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『スノードロップの初恋』で死神と恋をする小野花梨。実力派が恋愛ドラマのヒロイン役に考えたこと

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)カンテレ

人間界に降り立った人を愛したことがない死神と、人に尽くしてばかりの女性のラブストーリーとして話題を呼ぶドラマ『スノードロップの初恋』。国宝級イケメンで連ドラ初主演の宮世琉弥の相手役を務めるのは小野花梨。出演作が相次ぐ中で心に残る演技を見せ続けているが、恋愛メインのヒロインは初めて。新境地への取り組みと変わらぬ雑草魂を語ってくれた。

ご縁はなかったけどやる気は満々でした

――ラブストーリーは好きなジャンルですか?

小野 すごく好きです。昔からテレビっ子で、数々の恋愛ものを観て育ってきました。人気になった王道のラブストーリーが大好きだったんです。でも、役者としては、あまりご縁がなくて。

――そうみたいですね。

小野 『初恋、ざらり』も恋愛ものでしたけど、知的障害とかいろいろな要素があったので。自分ではやる気満々で、『スノードロップの初恋』は満を持してということで楽しみでした。今回も相手が死神という要素はありますけど(笑)。

――ひと筋縄でいかないラブストーリーだからこそ、小野さんの演技力が求められた部分もありそうですね。

小野 どうなんですかね。死神というのは強烈な設定ですけど、台本を読むと現実的なやり取りや感情が描かれていて、共感度が高い印象でした。一見ファンタジーのようで、自分の中ではこれも王道のラブストーリーだと思っています。

自分に興味を持ってくれたら感情が乗ります

――小野さんが演じる奈雪は、相手の朔弥が死神とは知らないわけですが、彼に惹かれていくのはわかりますか?

小野 とてもよくわかります。自分に興味を持ってくれる人には、こちらも1枚感情が乗るのは、恋愛に限らず人間関係であることだなと、実感する毎日です。

――強がっていると「君は全然大丈夫じゃない」と言われたり。

小野 みんな当たり前のように頑張っていますけど、本当は当たり前ではなくて。一度立ち止まって、自分で見過ごしていた努力を他者に認めてもらうのは嬉しいし、安心するんだと思います。

――ラブストーリーらしいシーンも出てくるんですか?

小野 キュンとするやり取りがたくさん出てきます。今後の展開を楽しみにしていただけたら。

一生懸命生きている中でやさしさが出れば

――奈雪は演じやすい役ですか?

小野 等身大で共感できる役なので、素直に奈雪に向き合って演じていきたいです。唯一の肉親の弟がいること、真面目なこと、人のために一生懸命生きていること。そこにやさしさや温かみが出ればいいなと。

――自分に厳しい分、甘え方を忘れていた……という部分は、小野さんにもないですか?

小野 ないとは言い切れません。自分を見失ったり、やりたいことを後回しにして、気がついたら心が寒々しくなっていた瞬間はあります。でも、自分を甘やかす方法もだんだんわかってきて、年々気持ちが楽になっているのも実感しています。

――どんなふうに自分を甘やかすんですか?

小野 大きなご褒美を自分にドンと与えるより、日々小さなご褒美があるほうが満足度が高いことに気づきました。だから日常を少しだけ、自分にとってやさしいものにするように意識しています。

――仕事の帰りにかき氷を食べるとか?

小野 そういうことです。明日も早いけどキャンドルを焚いて入浴剤を入れて、5分だけでもお風呂に浸かってみよう、とか。そういうちょっとしたことで、私は意外と大丈夫かもしれないと、思い始めたところです。

自分を過剰に労わる姿勢を自分に見せつけます

――奈雪は朔弥と出会って、自分を大切にして生きることを考えていく……とも番組サイトに出ています。

小野 私は面倒くさがりなので、自分のことを後回しにしがちなんです。なので、気持ちがセカセカしていると感じたら、逆に過剰なくらい自分の面倒を見ます。ボディクリームはベタベタするから塗りたくないと思いながら、たくさん塗っておく、みたいな。

――それはどんな意味合いなんですか?

小野 自分を過剰に労わる姿勢を自分に見せつける、ということです。これはオススメです(笑)。

自分の料理を食べてもらう喜びを思い出して

――奈雪はファミレスの会社で経理の仕事をしています。

小野 私は数字が苦手なんです。現場に1時間早く入ってしまうことはあるあるで、前日に行ってしまったこともあります(笑)。休憩に入って、1時間後に再開かと思ったら10分後で、急いでごはんを食べたり。だから、経理の奈雪を通して、もう少し数字と仲良くなりたいです。

――10分を1時間と間違えるのは、数字以前の問題な気もしますが(笑)。奈雪の亡くなった父親が洋食店をやっていて、自ら料理をするシーンもあります。

小野 おいしいごはんがたくさん出てきます。私は普段から料理をするのですが、自分の作ったものを人に食べてもらう喜びや緊張感は忘れがちなので、そんなところを思い出しながら撮影に挑んでいます。

――特に父のレシピのグラタンが「世界一幸せな味」としてカギになっていて。

小野 私もグラタンは大好きです。作るのは工程が多くて大変な料理で、家でたまに出してもらうと嬉しかった思い出があって。今でも特別な日に、チーズをたっぷり入れて自分で作ります。

――最後の晩さんで食べたい料理はありますか?

小野 ドーナツですかね。大きくてモチモチなドーナツが好きです。

根本は雑草で一生変わらないと思います

――GP帯に近い23時からの連続ドラマでヒロインとなると、女優として、またポジションが上がった感じですね。

小野 どうでしょう。あまり挑戦してなかった恋愛もので、ヒロインをやらせていただくのは感慨深いです。ただ、主演やヒロインをやることが一番大事なわけでもなくて。自分がその場所に立たせていただくのは嬉しいですし、立たないと見えない景色、出会えない人や感情も確実にあります。なので、フラットな目線でいられたらと思います。

――以前「私は雑草」と話されていましたが、今回だと今をときめく宮世琉弥さんの相手役で、小野さんもキラキラした世界で輝いていくように思えます。

小野 それは全然ないです(笑)。求められるものが変われば出すものも変わりますけど、私の根本は雑草で、一生変わらないと思います。

根性や気合いはあると自負しています

――小野さんの演技はいつも絶賛されますが、世間の評価も気にしませんか?

小野 私はSNSをやっていないので。自分のやったお芝居がどんなふうに受け取られているのか、あまり気にしないほうかもしれません。

――評価の基準が自分の中にあるとか?

小野 難しいところですね。自分がどんなに満足しても、観てくださる方に向けて作っているものですから、その方たちの評価が良くなければ、やっぱりバツだと思います。私にとっては、まず現場にいるスタッフさんや監督、プロデューサー、共演者の方たちに良いと言ってもらうことが、大切な気がしていて。もし照明部さんが、自分のお芝居を見てあくびをしていたらバツ。しっかり照明を当ててあげようと思ってもらえたのなら、やるべきことをまっとうできたのかなと。今のところの自分の基準は、そういう距離の近い人たちからの評価です。

――「雑草」と言う中には「演技なら負けない」という自負もありませんか? 自分からは言えないにせよ。

小野 それは本当にないです。周りの皆さんのお芝居が本当に素敵なので。

自分の役を世界で一番愛してます

――以前もうかがいましたが、小野さんは今回のようなヒロインでなくても、出番の多さに関わらず演じる役が必ず印象に残ります。そこに何か、小野さん流の演技の核がある気がしてなりません。

小野 いただいた役を一生懸命やっているだけですけど、自分の役を世界で一番愛している自信はあります。その愛情がもしかしたら、面白がっていただく要素に繋がっているのかもしれません。

――『グレイトギフト』で演じた、殺人球菌を創り自ら人を殺していた奈良茉莉も愛せました?

小野 自尊心や先輩に対する嫉妬心が卑屈であり、卑怯で卑劣ですけど、人間としてのモラルや社会的に悪だから、その役を愛せないかと言ったら、私はそうではありません。そんな脆さ、ズルさ、人間的な弱さは奈良茉莉の魅力だと思っていました。

――『スノードロップの初恋』の奈雪も愛せそうですか?

小野 もちろんです。仕事に対しても、弟や亡くなったお父さんへの向き合い方も、何ごとにも一生懸命。そこに人を動かすエネルギーがあると思っていて、私自身も心を動かされたポイントでした。

役が普段も端々に出てしまいます

――作品の撮影に入ると、日常生活も変わる部分はありますか?

小野 明らかに役を引きずって帰ってくることはないですけど、口の悪い役をやっていたときは普段も口が悪くなりがちだったり、端々に出てしまうものはやっぱりあって。そういう意味では、奈雪を演じさせていただくのは安心です。この撮影期間の私は奈雪のようにちゃんとできるはず。できなかったら私自身の問題で、役のせいにできないので気をつけないと(笑)。

――そんな秋はプライベートでのお楽しみもありますか?

小野 クーラーを消して自然の空気の中で過ごせるのは楽しみです。イモや栗も好きなので、秋は食関係も充実させたいです。

クリスマスは光の電気代が気になります(笑)

――『スノードロップの初恋』ではクリスマスに奈雪が死んでしまうのか……という話になっていますが、小野さんの例年のクリスマスは?

小野 私的には12月23日も24日も同じ1日。毎年、何もしません。納豆ごはんとか食べています(笑)。

――イルミネーションを見に行ったりもしないと。

小野 電気代がどれくらいかかっているんだろう、と思います(笑)。どこが払っているんだろう? 都かな? 区かな? と考えながら光の下を歩いています。

――アンチイベントで『ハケンアニメ!』の台詞であったように、「リア充爆発しろ」みたいなことを思ったりは?

小野 それは思いません。みんなが幸福であってほしい。ただ、私はクリスマスは節電を心掛けて、社会に奉仕したいと思います(笑)。

Profile

小野花梨(おの・かりん)

7月6日生まれ、東京都出身。2006年にドラマ『嫌われ松子の一生』でデビュー。主な出演作はドラマ『カムカムエヴリバディ』、『罠の戦争』、『初恋、ざらり』、『お別れホスピタル』、映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』、『プリテンダーズ』、『ハケンアニメ!』、『52ヘルツのクジラたち』など。ドラマ『スノードロップの初恋』(カンテレ・フジテレビ系)、ラジオ『おしゃべりな古典教室』(NHKラジオ第2)に出演中。2025年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)に出演。

火ドラ★イレブン『スノードロップの初恋』

カンテレ・フジテレビ系/火曜23:00~

公式HP

(C)カンテレ
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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