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2勝目をあげて先行するのは藤井聡太竜王か? 佐々木勇気八段か? 10月25日から竜王戦七番勝負第3局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月25日・26日。京都府京都市・総本山仁和寺において第37期竜王戦七番勝負第3局▲藤井聡太竜王(22歳)-△佐々木勇気八段(30歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。


 第1局は藤井竜王、第2局は佐々木八段が勝ち、シリーズはここまで両者1勝ずつです。第3局に勝って2勝目をあげ、先行するのはどちらでしょうか。

 藤井竜王はこれまでのタイトル戦七番勝負において、第3局以降で負け越した状態になったことがありません。

 もし本局、後手番の佐々木八段が「ブレイク」をして先行すれば、さすがの藤井竜王もピンチといえるかもしれません。

 藤井竜王の今年度成績は19勝6敗(勝率0.760)です。

 藤井竜王の公式戦連勝は9、タイトル戦番勝負での連勝は7でストップしました。

 佐々木八段の今年度成績は16勝5敗(勝率0.762)です。


 藤井竜王とは対照的に、佐々木八段は竜王戦第2局の勝利によって、公式戦の連敗は4で止まりました。

 両者の対戦成績は藤井5勝、佐々木3勝です。


 多くの棋士に対して、圧倒的に勝ち越している藤井竜王。佐々木八段との対戦成績は比較的拮抗しています。

第2局は佐々木八段完勝


 竜王戦七番勝負第2局は10月19日、20日、福井県あわら市「あわら温泉 美松」においておこなわれました。

 先手は佐々木八段。まずは矢倉模様の立ち上がりとなりました。

佐々木「1局目が(角換わり腰掛け銀で)研究勝負だったので。2局目は違う趣向でいこうかなと思っていて」

 藤井竜王は急戦を含みとする現代的な陣立て。対して佐々木八段は玉を盤面右側にもっていく「右玉」(みぎぎょく)の趣向を見せます。そして藤井玉が初期位置のままだったタイミングで、積極的に仕掛けていきました。

藤井「(43手目)▲6六歩(△同歩)から▲5五歩と積極的に動かれたところで、うまい対応がわからなくて。こちらの玉が不安定な形で戦いになってしまったので。自信のない展開になってしまったかなと思っていました。(1日目午後、55手目)▲6五歩と押さえられたあたりで、自信がないかなという感じがしました。」

 1日目夕方、そろそろ封じ手というところで、藤井竜王は8筋から攻めていきます。60手目、藤井竜王が角取りに歩を打った局面で佐々木八段が61手目を封じ、指し掛けとなりました。

佐々木「封じ手のあたりはちょっと自信がないといか。うまく指されてしまったかなと思いました」

 2日目朝。佐々木八段の封じ手が開かれて対局再開。佐々木八段は角を左端9筋に上がりました。対して藤井竜王は角をぶつける激しい順を選びます。

佐々木「(62手目)△8六角となると、水面下ではけっこう、詰む詰まないみたいな変化もあるような順になるかなと思うんですけど。ただ(63手目)▲6四歩に銀をどちらに引かれるのか。昨日の段階ではちょっとわかってなかったので。引かれてからまた考え直そうかなと思ってました」

 局面が大きく動いていく中で、ペースをつかんだのは佐々木八段でした。

藤井「2日目は攻め合いになったんですけれど。(72手目)△8八歩成▲6八金と寄られる手を見落としてしまったので、そのあたりは相当苦しくなってしまったなと思っていました」

佐々木「2日目の昼食休憩(82手目)のあたりは、だいぶ指しやすいというか、形勢いいかなと思ったんですけど」

 形勢は佐々木八段優勢。ただし佐々木八段は、一度歩を打って王手をしておけば、藤井竜王に桂を打たれて粘られる余地がありませんでした。

佐々木「ちょっと▲5二歩を打ち損ねて。(86手目)△5二桂っていう粘りを与えてしまって。そこからはちょっと、逆転されてもおかしくないかな、と思って指してました」「本局はよく指せたところと、甘い手を指してしまったところがあって。甘い手を指してしまってから、藤井竜王に△5二桂っていう手を指されて。ちょっとそこからは、もうどうなってるのかわからなかったです」

 藤井竜王が桂を打った時点で、持ち時間8時間のうち、残りは佐々木3時間12分、藤井1時間44分。ここから佐々木八段は時間を使って、誤ることなく、的確に攻めを続けていきます。

 最後は寄せ合いとなり、佐々木玉は右の方へと逃げていき、つかまりません。対して居玉のままの藤井玉は上部から押さえられる格好で受けなしに。93手目、佐々木八段が歩頭に銀を打ち込んだ手を見て、藤井竜王は3分を使ったあと、16時55分、投了を告げました。

佐々木「第3局はまた、日にち近いので、しっかりしたコンディションで戦いたいなと。もう一局、第5局指せることは非常にうれしく思ってます」

藤井「本局、矢倉の出だしから非常に一手一手が難しい将棋だったんですけど。(43手目)▲6六歩(△同歩)から▲5五歩と機敏に動かれたところで、ちょっとよい対応ができなくて。そのあともうまく指されて。ちょっとチャンスを作れなくて、完敗という将棋だったかなと思います。この対局ではあわら市、福井県の皆さまには本当に歓迎していただいて。私自身も気持ちよく対局することはできたんですけれど。内容としてはなかなか、うまく指せなかったところもあったと思うので。また、第3局以降は立て直してがんばっていきたいと思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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