変装はゴーン被告が検察から弁護団の支配下に入ったことを示す儀式である
フーテン老人世直し録(426)
弥生某日
カルロス・ゴーン被告が6日に保釈され東京拘置所を出た。その時に労働者風の「変装」をしていたことが注目された。メディアで「専門家」と称する人たちが色々解釈を施しているが、概ね「無罪を主張するなら堂々と出てくればよかった」と批判的である。
フーテンは、東京拘置所を出たゴーン被告が背広姿で「私は無実です」とカメラの前で語り、車で走り去るという常識的な形を取らなかったことに、むしろ無罪に賭ける並々ならぬ覚悟を感じた。
東京拘置所にいたゴーン被告は全面的に検察の支配下にあった。それがこれからは弁護団の支配下に入ることを見せつけたのが、あの「変装」の「儀式」だと思うからである。
カリスマ経営者であったゴーン被告が、自ら望んで労働者に「変装」し、これまで乗ったこともない軽自動車に乗ることは思いつきもしないだろう。おそらくゴーン被告は常識的な形を考えていた。それをさせなかったのは弁護団である。
メディアの目をくらますためではない。メディアは車だけでなくオートバイやヘリコプターで追跡してくることは弁護団だって分かっている。ゴーン被告に労働者の姿をさせ軽自動車に乗せたところに意味がある。
つまりこれまでのゴーン被告なら嫌がることを弁護団はあえて指示した。そしてゴーン被告は無罪になるため弁護団の指示に従うしかないことを理解し、弁護団の支配下に入ったことを行動で示した。それは裁判所に向けられた弁護団の戦略である。
ゴーン被告が無罪を勝ち取るには、裁判が始まる前に弁護団と綿密な打ち合わせを行う必要がある。しかし東京拘置所にいる限りそれは制約される。その意味で当初は6月頃とみられた保釈の時期を3か月も早く実現した意義は大きい。そのためにはゴーン被告に嫌がることを飲ませる必要があった。
1回目の保釈請求でゴーン被告は、裁判所の要求があれば必ず日本に戻るからフランスに住みたいと、フーテンに言わせれば誠にお気楽な要求を行った。無罪を訴えている被疑者を国外に出すことなど考えられない。保釈が認められないのは当たり前である。
2回目はそれを反省してかゴーン被告は日本に住むと言った。しかしそれでも証拠隠滅の恐れがあり、裁判所は保釈を認めなかった。だから今回は、弁護団がゴーン被告の自由を制限して支配下に置き証拠隠滅をさせないと裁判所に約束したのである。
弘中淳一郎弁護士によれば、ゴーン被告は監視カメラの設置やパソコンの使用制限などの保釈条件に「嫌な顔をした」という。しかしゴーン被告に嫌な顔をさせなければ裁判所は保釈を認めなかった。
そのことを理解したからゴーン被告は弁護団の支配下に入る道を選択した。そして自分が考えた方法ではなく、世間から嘲笑を浴びようとも弁護団から指示された「変装」を行って東京拘置所を出た。弁護団は裁判所に対しゴーン被告が弁護団の支配下に入ったことを行動で示して見せた。
ゴーン被告が東京地検特捜部に逮捕されたのは昨年の11月19日だが、同時にグレッグ・ケリー前日産代表取締役も逮捕された。容疑はゴーン被告の報酬を低く有価証券報告書に記載した金融商品取引法違反である。
この逮捕は特捜部から朝日新聞社だけにリークされたらしく、朝日だけが羽田空港でゴーン被告の専用機に乗り込む検察官の姿を撮影していた。これまで検察の捜査の数々を見てきたフーテンに言わせれば、検察に都合の良い情報を流して国民を洗脳する役割を担っているメディアは朝日とNHKが双璧である。
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