Yahoo!ニュース

無業男性の生涯未婚率は7割超だが、有業でも未婚率が増える「女性の上方婚」志向

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
Photo AC

有業と無業別未婚率(男)

2020年国勢調査段階での生涯未婚率(50歳時未婚率…厳密には45-49歳と50-54歳未婚率の平均)は、男28.3%、女17.8%だが、これは当然、有業者なのか無業者なのかで数値は変わってくる。

2022年就業構造基本調査を基に、15歳以上で5歳階級別の有業・無業別の男女未婚率を以下に紹介する。ここでいう、無業者とは、無職だけではなく、専業主婦・主夫、学生を含む。

まずは、男性から。

ご覧のように、圧倒的に無業者の未婚率は高い。無業者の生涯未婚率を計算すると、72.7%となる。これは、無業男性は7割が生涯未婚になるということではない。50歳時点で無業だった男性の7割が未婚だという意味である。

グラフ上、60歳以降で無業者の未婚率が急激に減少しているが、これは決して60歳以降で無業未婚男が急に結婚できるようになったわけではない。未婚のまま60歳を超えて、急激に死亡したということでもない。

60歳以降の無業未婚率が低くなるのは、有業有配偶者が定年退職したことで全体の分母の数が増えたためである。無業未婚人口的には変わらない。

とはいえ、学生や定年退職者が増える年代を除いた男性25-59歳までで、総有業者は約2560万人、総無業者は約213万人である。無業比率は1割にも満たない。つまり、無業者だけで未婚が占められているわけではなく、生涯未婚人口の多くは有業未婚である。

一方、女性はどうか?

有業と無業別未婚率(女)

男性とは大きく様相が変わり、無業より有業の方が未婚率は全体的に高い

無業女性の生涯未婚率は16%で全体より低い。

こちらも、無業未婚率が低くなる理由は、無業有配偶女性が多くなるためで、特に子育て世代にあたる30代で分母の数が多くなるためである。女性の25-59歳までの総有業者数は約2160万人で、総無業者数は549万人である。無業率は2割を超える。

当連載でも何回もお伝えしている通り、基本的には、結婚は経済生活であるので、夫となる男性には経済力が必須となる。共働きであろうが、出産・育児段階において、夫の一馬力にならざるを得ない状況を想定すれば、女性が結婚相手の対象として無業・無収入の男性を選ぶことはほぼない

写真:イメージマート

こちらの記事でも書いた通り、男性は年収の高い方から順番に結婚していくというのが如実にデータとして現れている(参照→男の結婚は「年収の高い方から売れていく」が、決して婚活市場には登場しない)。但し、年収が高ければ男性は必ず結婚相手が見つかるという保証もない。

女の上方婚志向

これは、女性の結婚における「経済力上方婚」志向というものであり、無業男性は論外として、少なくとも自分の年収より稼げない男を夫としてあえて選ぶ女はほとんどいない。そして、それは当然の判断である。非難される筋合いのものではない。

しかし、現実的にはすべての男性が女性より高収入であるわけではないので、無業を含む低収入の男性とともにある一定の収入以上のある女性の未婚率も高くなってしまう。自分より低収入の男性と無理に結婚するくらいなら、女性は自分で経済的自立をして生涯未婚の道へ進む

ところで、同じ有業者で男女の未婚率を並べてみると以下のようになる。

男女ともに各年齢とも未婚率はほぼ一緒となる。

冒頭に示したように男女の生涯未婚率は男女で10%ポイントほど男の方が高い傾向が2010年以降継続しているのだが、これには、そもそも男女出生性比の違いで、男児の方が女児より5%ほど多いことに加え、離婚した男性が初婚女性と再婚する「時間差一夫多妻男」が多いために、その割を食って未婚男性が取り残される問題によるものだった。

今後、女性の有業率が高まり、もし男女有業者が同数となったとすれば、女性の全体の未婚率も男性の未婚率以上に高まることも予想される。事実、同じ正規雇用の男女を比較すれば、男性より女性の未婚率の方が高い。

結婚のマッチング不全

同じ収入同士の未婚男女がうまくマッチング(経済力同類婚)すれば問題はないが、現実にはすべてがそのようにはいかない。より正確に言うならば、年齢を重ねれば重ねるほどうまくいかなくなる。

女性に関していえば、自身の収入もあがってしまうことでより選択の幅は狭くなるし、男性は、自分の年齢があがっておじさんになっても、無謀にも若い女性を求めて撃沈してしまう。マッチングするわけがないのだ。

日本でも世界でもかつてそうだったように(現代でもアフリカやイスラム教諸国ではそうだが)、一部の上位の経済強者男性が一夫多妻となれば解決するという話も聞くが、現状の法律ではそれは不可能であるし、やったところでそもそも経済強者人数が少なすぎて出生数が増えるほどの効果はない。

上記掲出の男女のグラフを見てわかる通り、もっとも未婚率が減少するのは、2022年の今でも20代である。勘違いがあるのだが、初婚の中央値年齢も男女とも20代のうちである。

20代のうちであれば、男女の収入差もたいして違わない。結婚を希望しない人、結婚する必要性を感じない「選択的非婚」の人は別にして、少なくとも漠然と「結婚したい」と思っている未婚男女は、29歳までに結婚しておくのがよいだろう。

写真:アフロ

そして、そのためには、結婚に至るまでの交際期間中央値は3年なので、26歳までには結婚相手と出会っていなければならないのである(参照→世の中の夫婦は交際何年で結婚しているか?平均値ではなく中央値で見る結婚決断の分岐点)。

あくまでマクロの統計的な傾向なので、あくまで「俺は違う」「私は違う」と思う人はご自由にされればいいが、ご参考までに。

関連記事

「学歴別男女の未婚率の差」大卒男性は9割が結婚しているが、大卒・大学院卒の女性は3割が生涯未婚

2022年版「男女年収別生涯未婚率」公開/率だけではわからない生涯未婚人口のボリューム層

「非正規だから結婚できない」と言われる一方で、「正社員でも年収500万以上でも生涯未婚の男」問題

-

※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。

※記事の引用は歓迎しますが、筆者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。

※記事の内容を引用する場合は、引用のルールに則って適切な範囲内で行ってください。

独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

荒川和久の最近の記事