なぜ久保建英とソシエダは好調を維持できているのか?10年ぶりのCLの舞台…躍動する新たなトリデンテ。
久しぶりの欧州の舞台で、躍動している。
レアル・ソシエダが好調だ。チャンピオンズリーグ・グループステージ第3節、ソシエダはアウェーでベンフィカと対戦。ブライス・メンデスの決勝点で、1−0で勝利している。
「我々のチームは、10点満点の出来だった。攻撃、守備、両面においてね。ボールプレーを楽しむことができた。スコアを見れば、3−0で勝っていてもおかしくなかった。ラ・レアルのファンが、このチームを誇りに思ってくれたら嬉しい。勝利という結果ではなく、どのように戦ったか、でね」と語るのはイマノル・アルグアシル監督だ。
「ベンフィカ戦のようなゲームでは、多くのことをうまくやらなければいけなかった。どれか一つに絞るのは難しい。彼らのような手強い相手に、良い試合をするには、何か一つをうまくやってもダメだ。チームは素晴らしい仕事をしてくれた」
■ソシエダの新たなトリデンテ
イマノル・アルグアシル監督は今季、【4−3−3】を基本布陣としている。昨季の【4−4−2】中盤ダイヤモンド型のフォーメーションをやめて、3トップシステムを採用した。
布陣変更の背景には、ダビド・シルバの引退があった。昨季終了間際、ソシエダと1年の契約延長で合意したD・シルバだが、この夏にひざの前十字靭帯を断裂。急転直下、引退を決意する運びとなった。
D・シルバが不在となり、イマノル監督はトップ下を置かないようになった。だがそれは思わぬ形で恩恵をもたらすことになる。
今季のソシエダは3トップが躍動している。久保建英、ミケル・オジャルサバル、アンデル・バレネチェアの3選手で、ここまで13得点を挙げている。
■オジャルサバルの復調
なかでも大きかったのはオジャルサバルの復調だ。
オジャルサバルは2022年3月にひざを負傷。2022年12月31日のオサスナ戦で復帰するまで、289日間の離脱を強いられた。復帰してからも、なかなかコンデイションが上がってこなかった。それでもイマノル監督は「ミケル(オジャルサバル)はラ・レアルの歴史において史上最高の選手の一人。彼に欠けているのは負傷する前の数字だけだ」と擁護を続けていた。
イマノル監督は現在、オジャルサバルを3トップの真ん中に配置している。両サイドに久保(右)、バレネチェア(左)と突破力のある選手が揃っており、彼らがドリブルで相手を引き剥がして中央にボールを送ってくれるので、オジャルサバルのシュート機会は増えている。それがつまり、ゴールに繋がっているのだ。
オジャルサバルは今季、公式戦13試合で5得点1アシストをマークしている。
■ブライス・メンデスのパフォーマンス
そしてソシエダで爆発している選手が、もう一人、いる。ブライス・メンデスである。
B・メンデスは昨年夏、移籍金1400万ユーロ(約21億円)でセルタからソシエダに移籍。ソシエダとしては決して安くない移籍金を支払い、B・メンデスの獲得を決めた。昨季は序盤戦で大活躍。だがカタール・ワールドカップ以降、シーズン後半戦では失速した。久保やD・シルバ、ミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディほどの存在感は見せられなかった。
だが今季、D・シルバが抜けたこともあり、B・メンデスは右のインテリオールで定位置を確保。ここまで、公式戦13試合で5得点5アシストを記録。チャンピオンズリーグでは3戦連発弾でチームに勢いをつけている。
■手応えと掴んだ自信
ソシエダは昨季、ヨーロッパリーグのグループステージで、敵地オールド・トラフォードでマンチェスター・ユナイテッドを撃破している。決勝トーナメントではジョゼ・モウリーニョ監督のローマに屈したが、強豪相手に戦えることを証明した。
今季のチャンピオンズリーグで、ソシエダは初戦でインテルと対戦している。1−1の引き分けに終わったが、昨季のファイナリスト相手に善戦して自信を掴んだ。「僕たちは誰が相手でも戦えると思っていた。どのチームと対峙しても、自分たちが劣っているとは考えない。もちろん、自分たちが優っているとも思わないけれどね」とはB・メンデスの言葉だ。
「僕たちにとっては、1試合1試合がファイナルだ。チームが上位にいるのを見るのは嬉しいけど、大事なのは(グループステージの)6試合が終わった時に、どの位置にいるかだと思う。現在の順位は関係ない。僕たちは成長を望んでいる。毎試合、全力で臨む。そして、どこまで行けるか、見てみよう」
ソシエダは、欧州では、まだ“無名”である。今季、およそ10シーズンぶりにチャンピオンズリーグの舞台に立った。
そのソシエダが、欧州で2度頂点に立った経験があるベンフィカを圧倒した。その意味は小さくない。
久保の活躍は素晴らしい。ただ、久保だけではないチームが、そこにはある。