韓国で広がるコンビニの社会貢献…セブンイレブン8千店が児童虐待の「駆け込み寺」に
韓国で増え続ける児童虐待。新型コロナウイルス感染症によりさらにその被害が広がっているとされる中、大手コンビニチェーンが積極的な社会的アクションを起こしている。
●虐待が疑われる子どもを観察し、通報も
韓国セブンイレブンは今月7日、同社が行っている「子ども達が幸せな社会作り」活動の一環として、8100余りの加盟店が「児童の安全を守る店」への参加を申請したと明かした。
「児童の安全を守る店」となった店舗は、児童虐待の予防案内といった広報活動をはじめ、客として訪れた子どもが児童虐待を受けているのかを観察し、場合によっては当局に申告(通報)した上で、臨時保護所の役割を担う。
今月11日、筆者が電話取材に対し同社の関係者は「コンビニは市民の近くにいるチャンネルだとして、各店舗の店長たちが自発的に加盟を申請している状態だ」と明かした。
韓国政府の統計を見ると、韓国の児童虐待2014年の10,027件から2019年には30,045件(男児51.4%、女児48.6%)と増え続けており、死亡者も15年の16人から19年には42人と急増している。虐待の75.6%は両親によるもので、加害者に対する告発・告訴件数も10,334件(19年)にのぼる。
背景には2014年9月に「児童虐待犯罪および処罰に関する特例法(児童虐待処罰法)」が施行されて以降、学校の先生や医療機関、児童福祉施設などに対し虐待と疑われる場合に義務的に申告するように定めていることも影響している。
だが、こうした制度の運用に加え、メディアも凄惨な児童虐待のニュースを何度も報じているのにもかかわらず、一向に収まる気配が見えないのが現実だ。
韓国セブンイレブンの発表によると、同社は2009年に初めて警察庁と「児童の安全を守る店」についての協約を結び、児童虐待の予防のためのキャンペーンを展開してきた。
その一貫として、児童虐待の予防と通報の活性化をお願いする文言を商品パッケージに記載するなど普段から積極的な活動に務めているという。11種類にのぼる該当商品には「児童虐待の予防、セブンイレブンと警察庁が共に行います」、「児童虐待が疑われる場合にはすぐに112(日本の110番にあたる)に通報してください」と書かれている。
●児童虐待を防ぐインフラとしてのコンビニ
工夫は他にもある。レジの画面に児童虐待の通報や予防に関する案内文を常に掲載する他、店舗内のデジタル画面でも関連した広報映像を流している。また、昨年8月からは販売している弁当の容器に、過去に失踪した児童の写真と情報が書かれたステッカーを貼っている。
こうした活動について、同社のチョン・チョルウォン相生(共生)協力チーム長は「コンビニが持つ緻密な社会的なインフラを活用し、児童虐待を予防し安全な社会を作る力になれてやりがいがある。こうした活動が児童虐待に対する国民の共感と関心を高め、積極的な通報につながり、関連被害を減らすために寄与することを期待する」と報道資料の中で明かしている。
韓国では今年5月、慶尚南道昌寧市で両親から凄惨な虐待を受けていた9歳の女児が、ベランダから屋根を伝い懸命に脱出後、通行人に保護されコンビニに駆け込んだ事件があり、全国で大きく報道された。
今年8月にもソウル市麻浦区で酔った母から暴力を受けた10歳の女児が、鼻血を出したままやはりコンビニを頼るなど、社会的に「駆け込み寺」としての認知度が高まっている。
韓国では1000人あたりの児童虐待件数が3.81件となっているが、まだまだ隠れたままになっている虐待があるとする専門家の意見も多い。特に新型コロナウイルス拡散を受け児童が家にいる時間が長くなることで虐待が増え、さらに学校がオンライン教育に切り替わったことで以前より発見が難しくなっている現状もある。
こうした中、今年10月には「GS25」3000店舗が「児童の安全を守る店」に加入するなど、セブンイレブンと同様の活動を大手コンビニチェーンが行っている。警察との連携の下、全国に4万を超えるコンビニが新たなインフラとしての役割を担い始めている。