なぜ今PTAのスリム化が求められるのか? 児童・保護者数は約3割減っている
昨今、保護者にとってPTA活動の負担が大きいことが話題になっています。
活動を見直してスリム化する動きが全国的に広がりつつありますが、なぜいま、PTAのスリム化が必要とされるのでしょうか?
改めて、データを基に考えてみたいと思います。
*1つのPTAを構成する家庭数は、3割程度減少
理由はいくつかありますが、大きな要因としてまず、子どもの数が減っていることがあげられるでしょう。子どもの数が減れば当然、保護者の数も減りますから、1つのPTAを担う保護者も減ります。
こちらは日本にPTAがつくられはじめた頃から昨年度(2015年度)までの、小学校児童数の推移を表したグラフです。
第2次ベビーブームによる児童数のピークは1981年度(昭和56年度)で、約1200万人。ちょうど、いまの保護者世代が子どもだった時代です。それがいま、2015年度(平成27年度)は約650万人ですから、半分近くに減っていることになります。
といっても、学校の統廃合も進んでいますから、1つの学校の児童数がそのまま半分近く減っているわけではありません。
では、1校当たりの子どもの数はどれくらい減っているのでしょう?
上のグラフは、1校当たりの平均児童数を、児童数ピークの時期といまとで比較したものです。1981年度の学校数が25,005校なので、平均児童数は472人、2015年は20,601校なので平均児童数は317人。つまり、1校当たりの児童数は平均して3分の2くらいに減っていることがわかります。
ついでにもう少し詳しく見てみましょう。こちらは、1981年度と2015年度で、児童数別に小学校数を比較したグラフです。昔は多かった700人以上の大規模校(全体の3割)が、いまはとても少なくなっている(全体の8%)ことがわかります。
(蛇足ながら、昔もいまも小規模校が思いのほか多いことにも驚かされます。平成27年度で、100人未満の小学校が全体の2割弱を占めます)
家庭数は児童数と一致しませんが(児童数より家庭数のほうが少ない)、減少率で考えれば、おそらくさほど変わらないでしょう。
そうするとやはり、1つのPTAを構成する保護者数も、3割程度は減少していると考えられます。
*1クラスの保護者数も減少
さらにもうひとつ、1学級当たりの児童数(保護者数)が減少している点も見逃せません。
いまも多くのPTAでは「1クラスから委員を必ず何名出す」などといった決まりがありますが、1クラス当たりの保護者が減れば、その分、1人の保護者が委員になる確率もアップすることになります。
これは1クラス当たりの平均児童数を、1981年度と2015年度で比較したグラフです。1981年度、全国の小学校のクラス数は計354,070学級なので、1クラスの平均児童数は33.4人、2015年は272,255学級なので、平均児童数は24人。
つまり、1クラスあたり約9人は保護者が減っていることになります。
これももう少し詳しくみてみましょう。こちらは1981年度と2015年度で、児童数別に小学校のクラス数を比較したグラフです。
1981年度には36~45人のクラスが全体の6割を占めていますが、2015年度には25~35人のクラスが全体の半分を占めます。
委員会の数は、PTAごとに多少の増減があるとは思いますが、おおよそ変わらないでしょう。仮に1クラス当たり6人の委員を選ぶPTAの場合、1981年度には当たる確率が18%だったところ、2015年度は25%ですから、4分の1の確率になっています。
さらにいつの頃からか、ほとんどの小学校のPTAにおいて「子どもが在学する6年の間に必ず1度は委員をやる」という不文律が定着しました。1981年度に保護者だった人(筆者の母ですが)に聞いたところ「当時はそんなルールはなかったと思う」と言っていましたので、おそらく、途中で広まってきたルールなのでしょう。
こうなってくると、保護者にとってPTA活動を「やらない」という選択肢はますますなくなるため、「やらされ感」が増し、PTAが嫌われることにつながったのではないか……と、推測されます。
と、このようにPTAを担う保護者の数が減り、さらに1人の保護者が委員になる確率が上昇していることを考えると、いまPTAに活動のスリム化が求められるのは、やはり必然のように思われます。
次回は、PTA活動を取り巻く環境の変化を、また別の切り口から見ていきたいと思います。