開幕目前の石川ミリオンスターズ(日本海リーグ)、鳴尾浜球場で阪神タイガース・ファームと対戦
■阪神タイガース・ファームとの一戦
新生・日本海リーグの石川ミリオンスターズが、今季初めてNPBとの練習試合を行った。4月18日、はるばる大型バスで兵庫県は阪神鳴尾浜球場に乗り込み、阪神タイガースのファームと相まみえた。
石川 000 100 100=2
阪神 000 601 02×=9
《バッテリー》
石川…村上、藤川、青山、井澤―植、森本、吉村将
阪神…森木、鈴木―藤田、榮枝
攻撃ではタイガースの先発、昨年のドラ1・森木大智投手から毎回ヒットを放つも、なかなか得点には結びつかない。だが四回、阿部大樹選手が自身2安打目となる中越え二塁打で出塁すると、宮澤和希選手の中前打で三進し、ワイルドピッチでスタートよく先制のホームを踏んだ。
七回には植幸輔選手が敵失で出塁、死球と内野ゴロで三進し、川崎俊哲選手の犠牲フライで2点目を挙げた。
一方、守りでは先発の村上史晃投手が気合いの入ったピッチングで、三回までを2安打無失点とみごとな立ち上がりを見せた。しかし得点した裏の四回だ。簡単に2死を取ったあと、四球に続いて連打で1点を失い、なおも安打で満塁とした。
ここでセンターに打ち上がったフライの目測を誤ったのか、阿部選手が捕球できず走者一掃の三塁打としてしまった。村上投手も気落ちしたように見え、さらに四球と左翼フェンス直撃の二塁打で2点を追加された。
だが、次の回も続投した村上投手はヒットを1本許したものの、しっかりと無失点で終えた。
六回は藤川一輝投手が1失点、七回は青山凌太朗投手が無失点、八回は初登板の井澤宇敬投手が2失点で、結果9対2でゲームセットとなった。
■「歴然たる差」
試合後、後藤光尊監督は「まだまだ歴然たる差を感じました」と振り返った。「スイングの速さだったり、ピッチャーのボールの強さ、変化球のキレだったり、まだまだ足りてないなと思う」。対戦したことで、改めて見えた部分もあったようだ。
だが、まだ開幕前。新チームとなって対外試合は5戦目で、「最近、ようやくヒットが出始めた」という状態だそうで、「これからもっともっとスイングも速くなるだろうし、まだまだ調子は上がる」という手応えも掴んだ。
先発の村上投手に関しては「彼のよさはポンポンとテンポ、リズムよくどんどんストライクゾーンで勝負していくところ。今日はそれが初回から見えたので、彼は心配していない。あの(センターの捕球ミス)あとも折れずにしっかり投げきってくれたので、そこもよかった。シーズンでもしっかりやってくれると思っている」と、今季もローテーションの一角として頼りにしているという。
試合中のミスについてはこのように話す。
「それが独立リーガー。粗さがあるということ。まぁ一生懸命にやった中でのミスは仕方ない。やった本人がどう受け止めて、どう練習していくかが大事。こっちから言うのは簡単だけど、本人が気づいて自分から動き出さないと力はついてこない。明日以降、ミスが出た選手たちがどういう動きをするかというのは、しっかり見ていきたい」。
同じミスを繰り返さぬよう、次回以降の試合への教訓とすべく目を光らせる。
■「考える」ということ
後藤監督は「ゲームの中で学んでほしい。この状況だったら右打ちだなとか、ここは絶対に三振はしちゃいけないとか、犠牲フライを打ちにいくとか打つ方向だとか、そういう状況判断ができるようになってほしい」と望んでいる。
「理想は選手たちが勝手に動いてくれること。まぁ、そこまでいかないにしても、僕と選手たちの間で『次はこれだよな』っていう意思疎通ができるようになってくれば、ホンモノじゃないですかね」。
サインを出す前に、いや、出さずとも展開を読んで動けることを期待する。
そのために、常日ごろから選手個々とのコミュニケーションを大事にしているという。試合後、選手本人に自己採点をさせ、その上で何ができて何ができなかったのか、よかった点や悪かった点など、意見を交わして確認していく。
ただ、「答えは簡単に教えない」とも言う。「選手が自分で考えて動けないと、本当の意味での力はつかない。だから、自分で考えるというところがすごく大事」と、“考える”ということを強調する。
「考えろ」と言われて、すぐに考えられるようになるのは難しい。だが、そういう方向に促すよう、よりコミュニケーションを密にすることは指揮官として意識しているようだ。
■今年のミリオンスターズは
指揮を執って2年目になる。今年はどんなチームになるのだろうか。
「投手力を軸にして、守り勝つ野球をする。しっかりと守備からリズムを作って攻撃につなげていけるように、そういう試合展開にもっていく。今年のメンバーは小粒で、これといった目立つ選手もいないけど、その分、チーム力というか、しっかりとつないでつないで点を取りにいく野球をしていきたい。そういう意味では、細かいところまでしっかりと意識が浸透するかどうか、またそれを僕が徹底できるかどうか」。
やはり“考える”ことが重要になってくる。
■新生リーグとしてのメリット
リーグが再編成され、所属する日本海リーグは富山GRNサンダーバーズとの2チームだけになったが、「相手が1チームだけなので、その分、データなどが取れやすい。だから選手も考えて入っていきやすいと思う」と前向きにとらえて取り組む。
さらに今回のようなNPBとの対戦は、これまで以上に増えそうだ。
「NPBとの試合ではしっかり刺激をもらう。また、対戦することで自分の“立ち位置”がわかる。こういう試合を大事にしたいと思っている」。
選手たちそれぞれが目指す場所であるNPB。対戦することで、ドラフト指名された選手たちと比して自身に何が足りないのかを、身をもって感じることができるのだ。
また、対戦球団の首脳陣はもちろん、各球団のスカウトも見ているわけで、大きなアピールの場でもある。選手の夢をかなえるためにも、存分に活用していきたいとうなずく。
■開幕に向けて
試合後、全体ミーティングだけでなく個別でも選手と話したという後藤監督。しかし課題は尽きないようで、「長い(帰路の)バスの中でも、いくらでも話はできますからね」と、ニヤリと不敵な笑みを浮かべてバスに乗り込んだ。西宮市の鳴尾浜球場から金沢まで約5時間、開幕に向けて充実の時間になったことだろう。
日本海リーグの開幕戦は4月29日(宮野運動公園野球場)、石川ミリオンスターズのホーム開幕戦は5月5日(金沢市民球場)。いずれも相手は富山GRNサンダーバーズで、13時プレーボールだ。
“未来のスターの原石”を発掘しに、ぜひ球場に足を運んでみてほしい。
(写真提供:石川ミリオンスターズ)