60日分が即日満席 10月14日開店「ピーター・ルーガー」は熟成肉ステーキも予約機能もすごい
米国ニューヨークの高級ステーキハウス「Peter Luger STEAK HOUSE」(以下、ピーター・ルーガー)が東京・恵比寿に10月14日オープンする。同店はオープン前ながら今何かと話題となっている。「ピーター・ルーガー」とは「熟成肉のステーキ」を世界に広めた存在で『ミシュラン』『ザガット・サーベイ』などの格付け本での上位ランキングの常連となっている。
「ピーター・ルーガー」はドイツからの移民のピーター・ルーガーが1887年にニューヨークでレストランを開業、その後経営不振で店がオークションに出された。そこで落札した人物のファミリーによって経営は継承されていき、同時に「ピーター・ルーガー」の最大の特徴である「熟成肉ステーキ」のエイジングのノウハウも継承され高度なものになっていった。エイジングルームの温度、湿度はいずれもトップシークレットとなっている。9月28日は記者内覧会であったが撮影は許されなかった。熟成肉の香ばしいにおいは十分に漂っていた。
日本で同店を経営するのは株式会社ワンダーテーブル(本社/東京都渋谷区、代表取締役社長/秋元巳智雄)。同社ではクラフトビールのレストランやしゃぶしゃぶ・すき焼きなどの自社開発ブランドを展開する一方で、「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」「バルバッコア」「オービカ モッツァレラバー」といった海外の名店を日本に根付かせていることが特徴だ。2015年よりピーターファミリーと知己を得て交流を重ねてきたところ、「日本でピーター・ルーガーをワンダーテーブルと一緒に展開したい」という意向を示されるようになり、2018年にワンダーテーブルがピーター・ルーガーの日本における独占契約を締結することとなった。
「熟成肉ステーキ」のブランド
「ピーター・ルーガー」東京店(以下、東京店)は恵比寿ガーデンプレイスに隣接したエリアにあり以前ステーキハウスだった物件を改造し、敷地面積約406坪、3階建て、延床面積約489坪、全204席となっている。レンガ造りの赤土色の外観は周囲の景観になじんでいる。
「ピーター・ルーガー」の看板商品は「Tボーンステーキ」でTの形をした骨付き肉の状態でフィレとニューヨークストリップ(サーロイン)を同時に味わうことが出来る。米国農務省によって格付けされた最上級プライムビーフを使用し、東京店でもオーナーが選任した目利き職人が吟味して買い付けをしている。
これらの肉をチルドで空輸して「東京店」の店内にある専用の熟成庫に入れ独自のエイジング方法で28日以上熟成させる。これによって肉の旨味や香りが増し、肉質がより柔らかくなる。十分に熟成させた肉は周りをカットして塩を振り、専用のブロイラーで表面を焼いて旨味を閉じ込める。肉を適度な大きさにカットして、溶かしたバターと共に皿にのせて、再びブロイラーに入れて数分間焼成した後、お客のテーブルに運ばれる。このようにたくさんのオリジナルの工程を経て提供するステーキは、噛めば噛むほど旨味が出てくるピーター・ルーガーならではの味わいとなる。
「街の資産」となる店に育てていく
「東京店」のメニューは、看板商品の「Tボーンステーキ」(時価)の他に、ランチタイム限定の名物バーガー「ルーガー バーガー」2800円(税込、サービス料別、以下同)、「フレンチフライドポテト」1400円、「ルーガーズ スペシャル ジャーマン フライドポテト」1400円、クリームを使用しない「クリームドスピナッチ」1400円、ソテーしたこだわりの厚切りベーコンをトッピングした「アイスバーグレタスのウェッジサラダ」2500円。さらに、“ピーター・ルーガーのデザートの代名詞”と言われるアメリカンサイズのバニラアイスとたっぷりのシュラッグ(ホイップクリーム)にホットファッジソースをかけた「ルーガーズスペシャル“ホーリーカウ”ホットファッジサンデー」1600円、などが挙げられる。客単価はランチ8000円、ディナー1万8000円と想定している。
また、ニューヨークにない「東京店」オリジナルの施設としてブティックを併設している。ここでは店内のエイジングルームで熟成したTボーンステーキやリブアイステーキ、ハンバーグ用のパティのほか、アメリカンサイズのデザート、プライベートブランドのステーキソース、「ピーター・ルーガー」がセレクトしたオリーブオイルや塩・コショウなどもラインアップする。さらにロゴ入りのTシャツやバッグなどのグッズも販売する。
ワンダーテーブル社長の秋元氏は、「ピーター・ルーガーの総プロジェクト費用は約10億円となったが、これから年商15億円を目指し、10年20年30年と継続する店に育てていく」と語る。まさに「街の資産」となる存在感があり、人々の記念日などの利用で象徴的な存在となっていくことであろう。
予約受付初日3時間で60日分が埋まる
さて、「東京店」で注目するべきポイントはもう一つ「AI」の活用が充実していることだ。ここにはLINEのAIテクノロジーブランドの「LINE CLOVA」が生かされている。
「東京店」では「LINE CLOVA」が、電話応対サービス「LINE AiCall」として活用されている。電話予約をAIが自動応答し、TableCheck社の予約システムに登録された店舗のリアルタイム空席情報と「LINE AiCall」が連携し、24時間いつでも予約受付を完了させる。これまでネットでしか実現できていなかった予約の自動受付が電話でも可能となり、予約の取りこぼし防止につなげている。また、電話受付業務を軽減させることで、浮いた時間をサービスレベルの向上につなげていくとしている。
筆者は9月28日にこの「LINE AiCall」を体験した。従来では「○○の方は1番を……」と機械的な案内をされるものだが、AIが自然な対話で電話応対をしていた。これが24時間対応するのだから、予約のチャンスは広がることであろう。
10月14日にオープンする「東京店」では、その1カ月半前の9月1日に予約受付を開始したが、開始後3分で約30組の予約があり、用意していた60日分のディナー帯は3時間で満席に。ランチタイムも当日中にすべて埋まったという。そこで、新たに90日先まで予約ができるように期間を拡大したという。
コロナ禍で飲食業はさまざま規制や要請に苦しんできたが、この約1年半の間に強烈な集客力を持つ業態や、顧客や従業員にとってのさまざまな不便を解消するサービスが開発されてきた。緊急事態宣言が解除されてからも感染症に対しては慎重な姿勢を崩すことはないだろうが、飲食業界の構造は著しく様変わりするのではないか。