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ある北朝鮮女性が吐露した「獣にも劣る生活」への絶望

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

近年、北朝鮮から脱出して韓国に亡命する脱北者は減少傾向が続いている。韓国統一省によれば、今年上半期に韓国に入国した脱北者は105人で、昨年と概ね同じ水準だった。

韓国に入国した脱北者数は2003~2011年、年間に2000~3000人の水準だったが、金正恩政権が本格始動し、脱北者への厳罰が強化された2012年以降は年間平均1300人台に減った。

(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面

さらに、コロナ禍の国境封鎖の影響で2021年と2022年の入国者数はそれぞれ63人、67人だった。昨年は196人が韓国に入国した。

しかし、北朝鮮の人々の間には、自由世界への強い憧れが確かに存在している。

韓国デイリーNK編集部は、中朝国境に近い地域に住む北朝鮮女性のAさんにインタビューを行った。Aさんは、北朝鮮と韓国の南北関係の悪化をこう嘆いた。

「北南(南北)関係が悪化すればするほど、住民に対する統制が厳しくなり、軍事力強化のために国民が苦しい生活に絶えなければならなくなる。少なくとも南北関係が悪化しないことを願う」

そして、南北関係を改善して、韓国から食糧援助を取り付けてほしいと望んだ。

「飢餓に苦しむ人が多すぎる。できれば南朝鮮(韓国)との関係を良くして、食糧や、人々が生活するために必要なものを支援してほしい」

また、すでに韓国へ逃れた人々については次のように話す。

「ここ(北朝鮮)では脱北者家族は羨望の対象です。南朝鮮に行って行きたいところに行き、着たい服を着て、見たい映画を気兼ねなく思う存分見ることができたらいいのに」

「私たちはここで獣にも劣る生活を送っているが、あそこ(韓国)に行った人たちはここと比べ物にならない良い環境で、関心と支援の中で生きているなんて羨ましい限りだ。なぜ行ける時に行けなかったのかという後悔がある。今は(韓国に行ける)チャンスが来たら、死を覚悟して行かなければならないと思うようになった」

(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

北朝鮮は国境警備をますます強化しており、以前のように年間千人以上もの人々が韓国へ逃れる状況は想像し難い。しかしそれだけに、北朝鮮の人々の抑えつけられた思いが、いずれ爆発する日が来る可能性もある。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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