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韓国は南北・米朝首脳会談をどう見ているか?

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
11日、南北首脳会談準備委員会で発言する文在寅大統領。写真は青瓦台提供。

27日に行われる南北首脳会談を控え、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が心境を明かした内容は、韓国の立ち位置を最も分かりやすく説明する内容であった。

南北首脳会談準備委員会での挨拶

11日午後、青瓦台(韓国大統領府)で5回目となる南北首脳会談準備委員会が開催された。

「2018南北首脳会談」(これが韓国政府による正式名称)の成功のため、3月15日に組織された同委員会は、大統領秘書室長が委員長を務め、外交部、統一部、国防部の長官などが参加するなど文字通り「国を挙げた」組織だ。会議は非公開で行われる。

今回が3度目の出席となる文大統領はこの日、冒頭で挨拶を述べた。昨年5月の就任後から、「対話のための制裁」、「南北関係の改善」、「平和」の原則を貫き、現在の朝鮮半島の対話局面を作った立役者だけあって、その発言は示唆に富むものだった。

文大統領はまず「南北首脳会談まで今後、15日を残すのみ」とし、「今日(11日)から準備委員会の下に総合状況室を設置し、部署別に日々の点検態勢を整えるよう」注文した。

これは、南北首脳会談の準備段階が一段階上がり本格化したことを示している。3月以降、北朝鮮との間で3度の実務会談を行い、それ以外にも板門店をはじめ、各チャネルを通じた接触を行い、韓国政府は着々と準備を進めてきた。

また、12日に行われた「世宗国家戦略フォーラム」で趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官は「20日からは現場体制になる」と明かした。

文大統領はまた、「私たちが先頭に立って、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和、南北関係の持続可能な発展という世界史の大転換を始めようと思う」と語った。

これは韓国政府の朝鮮半島政策そのものであり、南北間で公式化された今回の首脳会談の議題でもある。

続く「皆が夢見てきたが、まだ誰も成し遂げることのできなかった目標だ。私たちが分裂と対立を超え、平和の新しい歴史を描くという悲壮な覚悟と自信が必要だ」という発言からは、韓国政府の並々ならぬ意気込みが見て取れる。

12日の南北首脳会談準備委員会の様子。政権中枢の幹部たちが多く出席した。写真は青瓦台提供。
12日の南北首脳会談準備委員会の様子。政権中枢の幹部たちが多く出席した。写真は青瓦台提供。

様々な「スタートライン」

文大統領はさらに、「一度に多くの問題を全て解決するという過剰な意欲で臨むよりも、今回の南北首脳会談を契機に、長いあいだ断絶していた南北関係を復元し、平和と繁栄の朝鮮半島に向かうしっかりとした礎石を設置するという思いで臨むことを願う」と語り、首脳会談をあくまでも「スタートライン」と位置付けた。

その上で、「今回の南北首脳会談は、史上はじめての米朝首脳会談へとつながる予定」と語った。これは、下記に述べる核心的な問題を解決する「当事者」である米朝両国の会談を成功させるため、「仲介者」としての韓国の役割を強調したものだ。

米朝首脳会談については「米朝首脳会談で朝鮮半島の非核化という目標の達成と、これを通じた恒久的な平和定着に大きな第一歩を踏み出す成果があると期待する」と明かした。「非核化(体制保障)」と「平和定着」は米朝会談の議題だ。

文大統領は最後に、「私たちは南北首脳会談が米朝首脳会談の成功につながるよう、良い道案内の役割を果たせるよう準備しなければならない」と述べた。

韓国の現政権は、南北関係の改善と非核化の進展は切っても切り離せないものと考えている。今回の首脳会談は過去2度(00年、07年)の南北首脳会談とは異なる意味合いだ。11年ぶりとなる象徴的な南北首脳会談でもあり、米韓をはじめ各国首脳の任期が比較的長く残っていることから、「次」に向けた整備を含む実務的な会談でもあることがよく分かる。

文在寅大統領発言全文(2018年4月11日、南北首脳会談第5次準備委員会)

南北首脳会談まで今後、15日を残すのみです。その間、準備委員会で議題と協議における戦略、行事の運営、また、国民向けの疎通(コミュニケーション)などをしっかりと準備してきました。お疲れ様でした。これからがより重要です。会談が開かれる日まで、議題と戦略をより整え、さらに細部の日程ひとつひとつまで抜け目なく準備しなければなりません。今日から南北首脳会談準備委員会の傘下に、会談準備のための総合状況室を設置し、総合状況室を中心に、部署別に日々の点検態勢を整えてください。

現在、私たちは朝鮮半島の平和と繁栄のための長い旅程のスタートラインに立っています。私たちが先頭に立って、朝鮮半島の完全な非核化と恒久的な平和、南北関係の持続可能な発展という世界史の大転換を始めようと思います。皆が夢見てきたが、まだ誰も成し遂げることのできなかった目標です。私たちが分裂と対立を超え、平和の新しい歴史を描くという悲壮な覚悟と自信が必要です。しかし、一度に多くの問題を全て解決するという過剰な意欲で臨むよりも今回の南北首脳会談を契機に、長いあいだ断絶していた南北関係を復元し、平和と繁栄の朝鮮半島に向かうしっかりとした礎石を設置するという思いで臨むことを願います。

私たちの前に見える機会が大きいほど、その挑戦もまた厳重であるという認識を持って、最後の瞬間まで緊張しながら切実な想いを持って、慎重かつ着実に準備していかなければならない。特に今回の南北首脳会談は、史上はじめての米朝首脳会談へとつながる予定です。米国と北朝鮮は時期、場所、議題などを具体的に議論しながら、互いに意志と誠意を持って首脳会談を準備していると聞いています。特に両国が意志を持って準備していることから、米朝首脳会談で朝鮮半島の非核化という目標の達成と、これを通じた恒久的な平和定着に大きな第一歩を踏み出す成果があると期待します。その目標のために私たちは南北首脳会談が米朝首脳会談の成功につながるよう良い道案内の役割を果たせるよう準備しなければならないでしょう。

南北首脳会談自体の成功だけでなく、米朝首脳会談の同時成功につながるようにしながら、役割を果たす有機的な関係に対し格別な関心を持ってくれるよう願います。外交部と安全保障室など関連する部署は、米国と緊密に情報を交換し、疎通し、また協議してくれるよう願います。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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