なぜパニックになると、トイレットペーパーを買い占めるのか 新型ウイルスの家計への影響
新型ウイルスの感染から身を守るために、日本を始めとした多くの国でマスクが品不足に陥っています。香港やシンガポールなどでもマスクを入手することが難しく、外国人の友達に日本のネット通販にマスクの在庫があるのかを聞かれることもあります。
「これは転売だから高いよ。アメリカのアマゾンの方がよいかもしれない」
グローバル配送が一般的になるなか、世界中の人が各国のネット通販で物を買おうとします。また、中国の医療関係者の間でもマスクや防護服などが常に不足しています。そのような理由もあって、マスクをいくら増産しても品薄が続くのでしょう。
マスクの次はトイレットペーパー
マスクや消毒液などは品切れの状態が続いていますが、次に品切れになったのはトイレットペーパーです。香港では中国からのサプライチェーンが麻痺するのではといった憶測からパニック買いが起きたのです。シンガポールの場合は、自宅待機に備えた買い込みのようです。
「まるでオイルショックのよう」
シンガポールの大手日系百貨店の定員さんが漏らしていました。
日本でも1973年に起きた石油危機でパニックが起き、トイレットペーパーの買い占めに発展する出来事がありました。また、大震災の時にも一時的にコンビニやスーパーから生活用品や食品が品薄になったことを記憶している人もいるでしょう。
これはなぜでしょう。
アダム・スミス著『マネー・ゲーム』には群衆についてこのような記述があります。
『ある個人が群衆の一員になるやいなや、「たとえていえば文明の階段を何段も堕落するようなもの」』
『群衆の心理は、各個人の心理を平均化したものではなく、新しい共通分母、つまり自分自身の無意識な衝動に屈したという意味において、うつろになりさがってしまうからである。群衆は、「知性では孤立した個人に劣る」が、何に接するかによって個人より良くも悪くもなるものである。』
『イギリスの作家のキプリングがいったように、「あなたのまわりの人がみんな度を失っているとき、あなたが平気でいられるのは、ひょっとするとあなたは大事なニュースを聞きそびれているのかもしれない」ということになる。』
シンガポールで買い占めがあった時に、平常通りの行動を取っていた人は買い占めのことを知らなかった人でした。
「スーパーに行ってみてびっくり!物がない」
しかし、すぐに首相が生活必需品は十分にあると演説をし、翌週にはスーパーにどっさりとトイレットペーパーの在庫を戻すことによってパニックがすぐに収まりました。ほんの2-3日で戻ったためにその間に買い物をしていなかった人は気づきもしなかったかもしれません。
群衆は物がないと思うと何ヶ月分も買い込もうとしてしまいます。しかし、たっぷりあると分かれば安心をし、買いだめをするのをやめます。シンガポールで小さなスーパーを営んでいるオーナーに聞いたところ、トイレットペーパーはマレーシアやインドネシアから来るから全く心配がないということでした。
さて、買い占め問題は日本でも起きる可能性があるのでしょうか。
日本経済新聞電子版記事「トイレットペーパーに影響も」 特種東海製紙の関根常夫取締役によると、『海外からの観光客が減れば、「トイレットペーパーの利用が減り、販売が落ち込むかも」。』というコメントもあり、国内で生産もできており、よほどのパニックで1億人が一気に買い込まない限りはトイレットペーパーがなくなることはなさそうです。
さて、買いだめはバカバカしく、余分にお金がかかると分かっていても、周りがどんどん買っていくと物がなくなり不安に駆られます。来週在庫が来るのかどうかも分かりません。そういう状況では自体の悪化に備えて2週間分程度のトイレットペーパーや保存できる食料を自宅に置いておくのは合理的なのかもしれません。
また、当面の間、大規模の集まりなどは中止や延期のリスクがあるために、副業や自営でセミナーやサロンなどを運営している人などは打撃を受けかねません。
危機が長引くリスクもあるために、無駄遣いはせずに半年分の生活費を確保しておく必要性もありそうです。中国ではウイルス拡散防止で使用済み紙幣を消毒し、最長2週間の隔離をするという報道もありましたが、スイカやQRコードなど非接触型の電子決済を利用すると安全でしょう。
株価は政府の金融緩和でかろうじてもっていますが、大暴落のリスクもはらんでいるので注意深く見守る必要がありそうです。
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