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王者・渡辺明王将が貫禄の防衛か? A級昇級で勢いに乗る永瀬拓矢挑戦者が追いつくか? 王将戦第6局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月13日9時。島根県大田市・さんべ荘において王将戦七番勝負第6局▲永瀬拓矢王座(28歳)-△渡辺明王将(36歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 七番勝負は渡辺王将3連勝のあと、永瀬挑戦者が2連勝を返しています。

 長い将棋界の歴史で、3連敗のあと4連勝を返した例は、ただの2回しかありません。

 永瀬挑戦者がその偉業を達成し、初の王将位を獲得するのか。

 それとも渡辺王将がここで決めるのか。もし渡辺王将が防衛すれば、王将位は通算5期目の王将位獲得となります。

 本局の記録係を務めるのは高田明浩三段。高田三段は今期三段リーグを勝ち抜き、新年度4月には四段としてデビューします。

 本局の立会人を務めるのは福崎文吾九段(61歳)です。

「定刻になりました。第70期王将戦七番勝負第6局は挑戦者永瀬王座の先手でお願いします」

 定刻9時。福崎九段が対局開始の合図をして、両対局者は一礼しました。

 永瀬挑戦者先手で、戦型は角換わりに進みました。

 永瀬挑戦者は攻めの銀を手早く前線に繰り出す「早繰り銀」を採用しています。

 対して渡辺王将は銀を中央5筋に据える「腰掛銀」に構えたあと、それを引いて「銀矢倉」にスイッチ。銀交換に進みました。これは2日前におこなわれたB級1組最終戦▲永瀬王座-△近藤誠也七段戦と同様の進行です。

 永瀬王座は勝ってA級昇級を決めました。

 永瀬王座が抜けたあとのB級1組には、藤井聡太二冠が入ってきます。

 来期B1のメンバーを眺め、あれこれ考えているだけでワクワクしてくる、というファンの方も多いのではないでしょうか。

 45手目。永瀬挑戦者は渡辺陣に角を打ち込みました。これで先日の▲永瀬-△近藤戦とは違う進行です。対して渡辺王将はすぐに金を上がります。

 永瀬挑戦者が飛車先の歩を交換したのに対して、渡辺王将は手堅く銀を打って受けます。永瀬王座が飛車を元の位置に引き上げると、52手目、すぐに飛車の頭に歩を打ちました。

 開始からわずか1時間と少し。この52手目が2日目の局面と言われても、まったくおかしくはなさそうなところです。進行の早さからして、両対局者ともにここまでの事前準備は万端とうかがえます。

 53手目。永瀬挑戦者は22分考えて歩を取ります。対して渡辺王将は、今度は低く歩を打って受けました。

 10時54分。

「永瀬先生1時間使われました」

 記録係の高田三段がそう告げました。「はい」と答える永瀬挑戦者。少しして、飛車をまた元の位置に引きました。渡辺王将は銀冠の堅陣に玉を収めます。

 時刻は11時を過ぎました。この先はスローペースになるのかもしれません。

 王将戦七番勝負の持ち時間は各8時間(60秒未満は切り捨て)。1日目は昼食休憩をはさみ、18時に手番の側が次の手を封じて指しかけとなります。

 さんべ荘は、王将戦ではなじみのある対局場です。

 本局では、どのような勝者写真が撮られるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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