情報番組ぶっちぎり快走のテレビ朝日『グッド!モーニング』日曜進出と『有働Times』の狙い
『グッド!モーニング』の日曜進出
テレビ朝日の情報番組が快走を続けている。平日午前の『羽鳥慎一モーニングショー』と『大下容子ワイド!スクランブル』が同時間帯トップであるうえに、早朝の『グッド!モーニング』も健闘している。
『グッド!モーニング』は2024年春から土曜朝に、10月からは日曜朝にも進出した。しかも平日と異なり全国ネット。
いったいどういう狙いなのか、小寺敦情報番組センター長に話を聞いた。
「日曜朝の『サンデーLIVE!!』が終了して、『グッド!モーニング』に替わりました。視聴率は、前の番組よりいくらか上がった形でスタートしています。日曜日にはこれまで他局の番組を観ていた方々の視聴習慣をどう『グッド!モーニング』に持ってくるかという闘いですね」
平日はどういう状況なのだろうか。
「月~金についてはかなり手応えを感じていまして、これまでは、たまに民放トップというレベルでしたが、今はもう7時台はずっと民放トップです。6時台もかなりいい勝負になっていまして、トップを競いあっている状況です。元々早朝は日本テレビとフジテレビのトップ争いだったんですが、今はフジとテレ朝の争いです。
これは7時台の話で、6時台は3局が並んでる状況ですね。各局見るとニュースに対する比重は増えている感じがします。もともとテレビ朝日はニュースが多かったので、明るいエンタメもやろうとなって、もうそれが3年ぐらいになりますが、かなり定着しつつあります」(小寺センター長)
フジテレビの『めざましテレビ』は若い層をターゲットに据えてエンタメに力を入れてきた。『グッド!モーニング』もエンタメには力を入れているようだが、日テレ・フジとの違いはどこにあるのか。
「違うのは、トレンドの選び方でしょうか。例えば他局だと若い子向けに今流行りのスイーツとかそういうものをやりますが、うちは人気の美術館をやったりとか、他局に比べて視聴者の年齢が少し高いのでトレンドという意味で違いが出てきたりはしています」(同)
『モーニングショー』『ワイド!スクランブル』快走
8時台の『モーニングショー』はどうなのか。
「『モーニングショー』も相変わらず同時間帯民放トップをとっています。ただ難しいのは、放送時間が微妙にずれているんですね。日テレさんの『ZIP!』が9時までで、9時から『DayDay.』をやっています。フジテレビさんは『めざまし8』を8時からやっています。
『モーニングショー』で言うと、例えば総選挙の時は、候補者の政策ごとにパネルでいろいろ展開していきました。今年は大谷翔平選手の話題やオリンピックも含めてスポーツの話題が多かったのですが、パネルのゲストに誰を呼ぶのかというところに趣向を凝らしました。例えばバスケットボールの時に俳優の満島真之介さんを呼ぶなどの工夫をしました。解説がわかりやすくて面白いと言われ、ネットでもかなりバズっていました。
今は『グッド!モーニング』の視聴率が高いですから、そこからの流れを大事にして、観ていただくべきトップニュースを伝えて、8時15分にNHKさんの朝ドラが終わるので、そこから視聴者の方々がザッピングをする時間にどううちを観ていただけるか。最初のネタを15分少し前に終わらせ、改めて新しいものが始まるというふうに意識しています」(同)
『ワイド!スクランブル』もトップを維持しているという。
「おかげさまで、午前午後両方ともトップをいただいています。『ワイド!スクランブル』は海外ニュースを中心にやってきて、よく観られています。アメリカ大統領選挙の当日は『ワイド!スクランブル』を拡大して、池上彰さんにも加わっていただいて特番をやりました」(同)
日曜夜の激戦区に『有働Times』が…
2024年秋のテレビ朝日の改編で大きな目玉といえば日曜夜に『有働Times』という、有働由美子さんをキャスターに据えた報道情報番組をスタートさせたことだ。放送は20時56分から22時15分。春まで日本テレビ夜の『news zero』のMCだった有働さんが新たに登場ということで大きな話題になった。
河野太一総合編成部長に話を聞いた。
「この時間帯はそれまで『サンデーステーション』を放送していましたが、『有働Times』はニュースだけでなく、日曜夜にゆっくり見ていただけるエンターテインメント的な要素も散りばめています。視聴者の方々を出迎える、歓待するというコンセプトですね。
例えば10月6日の第1回放送は枠を拡大して、ナスDのアドベンチャー企画ということで、アメリカの秘境グランドサークルを有働さんにも一緒に回っていただいて貴重な映像をお伝えしました。今後は『レジェンド&スター』という、様々な分野で活躍されている方に有働さんがインタビューするという特集をやっていただく予定です。
系列局とも連携して20時56分から全国ネットを実現しました。『ポツンと一軒家』という朝日放送テレビ制作の高視聴率番組がその前にあるので、その番組から直結で観てもらおうということでやっています。視聴率については、『サンデーステーション』の平均よりも若干、上回る形で推移しており好発進したと捉えています」
仰天というべきユニークさ「お天気コーナー」
独特な演出で話題になっているのが番組最後のお天気コーナーだ。天気予報士・片岡信和さんが、何とピアノの弾き語りをしながらお天気を伝えるという、ユニークな天気予報を披露している。
「大きな災害があった場合は別ですが、通常の天気予報をお届けする時に、リラックスして見ていただきたいということで、片岡さんはピアノができますので、弾き語りで天気予報どうですかと番組側が提案させていただいたようです。
毎週、ご自身でメロディーを作っていただいて弾き語りをしていますが、演奏しながら天気の話をするというのは相当難しいことで、話題になっています」(河野総合編成部長)
縦の流れ強化で個人視聴率オールでトップ
テレビ朝日は、朝の情報番組が好調で、平日午後は『相棒』という強いドラマの再放送を行い、縦の流れを強化している。夜はプライムタイムに『報道ステーション』という強いニュース番組を帯で放送している。夕方の『スーパーJチャンネル』もこのところ好調で、日本テレビの『news every.』に次いでTBSの『Nスタ』と2位争いをしているという。帯番組が強いということから、個人視聴率のオール(全体)でトップを走っている。
「金曜夜のバラエティ『ザワつく! 金曜日』と土曜夜の『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』が好調で、土・日夜の縦の流れも良いので、金・土・日の視聴率がとても良くなっています。
11月初めのデータでは、個人視聴率は全日、ゴールデン、プライムとテレビ朝日が三冠をとっています。ゴールデンは日本テレビとテレビ朝日が同列首位となっています」(同)
2024年はスポーツコンテンツが強さを発揮したが、テレビ朝日の取り組みはどうだったのか。
「11月13日から始まったプレミア12、世界一決定戦の野球ですが、これをテレビ朝日とTBSで放送しています。夏にはパリ五輪がありましたが、視聴率ではテレビ朝日が民放トップを取りました。阿部兄妹の柔道ですとか、なでしこジャパンのサッカー準々決勝とか、注目度の高い競技を放送できたからだと思います。今年は、季節季節で大きなスポーツ案件を放送することができたと思っております。12月にはフィギュアのグランプリファイナルの中継が予定されています」(同)
長らく日本テレビが独走してきた民放界に新たな風を巻き起こしているテレビ朝日だが、さてこれからどうなるのだろうか。
ここでは割愛したが秋のドラマもテレビ朝日は『相棒』を始め好調だ。ここに掲載した記事は発売中の『創』1月号特集「テレビ局の徹底研究」の記事から転載したが、特集では他局も含めたテレビ界全体についてとりあげている。