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オリンピック開催で春と秋にレースが密集。20年は日本のモータースポーツにとって試練の年に?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
SUPER GT (写真:DRAFTING)

今年も本格的なモータースポーツシーズンの開幕まで、あと1ヶ月ほどになった。F1は合同テストが始まり、「レッドブル・ホンダ」に大きな期待が寄せられているし、WRC(世界ラリー選手権)では第2戦ラリースウェーデンでトヨタが優勝と海外から明るい話題が届いている。

一方で、2020年の国内モータースポーツは「東京2020オリンピック」の開催年ということで、スケジュールが変則的な1年となり、特に春と秋にレースイベントが集中する形になっている。また、新型コロナウィルスによる肺炎の感染拡大も今後のスケジュールに心配な要素だ。

富士は夏に五輪会場として使用

「東京2020オリンピック」は今季のモータースポーツ日程に大きな影響を与えている。まず、静岡県の富士スピードウェイはオリンピック、パラリンピックの自転車競技ロードレースのコースとして使用されるため、6月8日から9月30日までサーキットとしての一般利用、入場はできないことがアナウンスされている。

夏はオリンピックの自転車コースとなる富士スピードウェイ(写真:DRAFTING)
夏はオリンピックの自転車コースとなる富士スピードウェイ(写真:DRAFTING)

サーキットとしての営業は6月6日(土)〜7日(日)に決勝レースが開催されるスーパー耐久の「富士SUPER TEC 24時間レース」がオリンピック準備前のラストレースとなり、4月にスーパーフォーミュラ(第2戦)、5月のゴールデンウィークにSUPER GT(第2戦)、6月にスーパー耐久(富士24時間)と慌ただしいスケジュールになっている。

この影響を受け、SUPER GTは富士スピードウェイの8月のレースを休止し、海外戦に振り替える。近年の海外戦であるブリーラム(タイ)のレースに加えて7年ぶりにセパン(マレーシア)でのレースが復活。SUPER GTは7月に東南アジア2カ国で海外戦を行う。

SUPRAが復活することもSUPER GTの今季の大きな話題(写真:DRAFTING)
SUPRAが復活することもSUPER GTの今季の大きな話題(写真:DRAFTING)

鈴鹿8耐は1週前倒しで開催

今年、オリンピック、パラリンピックの開催は多くのプロスポーツイベント日程に影響を与えることになった。三重県の鈴鹿サーキットで開催されるオートバイレース「鈴鹿8時間耐久ロードレース」(鈴鹿8耐)も例年より1週前倒しの7月19日(日)に変更されることになった。

43回目の大会となる鈴鹿8耐(写真:DRAFTING)
43回目の大会となる鈴鹿8耐(写真:DRAFTING)

鈴鹿8耐は7月最終週の日曜日に決勝レースを開催するのが恒例となっているが、「東京2020オリンピック」が7月24日(金)から開幕するということを考慮しての変更だ。過去にも7月最終週以外で開催されたこともあったが、これはMotoGPライダーの参戦を期待してMotoGPとのスケジュール被りを避ける理由だった。

三重県は東京から300kmも離れていて影響はなさそうなイメージだが、イベント開催に必要なスタッフや機材がオリンピックに集中するため、伝統のビッグイベントの日程変更は致し方ないのかもしれない。

秋はレースイベントが目白押し

オリンピックとパラリンピックが終わると、今年の秋は怒涛のレースイベントラッシュとなる。

F1日本グランプリ」(鈴鹿/10月11日決勝)、「MotoGP日本グランプリ」(ツインリンクもてぎ/10月18日決勝)、「FIA WEC富士6時間レース」(富士/11月1日決勝)、「WRCラリージャパン」(愛知県・岐阜県/11月19日〜22日)と世界選手権レースイベントが立て続けに開催。併せて国内レースもチャンピオンを決する最終戦があり、この秋は毎週のようにビッグレースイベントが開催されるので、話題に事欠かない週末が続きそう。

レッドブル・ホンダの活躍で大いに盛り上がりそうなF1日本グランプリ(写真:DRAFTING)
レッドブル・ホンダの活躍で大いに盛り上がりそうなF1日本グランプリ(写真:DRAFTING)

ただ、近年、興行型のレースイベントは春と秋に集中する傾向にあり、ファン層はそれぞれのレースで違うものの、複数のレースシリーズを追いかけるファンにとってはどのレースを観戦しに行くか悩ましいところでもある。他分野のイベント開催が多い時期だけに興行的にも分散した方が良いのだが、オリンピックイヤーの今年は特に過密だ。

この夏はスポーツの話題がオリンピック競技に集中することになるだろう。そして、新型肺炎の今後の状況はスポンサーを務める企業やメーカーの業績に影響を与える可能性もあり、景気の先行きは不透明な要素も多い。

景気の影響を大きく受けがちなモータースポーツ。世界選手権や国内レースイベントで、2020年はモータースポーツがスポットライトを浴びる明るい話題が届けられることを心から願いたい。

【2020年の主な国内モータースポーツイベント】(抜粋)

3月

・モースポフェス 2020 SUZUKA[鈴鹿サーキット/7日(土)、8日(日)]

・岡山国際サーキットファン感謝デー[岡山国際サーキット/14日(土)、15日(日)]

・スーパー耐久 開幕戦 [鈴鹿サーキット/21日(土)、22日(日)]

4月

・スーパーフォーミュラ/全日本ロードレース 開幕戦 [鈴鹿サーキット/4日(土)、5日(日)]

・SUPER GT 開幕戦 [岡山国際サーキット/11日(土)、12日(日)]

・スーパーフォーミュラ 第2戦 [富士スピードウェイ/18日(土)、19日(日)]

・全日本ロードレース 第2戦 [ツインリンクもてぎ/25日(土)、26日(日)]

・スーパー耐久 第2戦 [スポーツランド菅生/25日(土)、26日(日)]

5月

・SUPER GT第2戦 [富士スピードウェイ/3日(日)、 4日(祝)]

・スーパーフォーミュラ 第3戦 [オートポリス/16日(土)、 17日(日)]

・全日本ロードレース 第3戦[スポーツランド菅生/23日(土)、24日(日)]

・SUPER GT第3戦 [鈴鹿サーキット/30日(土)、31日(日)]

6月

・スーパー耐久 第3戦 [富士スピードウェイ/5日(金)〜7日(日)]

・スーパーフォーミュラ 第4戦 [スポーツランド菅生/20日(土)、21日(日)]

・全日本ロードレース 第4戦 [筑波サーキット/20日(土)、21日(日)]

7月

鈴鹿8耐 [鈴鹿サーキット/16日(木)〜19日(日)]

8月

・スーパー耐久 第4戦 [オートポリス/1日(土)、2日(日)]

鈴鹿10時間  [鈴鹿サーキット/20日(木)〜23日(日)]

・スーパーフォーミュラ 第5戦 [ツインリンクもてぎ/29日(土)、30日(日)]

9月

・全日本ロードレース 第5戦 [岡山国際サーキット/5日(土)、6日(日)]

・SUPER GT第6戦 [スポーツランド菅生/12日(土)、13日(日)]

・スーパー耐久 第5戦 [ツインリンクもてぎ/19日(土)、20日(日)]

・全日本ロードレース 第6戦 [オートポリス/19日(土)、20日(日)]

・スーパーフォーミュラ 第6戦 [岡山国際サーキット/26日(土)、27日(日)]

10月

F1日本グランプリ  [鈴鹿サーキット/8日(木)〜11日(日)]

MotoGP日本グランプリ [ツインリンクもてぎ/16日(金)〜18日(日)]

・SUPER GT第7戦 [オートポリス/24日(土)、25日(日)]

11月

FIA WEC 富士6時間 [富士スピードウェイ/10月30日(金)〜11月1日(日)]

・スーパー耐久 第6戦 [岡山国際サーキット/10月31(土)、11月1日(日)]

・全日本ロードレース 最終戦 [鈴鹿サーキット/10月31(土)、11月1日(日)]

・SUPER GT最終戦 [ツインリンクもてぎ/7(土)、8日(日)]

・スーパーフォーミュラ 最終戦 [鈴鹿サーキット/14(土)、15(日)]

WRC ラリージャパン [愛知県・岐阜県/19(木)〜22(日)]

・SUZUKA Sound of ENGINE [鈴鹿サーキット/21(土)、22(日)]

太字は世界選手権および国際レースイベント

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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