シンガポール在住FPの花輪陽子です。
「大暴落で老後資金の大部分がなくなりました」-リーマンショックの際や8月上旬の大暴落などの際に資産を大きく減らしてしまう方が少なからずいます。
私はリーマンショック後にFPとして独立をしたのですが、「退職金でまとめて買った投資信託が半分になってしまった」といった相談を当時は何度も受けたことがありました。
かといって減らない預貯金や現金にしておけば、インフレでお金は目減りしていく一方です。老後資産を大暴落やインフレからどのように守ればよいのでしょうか。
『世界標準の資産の増やし方: 豊かに生きるための投資の大原則(東洋経済新報社)』から考察していきます。
インフレが進めば老後資金2000 万円を現預金で置いておくだけでは不十分な可能性があります。インフレ経済で一番ダメージを被るのは、インフレに伴って増加する可能性の高い賃金を得ていない年金生活者だからです。
給与所得者の場合、物価上昇は、タイムラグはあっても、賃金にある程度 反映されると考えられます。年金は物価や賃金の変動率のほかに、マクロ経済スライドによる調整が行われています。しかし、現金で持っている2000万円インフレ調整は行われませんから、現金の価値が目減りする分、老後資金が不足するわけです。
老後資金を減らさずに、いかにしてインフレから資産を守ることができるか
それでは、どうすればインフレ時代に老後のために蓄えてきたお金の価値を、大きく減らすことなく守ることができるのでしょうか。
約20%税金を取られると、7%のリターンが単純計算で 5.6% に削られます。3%のインフレを考慮すると、実質リターンは 4%から 2.6%に低下するからです。
既にリタイアしている世帯は守りの運用を心がける
リタイア後も運用をしながら取り崩していけば、お金の寿命を延ばすことができます。インフレ率が 3%であれば、3%以上のリターンを出せばお金の目減りを阻止することができます。
例えば、20歳から毎月10万円を7%複利で運用できたとすると、60歳時点で元本は約2億6248万円になります。しかし、3%のインフレが続いていたとすると、物価は今より約226%上昇していますので、現在の価値で言うと約7874 万円 になります。この7874万円を元本にして3%で運用すると、運用からの収益が約 236 万円出ます。ここから年 360 万円を取り崩すと、元本は約 7750 万円に減ります。このペースで取り崩しを続けると 96 歳になると蓄えが底を突くことになります。
「株などのリスク資産に投資をしたら値下がりリスクもある?」
「株などのリスク資産に投資をしたら値下がりリスクもある?」のではないでしょうか。著者の河北博光さんに追加で聞きました。
ファミリーオフィスの資産運用でもポートフォリオには一定の割合で株式を組み入れることが一般的です。投資の世界では「100から自分の年齢を引いた数字を株式の割合(パーセント)にする」のが目安とよく言われています。70歳であれば株式の割合を3割までにするなどに抑えれば、ある程度リスクを限定させることができます。