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なぜ、新型コロナでの一斉休校の学校で高ストレス者が減ったのか?

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:イメージマート)

 ストレスの多い教員は、子どもたちにとってデメリットでしかない。教員のストレスは減らせるのか。

|教員のストレスは子どもたちにとっても良くない

 学校はストレスの溜まる場所だ。対応が難しくなる子どもたち、我がままな保護者への対応、さらには管理職からのパワハラ、まさにストレスの原因で満ちあふれている。

 ストレスでイライラした教員は、それを子どもたちにぶつけることも珍しくないはずだ。授業中や休み時間に、やたらと怒鳴っている教員を見かけるが、それは子どもたちにとってはストレスでしかないはずだ。ストレスいっぱいの環境では、教員も子どもたちも心を開いて接することはできない。学校が、そんな環境で良いのだろうか。

 6月27日、公立学校共済組合が学校の教職員のストレスチェック利用者の7年間の集計データである「ストレスチェックデータ分析結果報告書」(以下、報告書)を公表している。そこに、教員のストレスを減らし、学校を子どもたちにとっても、より良い環境にするためのヒントがある。

 報告書によれば、「高ストレス者」の割合が増えてきている。2016年には8.9パーセントだったが、2023年には11.7パーセントとなっている。

 ずっと右肩上がりできているかといえば、そうではない。2019年には10.2パーセントだが、2020年には9.6に減っている。そして、2021年には10.4パーセントと再び上昇し、以降は上昇傾向を続けている。

 2020年に何があったのか。答は、新型コロナ禍である。2020年2月27日、新型コロナが全国に広まりつつあるなかで、安倍晋三首相(当時)が突然の一斉休校を要請した。そして3月から全国の学校が休校に突入する。一斉休校が明けても分散登校など、新型コロナ感染を避けるために多くの対策が行われ、通常での学校ではなくなった。

 その2020年に、高ストレス者の割合が減っているのだ。通常とは違う学校運営、新型コロナ対策など、高ストレス者の割合が急増してもおかしくない気がするのだが、結果は逆になっている。

 当時、筆者も学校の新型コロナ対策を取材するなかで、「教室の消毒までやらされる」「遅れた授業を取り返すのがたいへんだ」といった教員の声を多く聞いた。

|教員らしい時間を過ごせた

 しかし一方で、「子どもたちと接する時間が増えた」「子どもたちとゆっくり話し合っている」という声も聞いた。とくに分散登校の期間は、相手をする子どもの数も減るし、授業の進行についてもうるさくいわれない。多くの行事も中止になった。それらによって、ゆっくりと子どもたちと接する余裕が教員に生まれたのではないだろうか。実際、「教員らしい時間を過ごせている」と話してくれた教員も多かった。

 高ストレス者の割合が2020年に減っているのは、そういうところが無関係ではなかったのではないだろうか。教員とゆったり接することのできた子どもたちにとっても、それは有意義な時間だったにちがいない。

 報告書から聞こえてくる貴重な教訓と、真摯に向き合ってみる必要がある。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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