱帯低気圧が台風に発達するのですが、ラニーニャ現象がおきると、モンスーントラフの位置が平年より北西にずれます。

 このため、ラニーニャ現象のおきている今年、令和4年(2022年)8月から9月の台風の発生場所は、例年より北西、つまり、日本に近い海域にずれています。

 日本に近い海域での発生ですから、日本に影響する可能性は高くなります。事実、令和4年(2022年)9月の台風は日本の近くで発生し、日本に毎週のように影響しました。

 9月に発生した7個の台風のうち、6個が接近しています(表1)。

表1 令和4年(2022年)の台風発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風で月をまたぐ場合があり、月の値の合計は年の値より大きくなることもある)
表1 令和4年(2022年)の台風発生数・接近数・上陸数(接近数は一つの台風で月をまたぐ場合があり、月の値の合計は年の値より大きくなることもある)

 台風18号が10月2日に日本の東で温帯低気圧に変わり、日本付近には寒気が南下し、多くの地方で11月から12月の寒さになったあと、10月らしい気温に戻っています。

 しかし、日本の南海上ではまだまだ夏です。

 10月前半こそ対流活動が不活発でしたが、ここへきて、熱帯域の対流活動が再び活発になってきました。

 そして、南シナ海、日本の南、マリアナ諸島の東には、熱帯低気圧が発生し、タイトル画像の円の位置にいます。

 熱帯低気圧が発達して台風になれば、台風19号、台風20号、台風21号ということができます。

南シナ海の熱帯低気圧

 3つの熱帯低気圧のうち、南シナ海にある低気圧は、西進しながら発達し、まもなく台風19号になる見込みです(図1)

図1 南シナ海の熱帯低気圧
図1 南シナ海の熱帯低気圧

 台風が発達する目安とされる海面水温は27度ですので、これよりも高い海面水温の海域を西進中ですが、あす15日にはベトナムに上陸し熱帯低気圧に変わる見込みです。

 このため、日本には影響がないと思われます。

マリアナ諸島の東の熱帯低気圧

 少し古い資料ですが、図2は、筆者が調査した10月の台風の平均経路です。

図2 10月の台風の平均経路
図2 10月の台風の平均経路

 これによると、10月に南シナ海に発生する台風は、気象庁が発表している熱帯低気圧の予報のように、西進してベトナムに上陸するものが多くなっています。

 また、マリアナ諸島の東で発生する台風は、まっすぐ北上し、その後向きを東に変えるものが多くなっています。

 気象庁は、マリアナ諸島の東の熱帯低気圧について、24時間後までに台風に発達しないとして進路予報は行っていませんが、発表している48時間予想天気図をみると、そのまま北上させています。

 マリアナ諸島の東の熱帯低気圧も、日本への影響はなさそうです。

 日本に影響があるとすれば、日本の南の熱帯低気圧です。

【追記(10月14日18時)】

 気象庁は、南シナ海の熱帯低気圧を、10月14日15時に台風19号に発達させました。

 また、マリアナ諸島の東の熱帯低気圧を、24時間以内に台風に発達すると発表しました。

日本の南の熱帯低気圧

 日本の南の熱帯低気圧について、24時間後までに台風に発達しないとして進路予報は行っていませんが、発表している48時間予想天気図をみると、ゆっくり西進させています(図3)。

図3 予想天気図(10月15日9時の予想)
図3 予想天気図(10月15日9時の予想)

 統計的には、この海域の台風はほとんどが西進しますが、中には北上して南岸を通るものがあります。

 平成13年(2001年)以降の台風上陸数をみると、9月に上陸した台風の数が、ほぼ8月に上陸した台風の数に近くなり、10月に上陸した台風の数も7月並みの上陸数となっており、秋に上陸する台風が増えています。

 とはいえ、10月も半ばに差しかかろうとしています。

 これから台風が発生し、上陸するとなると、上陸日時が遅い台風のランキングに入ってきます(表2)。

表2 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)から令和3年(2021年))
表2 上陸日時が遅い台風(昭和26年(1951年)から令和3年(2021年))

 上陸の可能性は少ないといっても、影響がないというわけではありません。

 気象庁では、沖縄県に対し、10月17日と18日は、大雨、暴風、波浪の警報を発表する可能性が「中」という早期注意情報を発表しています。

 また、日本の南海上の熱帯低気圧は、北側に広い雨雲を伴っており、南海上からの暖かくて湿った空気を北上させ、大雨の可能性があります。

 熱帯低気圧の動向によっては雨量が変わってきますので、最新の気象情報に注意してください。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図3、表1、表2の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:饒村曜(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計(第2報)進行速度、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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