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やまゆり園障害者殺傷事件・植松聖死刑囚の獄中結婚が12月4日に成立!相手女性の手記と油絵

篠田博之月刊『創』編集長
植松聖死刑囚結婚相手の描いた絵(本人提供)

獄中結婚のその後と双方の近況

 このヤフーニュースで以前報じたやまゆり園事件・植松聖死刑囚の獄中結婚の下記記事は大きな反響を引き起こした。今回はその後の経緯をお知らせしよう。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/419548cf821381487a39a980b347fc15b11dfa44

衝撃!やまゆり園障害者殺傷事件の植松聖死刑囚が獄中結婚! しかも何と相手は障害を持つ女性

 東京拘置所が妨害とも言えるような対応を続けているために、もう3カ月も経っているのに、植松死刑囚と相手女性は面会できていない。書類を差し入れても何週間も留め置かれたりと手続きがなかなか進まないためだ。ただ、遅々とした進行ではあっても事態は少しずつ前に進んでおり、12月4日に正式に結婚が成立した。植松死刑囚の本籍はこれまで父親の実家である地方にあったのだが、その戸籍から独立して都内に移された。

 結婚した女性は、接見許可を得るためにその新たな戸籍を植松死刑囚本人に送ったのだが、これも何といまだに本人の手元に渡っていない。拘置所はどうやら、何とかして植松死刑囚の接見交通権の拡大を防ぎたい、それが無理だとしても少しでも手続きを遅らせようとしているらしい。

 死刑確定者の処遇は、拘置所長の裁量に任されており、ブラックボックスの中だ。それは、そもそも死刑確定者という存在自体が曖昧な状況に置かれていることに起因する。死刑が確定したとたんに接見禁止がつくことで、死刑囚を社会から隔絶するのだが、法律ではその期間が半年と決められている。しかし現実には、半年どころか何十年も待機状態に置かれたままの死刑囚はたくさんいる。

 接見禁止がつくのは心情の安定のためとされているが、誰にも会えずに何十年も閉じ込められるほうが精神的不安定につながることは明らかだろう。本人の意思によらず一律に接見禁止というのはどう考えても良くないのだが、何となくその問題に触れることはタブーになっている。

 死刑囚もそのへんの事情は知っており、それゆえ対応策として、獄中結婚や養子縁組が行われているのが一般的だ。つまり家族になれば接見ができるからだ。

「彼と私」植松翼(本人提供)
「彼と私」植松翼(本人提供)

2人の手記と作品を公開

 さて、今後は植松死刑囚の結婚相手をA子ではなく「翼」という仮名で呼ぶことにした。障害を持っていることなどの情報が独り歩きして、本人がどういう女性なのか理解されていないのではないかという本人の懸念があるからだ。同時に、彼女自身の発信を少しずつ公開していこうと思う。このへんは慎重に考えないといけないのだが、今回は本人の意思を尊重した。

 ここでは、翼さんと植松死刑囚双方の最近の手記と作品を紹介する。まずは翼さん。近況と心情を書いたものだ。

「Sweet November」

《聖さんの側にいく日は雨が降る時が多い。今日は秋だというのに梅雨みたいに霧がかかっていて真っ青な紫陽花なんかに出会えそうな…そんな一日だった。

 今日は朝から寒すぎて引っ越しの段ボールからマフラーを引っ張りだして出かけた。

 もう一人で慣れてしまった拘置所までの道のりを小さな白い息をはきながら速足で歩く。弁護士の先生とロビーで待ち合わせをして、彼と先生の面会が終わるのを待つ。その間に私は彼に花を選んで差し入れをする。

 最近のお気に入りはかすみ草だけか、バラをその日の気分で色と本数を決めて差し入れてる。

 その後は面会後の先生と喫茶店に行って彼が元気だったかとか最近の私と聖さんの話を聞いてくださる。私は弁護士の先生との面会後のその時間が今いちばん聖さんを感じれるから好きだ。

 その幸せを一人の時(健忘した時)にも感じられるように思い出せるように、先生に許可を取って録音をさせてもらっている。

 今日は初めて聖さんからの現金の卓下げがあり、それで私と弁護士の先生で珈琲をごちそうになった。それから決して高くはないけれどブレスレットを購入させてもらって初めての彼から貰ったものだと思って大切にしようと右腕につけて帰った。でも、なんだか傷つけたくなくて今は部屋に飾っている。キラキラと間接照明を反射させてインコみたいにおしゃべりしているみたいなそんなデザイン。

 彼の読む本は私と少し似ているかもしれないと思った。今日も差し入れしようとしていた岡本太郎さんの本や、『愛するということ』というエーリッヒフロムの本は、彼はもうすでに読んでいて切り抜きを私に届けてくれた。

 彼からの本や切り抜いた文字たちは午前中の朝日が入るバルコニーの近くに置いたお気に入りの白い椅子に座って読むことが多い。

 なんだか彼を一文字ずつ知れていくような気がして、その後に私は彼を想って画材を広げて絵を描く。

 そして、また季節が変わっていく。》

 ここに書かれている彼女の「絵」も紹介しておこう。先に掲げた「彼と私」も彼女の作品で、この記事の冒頭に掲げたのは彼女が絵を描いている写真だ。

「無題」植松翼(本人提供)
「無題」植松翼(本人提供)

植松死刑囚が書いた「真の愛情とは」

 一方の植松死刑囚の手記だが、たくさん入手してはいるが、結婚を意識したと思われるものをここに紹介しよう。

《真の愛情とは――厳しく見極めることです。自分の人格全体を発達させ、それが生産的な方向に向くよう、全力をあげて努力しないかぎり、人を愛そうとしても必ず失敗する。間違っていながら、自分は正しいと信じている人々がいて、彼らは神の御目には何の価値もないのです。

 一人の人をほんとうに愛するとは、すべての人を愛することであり、世界を愛し、生命を愛することです。誰かに「あなたを愛している」と言うことができるなら、「あなたを通して、すべての人を、世界を、私自身を愛している」と言えるでしょう。

「わたしたちが愛し合うのは、神がまずわたしたちを愛してくださったからである」(ヨハネ四ノ一九)》

 

 植松死刑囚が「真の愛情」という言葉を使うのはやや異例かもしれない。また彼が以前からイラストなどをたくさん描いていることは知られているが、最近描かれたものを紹介しよう。もともと彼のイラストは独特でよくわからない絵柄が多いのだが、これもそのひとつかもしれない。

 月刊『創』(つくる)1月号には、相手女性の翼さんの油絵をもっとたくさん掲載して紹介している。関心のある方はそちらを参照していただきたい。

https://www.tsukuru.co.jp/

植松聖死刑囚のイラスト(本人提供)
植松聖死刑囚のイラスト(本人提供)

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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