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【平野レミ】自炊は「自分のため」の料理だから、自由に楽しく作ればいいのよ

ボブ内藤編集者、ライター、インタビュアー
撮影/八木虎造

料理愛好家の平野レミさんが、初のひとり自炊本『平野レミの自炊ごはん』(ダイヤモンド社)を上梓した。

2019年に愛する夫、和田誠さんを亡くされ、「未亡人」になったレミさんだが、「味望人=味を望むすべての人」を名乗って精力的に情報発信を続けている。

「いつも元気ね~」と言われる、そのバイタリティの源泉は一体、何なのだろうか?

今回はそんなレミさんに、ひとり自炊を楽しむコツについて、語っていただこう。

フライパンひとつで何でもできる「レミパン」誕生秘話

『平野レミの自炊ごはん』は、「せっかちな私が毎日作っている72品」という副題にある通り、“シェフ料理”ならぬ“シュフ料理”をモットーにこれまで考案してきた数々のアイデアが散りばめられたユニークなレシピ本だ。

シェフのようにお金と時間をたっぷりかけて作るのではなく、シュフとして限られた食材、限られた時間で最大限のおいしさを引き出すのがレミさんの料理の特徴だ。

その手法は、「ひとり自炊」にも巧みに取り入れられている。

例えば、「のりのりパスタ」。

和風だしパックで作っただし汁に、半分に折ったスパゲッティを入れ、のりをのせて水分がなくなるまで煮る。バターじょうゆを加えて混ぜ、三つ葉を添えて出来上がり。ゆずこしょうをつけながら食べる。

撮影/邑口京一郎(『平野レミの自炊ごはん』より)
撮影/邑口京一郎(『平野レミの自炊ごはん』より)

スパゲッティを半分に折って、フライパンひとつで作る「ワンパンパスタ」が最近、注目を浴びているが、レミさんは50年近く前、結婚当初からパスタはフライパンひとつで作ってきたという。

ちなみに、「フライパンひとつで作る」といえば、レミさんが新潟県・燕三条の食器メーカーと共同開発した「レミパン」のコンセプトに通じている。

今や多くの料理好きに支持されている「レミパン」は、どんなきっかけで生まれたのだろう?

家族に料理を作るだけじゃなくて、雑誌やテレビに料理を紹介するためにメニュー開発するようになって、我が家のキッチンはお鍋のフタの置き場所もないほど散らかり放題になることが多くなってね。

子どものころ、母に「また今日も派手にやったわねー」と言われていたときに逆戻りしちゃった感じ。

何とかしなきゃと思って、フタが立って置き場所をとらないものだったり、「炒める、焼く、煮る、蒸す、揚げる、炊く」をひとつにできる深皿のフライパンはないかなぁと思って、いろんなお店に問い合わせたんだけど、どこにもないの。

どうしたものかなぁ、と悩んでいたとき、燕三条の株式会社オダジマの社長さんが声をかけてくれたんです。とっても素晴らしいタイミングで!

使ったフタやお玉を、立ったまま置けるようにしたり、アイデアもいろいろ提案してできあがったのが「レミパン」。苦労して作っただけに、会う人、会う人から「私も愛用してます」って声をかけていただくと、ホントにうれしくなるんですよね。

でも、売り出してまだ間もないころ、株式会社オダジマの社長さんに売れ行きが気になって聞いてみたら「注文がへって、へってしょうがないんです」って言われてガッカリしちゃったのよね。でも、よくよく話を聞いてみたら、「へってる」というのは「減ってる」って意味じゃなくて、「入(へぇ)ってる」なんだって。思わず「わっはっはっ!」って笑っちゃった。

撮影/八木虎造
撮影/八木虎造

「味望人」とは、「味を望むすべての人」を指す言葉

『平野レミの自炊ごはん』(ダイヤモンド社)を読むと、レミさんが自炊生活を大いに楽しんでいる様子が伝わってくる。

ひとり自炊を楽しむコツは何なのだろう?

あるお医者さんが言ってたよ。「今日食べたものは、3カ月後の自分のカラダになる」って。ならば、私のカラダを元気でシアワセにするように管理できるのは、私しかいないじゃない。

まず気をつけなければいけないのは、人間のカラダにとって必要な五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)をバランスよく摂ること。
最近、ちょっとたんぱく質が足りないなと思えば納豆を食べたり、ビタミンが不足してるなと思えばお野菜をその日のメニューに取り入れたり。

自炊って、「自分のため」にする料理だから、嫌いなものが出てこないというのがいちばんの魅力よね。

それから、お肉大好きな家族にクチが酸っぱくなるほど言ってきた「野菜は肉の3倍食べる」っていうのも気をつけていることのひとつかな。

自炊のおもしろいところは、「自分のため」の料理だから、何でも自由にやっちゃっていいってところにあると思うのよね。

今日は忙しかったから、あまり料理をする時間がないなぁってときは、お皿に盛りつけしないで、立ったまま食べちゃったりする日もある(笑)。
でも、時間にたっぷり余裕があるときは、テーブルクロスを敷いて、大好きなワインやシャンパンを添えて、腕によりをかけて作った料理を味わうの。

音楽も料理のおいしさを引き立てる大事な要素のひとつ。最近はバッハの「ショコンヌ」がお気に入り。一曲のなかに、人間の喜怒哀楽のすべてが入っているから。

「味望人」というのは、「未亡人」と同じ意味なんじゃなくて、新入生や新生活を始める人たちを含めた、「味を望むすべての人」を指す言葉だと思っています。
ひとりぶんでも面倒なく、ちゃっちゃとカンタンにできる「味望人レシピ」をこれからもどんどん発信していくつもりです。よろしくね!

撮影/八木虎造
撮影/八木虎造

※この記事は、かっこよく年を重ねたい人におくるWEBマガジン「キネヅカ」に公開された記事を加筆・修正したものです。是非、そちらの全長版もお楽しみください。

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編集者、ライター、インタビュアー

編集プロダクション方南ぐみを経て2009年にフリーに。1990年より30年間で1500を超える企業を取材。財界人、有名人、芸能人にも連載を通じて2000人強にインタビューしている。著書に『ビジネス界に脈々と伝わる先人の知恵 業界のセオリー』(徳間書店)、『人を集める技術!』(毎日新聞社)、『はじめての輪行』(洋泉社)などがある。また、出版社の依頼で賞金500万円の小説新人賞の選考事務局を起ちあげ、10年間運営した経験のもと、齋藤とみたか名義で『懸賞小説神髄』(洋泉社)を執筆。それをきっかけに、池袋コミュニティカレッジ「小説のコツ」の講師を2013~2023年の10年間つとめた。

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