「公務員は早く結婚しやすい」は本当か?男女で大きく違う公務員の年齢別未婚率
公務員の生涯未婚率
2020年の国勢調査における生涯未婚率は、男23.8%、女17.8%(不詳補完値計算)であるが、これは当然何の職業かによっても変わってくる。一般的に、公務員は未婚率が低いイメージがあると思うが、実際はどうか?
2022年の就業構造基本調査から見てみたい。但し、就業構造基本調査においては対象が有業者のみとなる。
これを見ると、確かに、男女ともに無業者も含む全数や有業者全体の未婚率より公務員の未婚率の方が低い。特に男性は、国家公務員で15.3%、地方公務員ではわずか9.8%となっている。男性に関していえば、公務員は「結婚しやすい職業」といえる。
しかし、逆に、女性の方は、国家公務員では15.5%、地方公務員では15.1%といずれも男性を上回っている。地方公務員にいたっては、男性より5%ポイントも高い。
それでも女性有業者全体の未婚率よりは低いので、「女性公務員の方が他の職業より結婚しにくい」とまではいえないが、「男性の公務員より女性の公務員の方が未婚率が高い」というのは事実である。
国家公務員未婚率の男女差
生涯未婚率というのは、45-54歳未婚率の平均であり、実際に結婚適齢期である25-34歳の未婚率とは違う。年齢別の公務員の未婚率を男女で比較すると、より男女の差が浮き彫りになる。
国家公務員で見ると、男性は有業者全体と比べてすべての年齢において大幅に未婚率が低く、35歳時点ですでに20%を割っている。
国家公務員の男性は未婚率も低いが結婚時期も早いようだ。25-29歳の時点での未婚率減少幅がもっとも大きい。男性の平均初婚年齢は31歳であるが、それよりも早い段階で結婚している。
出生動向基本調査によれば、恋愛結婚の場合の「出会ってから結婚するまでの平均交際期間」は約4年である。29歳までに結婚しているということは24歳の頃に出会った相手と結婚していることになる。22歳で大学卒業したとしてその2年後である。実に早い。
→世の中の夫婦は交際何年で結婚しているか?平均値ではなく中央値で見る結婚決断の分岐点
反対に、女性の国家公務員は、明らかに男性とは違う推移である。むしろ39歳までほぼ有業者全体の男性と同じ傾向である。40歳を超えての初婚によって、最終的な生涯未婚率は低くなっているものの、39歳までの未婚率は女性の有業者全体と比べても高い。
国家公務員同士の男女だけを比べれば明らかに「女性の国家公務員は結婚しにくい」ことがわかる。
一方、地方公務員は、国家公務員ほどの大きな差はないが、傾向としては、「男性有業者全体>女性地方公務員>女性有業者全体>男性地方公務員」という順番であることは変わらない。
なぜ高い?女性国家公務員の未婚率
よく知らないが、国家公務員になるには相当の努力が必要なのだろう。また、公務員である以上相応の年収はあるはずだろう。当連載で「若者が結婚できない理由のひとつとして年収300万円にも達しない層が半分もいる」という事実をお伝えしているが、少なくとも国家公務員であればそんなことはないはずである。しかも、将来の安定もある程度約束されていることだろう。
経済的要因が未婚を誘発するのであれば、国家公務員は未婚率が低くなって然るべきである。実際、男性はその通りである。
また、国家公務員の仕事は非常にハードであるという話もきく。大量の仕事に追われ、日々の業務遂行に精一杯で、とても恋愛や結婚どころではないのだろうか?
しかし、それを言ったら、男性も同じ条件のはずである。なぜ、女性だけが未婚率が高いのだろうか。
特に34歳までで未婚率50%というのは非常に高いと言わざるを得ない。
穿った見方をすれば、自分の偏差値同様、相手の男性に対するハードルも高くなってしまうのだろうか。
婚姻数が激減する中で、年齢や学歴などが同じくらいの者同士の結婚、いわゆる同類婚は減っていない。たとえば国家公務員同士の結婚や、国家公務員と同等レベル以上の年収のある男性との結婚は以前とかわらずあるだろう。
とはいえ、国家公務員の男性が全員国家公務員の女性と結婚するわけではない。年収ベースで考えても、国家公務員と同等レベルの年収の男性の多くは若いうちに売れてしまっている。男性の結婚は年収の高い方からしていくものだからだ。
→男の結婚は「年収の高い方から売れていく」が、決して婚活市場には登場しない
運よく同類婚の相手と自分の年齢が若いうちに出会っていればよいが、それを逃すと、なまじ自分の基準が高いばかりに、「同類を探しても相手がいない」という状態に陥る。婚活女性界隈で「婚活してもロクな男がいない」というぼやきが出るのはそのためである。
数字のカラクリ
とはいえ、必ずしも「女性の国家公務員は結婚しにくい」とまでは言えない。この未婚率には見えない事情があるからだ。
女性国家公務員の中でも20代で結婚し、結婚や出産を契機に退職してしまっている場合もあるだろう。
そうした結婚退職者は総数からのマイナスされ、未婚率の計算対象から外れる。つまり、未婚でも既婚でも国家公務員職を継続している人だけを対象とした未婚率なので、正確には「結婚後も就業継続している国家公務員の未婚率」だからである。
しかし、それらの数字は個別の追跡調査をしているわけではないので不明である。
いずれにしても、同じ職業であっても、同じくらいの稼ぎであっても、男女で未婚率が大きく違うことはままある。同一職業同一婚姻率というわけにはならないのだ。
他の職業での結果も後程公開したい。
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