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女性の管理職の未婚率が男性と比較して圧倒的に高いという事実

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

職業別の生涯未婚率の差異

未婚率は男女で当然違うのだが、性別だけではなく、どんな職業かによっても違う。国勢調査の就業状態等基本集計で職業別の配偶関係のデータから、それは確認できる。

男性の職業でもっとも未婚率が低いのは、管理的職業従事者である。法人や団体の役員だけではなく、部長や課長などの管理職も含む。管理職である男性はそれなりに年収も多いだろうし、男性の未婚率は年収が高ければ高いほど低くなるという相関もあるので、何の不思議もない。

しかし、女性の場合は、必ずしも管理的職業従事者の未婚率が低いわけではない

管理的職業従事者の男女年齢別の未婚率は以下の通りである。

25歳以上54歳までのすべての年齢帯において、管理的職業従事者の未婚率は男性より女性の方が上回っている。全体的に未婚率の高い30代まではともかく、45-54歳という生涯未婚率対象年齢においても、女性の未婚率は男性のほぼ倍もある。

念のため、2020年時点の全体の生涯未婚率(不詳補完値)は、男28.3%、女17.8%である。全体では、男性の方が10%も高いにもかかわらず、この管理的職業従事者に限れば、女性の方が5%も高いという逆転現象が起きている。

管理職未婚率の男女差

これは、職業全体総数と管理的職業従事者のそれぞれの年齢別未婚率の男女差分をグラフ化すると明らかである。

総数でみれば、すべての年齢において、男性の未婚率の方が3-6%高いが、管理的職業従事者の場合は正反対に、すべての年齢で女性の方が2-5%ほど高い

※ちなみに、この職業別全体の未婚率総数と国民全体の未婚率とは一致しない。後者には無業の未婚者も含まれているからである。

同じ職業でも男女の未婚率が、正反対の傾向となるのはなぜか。

これは、年収と未婚率との相関と合致する。前述した通り、男性の未婚率は年収が高ければ高いほど低くなる。結婚相手の条件として「男の経済力」が9割も占めるのもそういうことである。

しかし、女性の場合は「年収が高ければ高いほど未婚率は高くなる」傾向がある。厳密にいえば、年収400万以上の女性は未婚率が一定で25%以上となる。

簡単にいえば、年収400万円を境に、男と女とでは未婚率の割合がまったくの正反対の構造なのである。

年収別男女の生涯未婚率グラフ

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国勢調査では、それぞれの年収までは把握できないが、管理的職業従事者であれば、年収400万円以上はあると推定できる。管理職や役員となるほど出世して、年収も稼ぐようになった女性は未婚が多いということができる。

提供:イメージマート

女性管理職率1位の高知は?

もちろん、「管理職となる女性は…」などと一括りにしてよいものではない。人それぞれ事情がある。元々、結婚への興味などこれっぽっちもなく、仕事に邁進した女性もいるだろう。一方で、キャリアのために一番大事な時期に、結婚や出産などをしていては出世に響くからという理由で結婚を逃した、または、結婚を諦めたという女性もいるだろう。

そうした昭和的な働き方をさせる企業の側の問題であると言いたい人もいるかもしれないが、一方で、グラフを見れば、30-39歳の年齢においては、女性の未婚率男女差分も40歳以上の人たちと比べると減っていて、是正されていると見ることもできる。

写真:イメージマート

ちなみに、厚労省の白書「平成28年版働く女性の実情」によれば、全国で女性の管理職比率がもっとも高いのは高知県だそうである。ついでに、2020年の国勢調査において、不詳を除く女性の生涯未婚率で全国1位だったのも高知県である(不詳補完値計算でいえば、全国1位は東京で、高知は2位となる)。

不詳除く生涯未婚率ランキング

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不詳補完値による生涯未婚率ランキング

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男女格差是正の観点から、女性の管理職比率を高めるという話も出ているが、本人が望んだ道ならば何もいうことはない。しかし、それを達成するために、結果的に女性に対して「出世か?結婚か?」という二者択一を強要してしまっている可能性もあるまたは、「仕事も結婚・子育ても完璧に両立させるべき」という高いハードルを課してしまってはいないだろうか。世の中、そんなパワフルなスーパーウーマンばかりではない。

本人的には、仕事もプライベートもほどほどでいいという人もいるだろう。

本来、手段であるはずのことが目的化してしまい、そのために、個々人の自由や幸福感が失われるのは本末転倒だろう。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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