2022年版「男女年収別生涯未婚率」公開/率だけではわからない生涯未婚人口のボリューム層
最新の年収別生涯未婚率
「稼げない男と稼ぐ女は結婚できない」と言われる。
その根拠は、男女の年収別の生涯未婚率(50歳時未婚率)によるものであるが、実際年収が低い男性ほど未婚率は高く、女性は年収が高くなればなるほど未婚率があがるというほどの相関はないが、年収400万円以上になると未婚率が高くなる。400万円という年収を境に男女の未婚率が逆転するところからも冒頭のような言説が言われるのである。
7/21に5年ぶりに更新された2022年就業構造基本調査の結果が公開されたので、最新の年収別男女の生涯未婚率をチェックしてみよう。比較のために、2017年の結果も破線で掲出する。
これをみると、多少の違いはあれ、おおまかな男女の傾向は5年前とさほど変わらない。低年収の男性は未婚率が高く、年収400万円以上の女性は男性より未婚率が高い。女性は年収500万円台の未婚率がややあがっている他は5年前とほぼ変わらないが、男性の場合、特に300万円未満の未婚率の上昇が大きい。低年収の男性がさらに結婚できなくなっているようにも見える。
割合だけではわからないこと
しかし、これはあくまで割合の話であることに留意したい。
この割合の数字だけで「低年収男性の未婚者が多く、高年収の女性の未婚者が多い」と言えるわけではないし、世の中に低年収の未婚男性と400万円以上稼ぐ未婚女性が大勢あふれているわけではない。
また、生涯未婚率は対象年齢が45-54歳であるため、その対象が結婚適齢期であった25-34歳時点での年収とはリンクしない。特に、女性の場合は、結婚後または出産に際して離職する場合も多く、独身時代400万円以上稼いでいたとしても、この計算時点では分母から除外されている。
そもそも低年収男性も高年収女性も年収別の構成比からすれば絶対人数は少ない。少ない母数の上での割合が高いことと、未婚者が多いということとは別である。
よって、正確に把握するためには、割合と同時に実数も確認しておくことが大事である。
2022年の生涯未婚率対象年齢である45-54歳の有業者未婚人口を男女で比較したものが以下である。
実数としては、男性が約209万人、女性が約134万人である(但し有業者のみ)。男性が多いのは、未婚人口の「男余り現象」によるもので、それについては以下の過去記事を参照されたい。
→未婚男性の「男余り430万人」の実態~もはや若者ではなくおじさん余りへ
実数で見ると、男女ともボリューム層は年収300万円台であることがわかる。逆に、未婚率の高い低年収男性と未婚率の高い高年収女性は実数としては小さい。もちろん、年収別の割合として高くなるのかもしれないが、全体の未婚率をおしあげているのはこのボリューム層である年収300万円台の男女なのである。
男性でいえば、年収400万円以上の構成比が45%も占める。決して低収入男性だけが未婚なわけではない。一方、女性も年収400万円未満の構成比が67%も占める。割合で見るのとは正反対になるのだ。
男の未婚と既婚を分ける壁
未婚人口が増大したのは、低年収男性が増えた、高年収女性が増えたというよりは、かつては初婚のメイン年収帯である300万円台という中間層の男女が結婚できなくなった結果であると見た方がいい。
よく「年収300万円でも夫婦そろって300万円なら世帯年収600万円でやっていける」などという声があるが、実際それでは結婚に至らないというのがこの結果である。
そもそも45歳を過ぎて年収300万円になってももう遅い。
以前にも記事化したように、結婚には限界年齢があり、男女とも40歳以上の初婚は統計的にほぼ無理である。
加えて、45歳時点ではもっと稼いでいるという見込みがなければとても結婚には踏み切れないのである。
ちなみに、男性の平均初婚年齢帯にあたる30-34歳の既婚男性の平均年収は2022年実績で約506万円、同未婚男性は約377万円であった。男性の場合、30代前半でのこの「130万円の壁」が15年後の生涯未婚か否かを決定づけるのかもしれない。
関連記事
「結婚したいと気持ちが高ぶった時に相手がいない」現代の結婚のマッチング不全
「金はなくてもモテる男」のおかげで「金があってもモテない男」が増産されていく皮肉
もはや無理ゲーとなった結婚~「金」も「顔」も両方なければ選ばれない
-
※記事内グラフの商用無断転載は固くお断りします。
※記事の引用は歓迎しますが、著者名と出典記載(当記事URLなど)をお願いします。