新型コロナでモータースポーツに強烈な逆風。世界選手権も相次ぐ中止、延期で厳しさが増す。
中国・武漢で発生したとされる新型コロナウィルスは世界中のスポーツに多大なる被害をもたらしている。モータースポーツでは3月15日に「F1世界選手権」と「NTTインディカーシリーズ」が決勝レースを開催する予定になっているが、特にヨーロッパでの感染拡大が深刻で開催延期、中止、そしてリスケジュールしようにも空いている日程がないという状態になっている。
2月に「オリンピック開催で春と秋にレースが密集。20年は日本のモータースポーツにとって試練の年に?」という記事を執筆し、オリンピック開催の影響でスケジュールが厳しい状態で、新型コロナの影響も懸念されると書いた。その影響は想像以上だった。
新型コロナによる影響の終息はいまだ見えないが、2020年3月11日時点でのモータースポーツ界の影響と対応についてまとめてみよう。
F1はバーレーンGPが無観客レースに
中国だけでなく、新型コロナウィルスは韓国、イタリアなどで感染が拡大し、特にヨーロッパは大混乱だ。ヨーロッパに拠点を置くチームが多い「F1世界選手権」は世界各国の入国制限を受け、開催するか否かを議論していたが、開幕からの3戦、オーストラリアGP(3月15日決勝)、バーレーンGP(3月22日決勝)、そして初開催のベトナムGP(4月5日決勝)は開催される見通しだ。
しかしながら、「バーレーンGP」に関しては近隣のイランで感染拡大が広がっていることと感染拡大の防止策として、テレビ放送のみの無観客レースにすることが発表されている。F1は今年70周年というアニバーサリーイヤー迎えるが、無観客でのレース開催はF1の歴史上初めてのことだ。
また、4月19日に決勝を予定していた「中国GP」は2月の段階ですでに延期が決定済み。F1は開催地のサーキットから20億円から30億円もの高額な開催権料を取っているため、開催中止という選択肢は取りづらい。開催権料やテレビの放映権料から得た資金がチームに分配され、それでチーム運営が成り立っているからだ。
ただ、「中国GP」のリスケジュールはおろか、ヨーロッパでの感染拡大が止まらないため、初開催のオランダGP(5月3日)から始まるヨーロッパでの連戦は危機的状況になりつつある。特にオランダGPは地元のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の人気でチケットが完売になっているため、中止または無観客レースとなれば被害は甚大だ。
MotoGPはアメリカズGP も延期が決定
2輪のロードレース世界選手権「MotoGP」はイタリアに拠点を置くチームが多いため、開幕戦のカタールGP(3月8日決勝)がすでにサーキット入りしてテストを行っていた「Moto2」「Moto3」の開催のみとなり、最高峰クラスの「MotoGP」の開催が中止された。
「MotoGP」サーカスは新型コロナウィルスへの対応が非常に早い。第2戦(3月22日)として予定されていたタイGPは10月4日決勝への延期を発表。スペインで開催のアラゴンGPの日程を変更して、秋の日本GP(10月18日決勝)を含むフライアウェイ戦に組み込まれる形となった。
また、最高峰「MotoGP」クラスの実質的な開幕戦となるとみられていたアメリカズGP(4月5日決勝)が11月15日決勝に延期されることを発表。最終戦・バレンシアGP(スペイン)は11月22日決勝に1週遅らせての開催となる。(2020年3月12日追記:バレンシアGPは11月29日決勝へと延期された)
イタリア人に厳しい入国制限がかかっており、ヨーロッパでの感染拡大でアメリカへの渡航がより厳しくなると考えられ、素早く対応した形だ。
これで「MotoGP」の開幕戦、「Moto2」「Moto3」の次戦は南米のアルゼンチンGP(4月19日決勝)となる。アルゼンチンでは3月11日時点では新型コロナ感染者数がまだ11人であり、大規模な感染拡大に至っていないため、何とか開催できるだろう。(2020年3月12日追記:アルゼンチンGPは11月22日決勝へと延期された)
ただ、その後、ヨーロッパに戻った後は5月にスペインGP、フランスGP、イタリアGPと連戦が続く。イタリアだけでなくスペイン、フランスも感染者数が1000人を既に超えており、3月中に終息の兆しが見えなければ、ヨーロッパラウンドの開催が厳しくなってくる。
今年は開幕戦・カタールGPの「Moto2」で長島哲太が優勝、「Moto3」では鈴木竜生がポールポジション獲得、小椋藍が3位表彰台獲得と日本人ライダーが好調なだけに何とか無事に開催されて欲しいところだ。
国内レースは今後どうなる?
新型コロナウィルスの感染拡大は国内でもほとんどのイベントを中止に追いやっている。興行という形を取らないアマチュア向けの参加型レースは開催が始まっているが、興行型イベントとしては鈴鹿サーキットの「モースポフェス SUZUKA」や岡山国際サーキットの「ファン感謝デー」が中止になり、レースも3月22日決勝の「スーパー耐久・開幕戦」と4月4日、5日決勝の「SUZUKA 2&4レース」の2つの鈴鹿サーキットのレースがすでに延期発表されている。
「スーパー耐久」に関しては11月22日決勝で鈴鹿サーキットでの開催が決定。これにより当初予定されていたクラシックレーシングカーイベント「SUZUKA Sound of ENGINE」の中止が決定した。なお、スーパーフォーミュラと全日本ロードレースJSB1000を開催する「SUZUKA 2&4レース」に関しては延期という発表だったものの、イベントの開催日程についてはまだ発表されていない。
国内レース最大の観客数を誇る「SUPER GT」は4月12日決勝で岡山国際サーキットで開幕を迎えることになっているが、パドックに入場できるパドックパスなどの一部チケットの販売を延期している。
大相撲などあらゆるスポーツが無観客で開催され、プロ野球も3月20日の開幕予定を延期。屋外で開催されるモータースポーツではあるが、今後どういう判断になっていくのだろうか。
国内モータースポーツは単に無観客でテレビ中継を行えば良いというものではない。観客にサーキットに足を運んでもらい、イベントとしての楽しさを観客に味わってもらうことに主眼を置いているスタイルだ。パドックパスなどの特別チケットは開催サーキットの重要な興行収入となっているため、開催か否かの判断は難しい決断を迫られる。
2月の先行記事に書いた通り、国内モータースポーツの日程はすでにパンク状態で、代替日程を見つけ出すのはかなり困難だ。
とにかく新型コロナウィルスの感染拡大が収まることを祈るしかないのが、何とももどかしい。