オスロ市「核兵器禁止条約にノルウェー政府は署名を」
5日、ノルウェー国会は、「ノルウェーは核兵器禁止条約に署名しない」という結論を可決。一方で、首都オスロは「署名するべきだ」という声明を発表した。
オスロ市によると、同条約を一国の首都が支持するのは世界初だという。国と自治体レベルで意見が割れている図式がより明白になった。
核兵器を条約で禁止しようとするICANは、2017年にオスロでノーベル平和賞を受賞した。NATO加盟国であるノルウェーは条約の署名を拒み続けている。
現在、ノルウェー政府は中道右派政権。一方で、首都オスロでは反対勢力である中道左派勢力が権力を握っている。
政権交代が頻繁に起きるノルウェーでは、保守党(中道右派)か労働党(中道左派)から首相が誕生するのが恒例だ。連立する各党との交渉と妥協により、全体的なバランス感覚を求められる両党は、条約の署名は拒んでいる。
現在のイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、ノルウェーの元首相・労働党元党首。ロシアと隣接するノルウェーの立場は複雑だ。
オスロ市はICANを支持
オスロという自治体レベルでは、マリアンネ・ボルゲン市長(左派社会党)が、核廃絶のために積極的に動き続けてきた。レイモン・ヨハンセン知事(労働党)は、市長と連名で声明を発表。
「世界の緊張度は高まっている。核兵器は国際社会に脅威をもたらすものだ。もし核兵器が使われれば、最も被害を受けるのはその地域に住んでいる住民だ」と、ICANのキャンペーンを支持する姿勢を明白にした。
労働党のトップ内部は、条約の署名は拒んでいる。それにも関わらず、党内で影響力が強いヨハンセン知事が異なる立場を示したことは、現地では意外な流れともいえる。
それでも、ノルウェー国会は、5日、ノルウェーは核兵器禁止条約に署名をしないと結論づけた。国会の外では抗議する人々が集まった。
首都の動きは政治の変化を加速させる
同じ日、オスロ市庁舎では、ボルゲン市長は広島・長崎からの高校生平和大使3人と面会。
「首都の条約支持は、政府と国会に圧力をかけることになるでしょう」と市長は取材で話す。
「国会と政府が条約にいずれ署名するかはわかりませんが、このような自治体レベルの動きは世界中で広がっています。市民の動きは政治を変えます。首都が政府に働きかけることには、なんらかの意味があるだろうと信じています」。
オスロ市によると、一国の首都がICANのキャンペーンを支持する立場を表明するのは世界初となる。
ノルウェーでは、すでにトロムソやトロンハイムの都市が、国は条約に署名するべきだろうと議会で可決した。この流れは全国各地の自治体で広まるだろうとオスロ市長は考える。
オスロ市議会は3月27日の本会議で、知事と市長の提案を議論し、大多数で可決される予定。
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Text: Asaki Abumi