ペアローンで返済期間40年!それでも若い層が「賢いマンション購入」と考える納得の理由
マイホームを買う際、「ペアローン」が増えていることがリクルートの調査で明らかになった。調査によると、首都圏・新築分譲マンションにおいて「世帯主と配偶者のペアローン」の割合は33.9%になったと報じられた。
この数字は、「ペアローンで買う人が本当に多い」ことを証明した。しかしながら、新築マンションの販売現場では、若い世代が新築マンションを買う場合、「ペアローンが当たり前」という認識が以前からあった。特に、東京23区内や横浜市内、さいたま市内などマンション人気が高く、価格も高い場所ではペアローンが当然となっていた。
ペアローンが広まったのは、コロナ禍が始まった2020年くらいから。じつは、首都圏中心部の最新事情でいえば、若い世代の住宅ローン事情は次の段階に入っている。
それは、「ペアで長期のローンを組む」という買い方だ。
現在、住宅ローンの返済期間は通常35年で、最長50年まで組むことができる。が、さすがに50年ローンを利用する人は希で、長期返済といっても40年までにするケースが多い。
つまり、東京23区内や横浜市内、さいたま市内で新築マンションを買うとき、若い世代は夫婦ペアローンで40年返済を選択するケースが増えているのだ。
そうなると、年配の方々から「大丈夫なの」と心配する声が出てくる。
ペアローンを組んで離婚したら、大変なことになる。だいたい、40年もの長い返済期間、夫婦で働き続けることができるのか……誰でも頭に浮かぶ不安だろう。
ところが、若い世代に不安はない。今までと異なる発想で「ペアで40年ローン」を選んでいるからだ。
そして、「だからこそタワマンを狙う」という流れも生じている。
それは、昭和時代、平成時代には想像もできなかった新しいマイホーム購入の仕方。内容を知ると、案外合理的ではないかと感心してしまう。
そのことを知らないと、「ペアローンはオススメしない」「40年返済など危険すぎる」となりがち。親心からのアドバイスだが、それ、時代遅れなのかもしれない。
永住?そんなことしませんよ
「ペアで40年ローン」を組み、マンションを購入する若い世代には、昭和時代、平成時代とまったく異なる考え方がある。それは、「永住する気は毛頭ない」ということだ。
最後までローン返済を続ける気はなく、「コツコツと繰り上げ返済」も考えていない。
永住どころか、5年から10年で買い替えるつもりでマンションを購入。短期間の居住で売却し、ローンの残債を精算。次のマンションなり一戸建てを買う計画なのである。
2度目の家を買う頃には子供がいるかもしれない。そのときは子育てにふさわしい場所で、世帯主だけの住宅ローンで購入できる家を買う。
しかし、夫婦共働きの今は便利な場所のマンションをペアローンで買えばよい、という考え方である。
5年か10年で売却するつもりだから、ペアローンも40年返済も怖くない。それに、ペアローンを組めば、夫婦それぞれが住宅ローン減税を利用できる。そのメリットも大きい。
ペアローンを組んで、離婚したら大変といわれるが、5年後か10年後に値上がり確実なマンションを選べば心配無用。たとえ5年後に離婚しても、マンションを売却することでローンを精算でき、すんなり離婚できるからだ。
以上の購入法を実践する場合、「買うべきはタワマン」というセオリーが生まれる。それが、ここ数年タワマンブームを引き起こした側面もあるのだ。
タワマンなら、共働きに便利だし、高く売れる
「夫婦共働きの間、5年か10年住む」という前提で、マンション探しを行う場合、2つの条件を備えた物件が好ましい。
「共働きで生活しやすい立地」と「5年か10年後、間違いなく値上がりしている物件」だ。
この条件を満たしやすいのが、都心部や準都心部で再開発エリアに建設されるマンション……いずれの場合も、超高層でタワー形状のマンション、いわゆるタワマンになりやすい。
タワマンならば、立地が便利であるだけでなく、商業施設が併設されるなど、生活利便性も高い。それは、忙しい夫婦共働き世帯にとって極めて好ましい条件となる。
タワマンは、大部分が値上がりを続けているので、5年後、10年後に売却するときも高値成約が期待できる。
買ったときよりも高く売れればローンを精算できる上に、手元にまとまった金額が残る。1000万円とか2000万円が得られれば、次の家も買いやすくなる。極めて合理的な考えで、「ペアローン」と「40年返済」を選択しているわけだ。
令和版住宅双六にリスクはないか
若い世代は、勝ち組になる第一歩としてペアで長期ローンを組み、タワマン購入を実行している。つまり、ペアで長期ローンを組み、値上がり確実なタワマンを買うことが、平成版住宅双六を有利に進める最良の手段だと考えているのだ。
が、この方法には不確定要素がある。
それは、期待どおりにタワマンが値上がりするとは限らない、という点だ。
2015年以降、首都圏の都心部と郊外駅近再開発のタワマンは、軒並み値上がりを続けた。だから、これまでは売却益が出て、目論見通りの展開となった。
しかしながら、この先も値上がりが続くのだろうか。
現在、都心部や駅近再開発のタワマンは、新築価格、中古価格の上昇スピードが落ちている。今のところ、暴落はもちろん、値下がりも生じていないが、「値上がりが続く」とは言い切れない。
大幅な値上がりは期待しにくい。が、値下がりもしないというのが順当な予測だろう。都心部と駅近再開発のタワマンは、今後も「高止まり」を続ける可能性が高まっている。
つまり、5年後、10年後、タワマンの中古価格は買ったときと同じような水準に留まることを想定すべきだろう。
それでも大損はなく、期待したほど儲からなかっただけの話。そのとき、生活利便性の高いタワマンであれば、中古売却をあきらめ、住み続けたとしても不満は生じにくい。住み続けながら、何年か後に経済の状況が変わり、再びタワマンの価格が上昇し始めるのを待てばよい話なのである。