史上最悪の「改正」に抗議、「人が人に行うことじゃない」―国会前で入管法改悪反対アピール
国連の人権専門家達から「国際人権規約に反する」と酷評された入管法「改正」案が本日16日、衆議院で審議入りする予定だ。難民排斥や外国人差別の要素が強く、「史上最悪」とも言われる入管「改正」案の審議入りに、今週15日、国会前で法案に反対するリレートークが行われた。
○入管法「改正」案の問題視される点
法務省/入管庁が今国会での成立を目指す入管法「改正」案。その問題点はいくつもあるが、特に批判されているのが以下の点だ。
・難民等の帰国できない事情を持つ外国人の人々が強制送還を拒んだ場合に刑事罰を科す
・難民条約等の国際法に反して難民認定申請者を強制送還できるよう例外規定を設ける
入管法「改正」案は、国内の専門家やNGOからのみならず、国連の特別報告者達や国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会からも、厳しく批判されている。
そもそも、日本の入管行政の問題として、紛争地などから命からがら避難してきた難民や、日本人と結婚する等、日本に家族がいる外国人の人々に、法務省/入管庁が不当に在留許可を与えず「不法滞在」扱いしていることがある。入管庁の調査でも、退去強制を命じられた外国人の9割以上が自主的に帰国しており、「送還忌避者」、つまり帰国を拒む人々の多くは、上述のような事情がある人々だ。つまり、入管法「改正」案は、本来、保護したり在留資格を与えたりするべき人々を「犯罪者」扱いし、実際に強制送還したり刑罰を与えたりするというものなのだ。
○国会前でアピール
今月15日の夜、国会前で「『入管法改悪に反対する緊急アクション』 国会前スタンディング&リレートーク」 が行われた。集まった約450人の人々を前に、弁護士や若者、国会議員らがそれぞれの思いを訴えた。
20数年にわたり入管問題に取り組んできた児玉晃一弁護士は「イギリスを視察して、日本との入管行政の違いに驚いたのと同時に、日本の入管がおかしいと確信した」*1と言い、「日本が全件収容主義*2を撤廃し、国際水準に従い難民を受け入れるようになるまで諦めない」との決意を語った。
在日外国人への支援活動をおこなっている「特定非営利活動法人 移住者と連帯するネットワーク」代表理事の鳥井一平さんもマイクを握り、「入管法改悪に抗議する国会前での座り込みを16日から開始する」と宣言した。
入管問題に取り組む有志の個人のネットワーク「#FREEUSHIKU」からは、フジイクミコさんが発言。「入管職員の『制圧』でアフリカ系の外国人の方が亡くなったのを、ニュースで見て、日本の入管はやばいと思った」*3と自身が入管問題を取り組むきっかけを振り返り、「ネットでも入管問題がやっと盛り上がってきた」と語った。
女性への差別や暴力に取り組む若者達の団体「VOICE UP JAPAN」の早稲田大学支部からは共同代表の蛭田ヤマダ理紗さんが発言。「(入管がやっていることは)人が人に対して行うことじゃない。問題を知ったら、一緒に声を挙げてくれる人がほとんどのはず」「自分のことだけではなく、他人のために涙を流して社会をより良くしていく政治を求めます」と呼びかけた。
立憲民主党、共産党、社民党の国会議員もリレートークに参加。「難民問題に関する議員懇談会」会長の石橋道宏参議院議員は、参院に入管法改正の対案を提出したと報告*4。「野党がまとめた難民等保護法案、本来あるべき日本の難民保護制度というものを、有識者や支援団体とみんなで話しあって一緒につくったもの。国際基準で言えば、本来難民として認められる人々、命の危険がある人々が日本から追い返されている現状を変えていきたい」と決意を語った。
(了)
*1 児玉弁護士のイギリス視察については以下参照。
https://www.refugee.or.jp/report/refugee/2016/04/detention_interview/
*2 全件収容主義とは、在留資格が無い状態の外国人を一律に収容施設に収容するというもの。これに対し、日本も支持した国連文書「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」では、「収容は最後の手段」として、収容以外の代替措置を行うことを推奨している。
*3 ガーナ国籍スラジュさんが強制送還中に死亡した事件。詳細は「APFS スラジュさん事件」(関連情報)を参照。
*4 野党有志の入管法改正の対案はこちら