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リーグワン新人賞も秋の代表戦出番なし。巷の待望論に根塚洸雅本人はどう応じた?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
6月のウルグアイ代表戦でテストマッチデビュー(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 昨季の国内リーグワンで新人賞を獲得し、今年、日本代表デビューを果たしたクボタスピアーズ船橋・東京ベイの根塚洸雅が、12月2日、本拠地グラウンドで単独取材に応じている。

 秋の代表活動でおこなった6試合(非テストマッチ)で出番を得られなかったなか、何を掴み、何を感じたか。

 今度のリーグワンへの意気込みは。

 身長173センチ、体重82キロと小柄もタフさと瞬発力を誇る24歳が、朗らかに語った。

 逆境との向き合い方で気づきを与える内容となった。

 以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——今回は、日本代表で出番が与えられませんでした。

「(国内合宿先の)宮崎にいる時にジェイミー(・ジョセフヘッドコーチ)と話したら、『試合にたくさん出るというより、トレーニングで成長して欲しい』と。まだまだ自分もスキルが足りない部分はあったし、ブラウニー(トニー・ブラウンアシスタントコーチ)からも同じことを言われつつ、『リーグワンで去年からどれだけ成長したかを見せて欲しい』とも伝えてくれた。試合には出られなかったですけど、学べることはあった。いい経験はできた」

——あらかじめ試合に出づらくなる可能性を伝えられていた。試練ですね。

「でも、怪我人が発生したり、自分がもっといいパフォーマンスができたりしたら出られるとも思っていました。いつでも出る準備ができていることを示すために、練習でいいプレーを出す。まぁ、出られなかったですけど、『出てやるぞ』というメンタルではいました」

——控え組は「柱メンバー」と名付けられ、レギュラー組の練習相手をしていました。

「週初めに次に戦う相手がどんな感じのことをするか、セットプレーからどういうアタックをするかを皆で共有。自分たちが相手のやってきそうなプレーをどのクオリティでできるかによって、出るメンバーへのプレッシャーが変わってくる。ですので、皆で相手を研究しながら『こういうプレーをする』と細かく調べた。フルコンタクト練習の日はプレッシャーをかけられたと思います」

——その立場にいると、それぞれの試合展開の背景がわかりそうです。例えば、13―52と大敗したイングランド代表戦はどう見えましたか。

「相手が(防御で鋭く間合いを)詰めてくるのはわかっていたんですが、その部分——一発目(接点周辺)のフォワードのところ——で(後ろに)返されてしまって。ジャパンとしてはパスの数、仕掛け、スピード、人数差(数的優位を作る動き)で攻めていきたかったなか、下げられて、下げられてと、受けに回っていた。そのなかでキックもうまく使えず、逆に相手にはハイボールを蹴り上げられて、捕られ、カオスな状況からトライを獲られた。まずバックスリー(自分自身)としてはハイボールをしっかり捕らなければいけない。

(会場の)トゥイッケナムスタジアムではほとんどのお客さんがイングランドの応援で、日本がミスした時はプレッシャーがすごかったと思う。僕らでは感じられないプレッシャーを感じながらあの人たち(出場組)はやっていたような。自分たちのやりたいラグビーは全然、できなかったんじゃないかと思います」

——実は、点差ほど実力差が離れていないようにも映ります。

「後手に回ってしまっただけ。やっているラグビーは間違えていないし、何ならジャパンもいいプレーをしていた。ただ、流れをどこで掴むかというところでずるずると行かれてしまったことが、あの試合でのあの点差につながったのかなと。そこでリセットして(タッチキックを蹴るなどして流れを止め)、切り替えて、ジャパンのやりたいことをできていれば、もう少しいい点差になったのかなと」

——SNSでは、根塚選手の起用を待ち望む声がありました。気づいていましたか。

「書いてくださっている方がいたり、坂手さん(淳史主将)と話している時も『そんな風に言われていたなぁ』という感じになったり。ありがたいと思いつつも、その期待に応えられない申し訳なさもありつつ…という感じでしたね!」

——日本代表選手もエゴサーチをするのですね。

「調べてはないと思いますが、『(根塚にとって)いいこと、で出ていたで』みたいに言ってくれたんです。頑張らないといけないなぁという気持ちにもなります。ありがたかったです」

——改めて、今回アピールできた点と今後の課題は。

「ディフェンス力、Xファクターとしての攻撃力は、コーチ陣からも評価してもらっています。あとはキックの使い方、キックの処理、ディフェンスのスキル——もっと周りを使うこと——は、これから成長させる部分です」

 課題の発見を成長のきっかけと捉える根塚。防御面では、所属するスピアーズと異なるシステムのもと視野を広げられたという。

「内側の人(センターなど)を感じるというか、『こういう時はこうする』の細かい考えが、ジャパンに行って上がったと思います」

 さらに強化ポイントに挙げたのは、空中戦でボールを捕る技術である。サイズに影響されない自分なりのハイボール処理を、根塚は模索している。

「あとはやはり、世界と戦うにはコンテストボール(ハイボールの競り合い)でスキルアップしないといけない。それは、やりながら感じました。片手でもいいので手を入れに行って後ろにはたくというプレーが、全世界で多くなっている。自分より背の高い選手が片手で獲りに行ったら、(打点は)高い。そのなかで(自身が)どう捕るのか。まだ正解は分かっていないですけど、野口竜司さん(埼玉パナソニックワイルドナイツ)と練習しながら、捕りやすい形を見つけようとしていました。(相手の)正面から普通に入っても捕れない。ボールへ入る角度、タイミングについて話しながらやれた。成長に繋がっている。

 いままでは結構、落下地点に先に入ってキャッチすることが多かったのですが、ジャパンでは空中のコリジョンに勝っていかないといけない。真上というより、斜め前に飛ぶイメージ。ここで自分の体重プラススピードで(相手と)コリジョンしようと。…めっちゃ細かいところですが、それを自分でも考えるきっかけになりました」

 これから始まるリーグワンでも、根塚のハイボール合戦が注目される。

——改めて、今季への意気込みは。

「リーグワンでどれだけできるかで、次に繋がる。そこ(代表定着)だけを目指すわけではありませんが、まずリーグワンで『僕を使わないとだめだ』と思わせるくらいのプレーヤーにならないと、状況は変えられない。課題だったハイボール、ディフェンスの改善ぶりをまずリーグワンで見せていく。あとは、去年はラインブレイクこそできましたけどトライまで行くことは少なかったので、『トライまで』というのをフォーカスしていけば、もうひとつ上にいけるんじゃないかと。

 リーグワンでよければ、(日本代表に)選んでいただける。(ワールドカップという)遠いところを見るのではなく、近いところにあるチームの優勝を目指して頑張っていきます」

 スピアーズは12月18日、東京・味の素スタジアムで東京サントリーサンゴリアスとの初戦に挑む。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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