「温暖化で地球が滅ぶのに学校なんか行けない」16歳ノーベル賞候補と140万人の子ども達が大人達を叱る
今日、4月22日はアースデイ。地球環境に想いを寄せ、行動しようという日だ。世界中で頻発する異常気象など、地球温暖化が、もはや将来の危機ではなく、今、正にその猛威をふるう中、十分な対策を取らない政治家達へ、子どもや若者の怒りが爆発、各国で抗議デモを行っている。先月15日には、世界125カ国、約2000ヶ所で子ども達が温暖化対策を求めるデモに参加した。きっかけとなったのは、たった一人の少女だった。その少女、グレタ・トゥーンベリさんや彼女と共に声をあげ始めた子ども・若者達、地球温暖化の現状や課題について解説する。
◯世界125カ国140万人の子ども達が大人達を叱る!
「あなた方は、自分の子ども達を何よりも愛していると言いながら、その目の前で、子ども達の未来を奪っています」
昨年末、ポーランドで開催されたCOP24(気候変動枠組条約第24回締約国会議)で、当時15歳のグレタ・トゥーンベリさんが語った言葉は、今、地球の未来に不安を感じ、十分な対策を取らない大人へ憤りを感じている子ども・若者達の思いを象徴するものだろう。
世界同時アクションデーの先月15日やその前後では、米国や欧州、中南米やアジア、アフリカなど、ほぼ世界中125カ国で子ども・若者達およそ140万人*が「私達の未来を燃やすな!」「子ども達は気候正義を求める」「地球の代わりは無い」等のプラカードを掲げ、大人達に温暖化防止への具体的な行動を迫った。
*英ガーディアン紙まとめ
◯トゥーンベリさん一人から世界へ、日本にも
こうした子ども達のムーブメントのきっかけとなったのは、前出の少女トゥーンベリさんだ。昨年8月、トゥーンベリさんは、自国スウェーデンの政府に対し、より積極的な温暖化対策を取ることを求め、学校に行くことを拒否して、同国の国会前に座り込むという「スクール・ストライキ」を始めた。約2週間、座り込みを続けたトゥーンベリさんの行動は、英BBC放送など国際的なメディアも取り上げ、そして、彼女に触発された各国の子ども達が次々に声を上げ始めた。
近年、深刻な干ばつや山火事等に悩まされ続けているオーストラリアでは昨年11月、約1万5000人(主催者発表)の子ども達が一斉に学校を休み、同国政府が石炭や天然ガスの新規開発をやめるよう求めた。これは同時に、同国のスコット・モリソン首相が「我々が望むのは子ども達が学校でもっと勉強することであり、政治活動ではない」と、議会質疑で発言したことへのカウンターでもあった。子ども達は「政府がきちんと温暖化へ対処をしているなら、私達は活動家になる必要はなかった」とモリソン首相を批判。教職員組合も子ども達を支持する声明を発表した。
こうした動きが各国で報道され、さらにムーブメントは広がっていった。スイスやドイツ、イギリス等でも次々に子ども達が温暖化防止を訴え、数万人規模で「スクール・ストライキ」を行った。さらに、今年3月、ノルウェーの国会議員がトゥーンベリさんをノーベル平和賞に推薦し、ノミネートされたことも追い風となった。
日本でも、学生達が中心となって「Fridays For Future Japan」を今年2月に立ち上げた。Fridays For Future(未来のための金曜日)とは、トゥーンベリさんが金曜日に国会前に座り込むことから、彼女に影響を受けた一連の活動のこと。先月15日の世界同時アクションデーでは、東京都渋谷区の国連大学前に約130人が集まり、渋谷駅前などをプラカードをもってねり歩いた。
◯科学者達も声を上げた!
子ども達や若者達が懸念しているように、地球温暖化対策は正真正銘、待ったなしだ。昨年10月、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は「早ければ2030年に地球平均気温が1.5度上昇する」との特別報告書を発表した。温暖化防止のための国際的な合意「パリ協定」では、温暖化による破局的な影響を避けるため、地球全体の平均気温の上昇を1.5度未満に抑えることを目標としている。今回の特別報告書は、いわば、科学者達からの「最後の警告」とも言えよう。
今月12日には、一連の子ども達や若者の行動を支持する国際的な科学者グループ「Scientists for Future International」(未来のための科学者達 インターナショナル)の声明が、米国の著名な学術誌「サイエンス」に掲載された。日本からは、国立環境研究所・地球環境研究センターの江守正多・副センター長が声明に賛同、署名している。
[気候変動]抗議する若者たちの懸念は正当である:世界の科学者が支持声明を発表
https://news.yahoo.co.jp/byline/emoriseita/20190414-00122273/
◯2018年、気象災害による損失は24兆円!
現在でさえ、地球温暖化が原因と考えられる異常気象は、世界各国で猛威を振るっている。米保険仲介大手エーオンが今年1月に発表した報告書によれば、昨年に世界で発生した台風や大雨等の気象災害による経済的損失は約24兆円以上だという。米国での巨大ハリケーンや大規模山火事、日本を含むアジアでの巨大台風や水害、欧州やオーストラリアでの大旱魃…同報告書は「気象災害の損失額は増加傾向」「リスクが増え続けている」と警告している。
◯世界を滅ぼそうとする安倍政権とメガバンク
温暖化による破局的な影響への危機感が高まる中、その防止に逆行する動きもある。悪目立ちしているのが、日本だ。CO2等温室効果ガスの直接の排出量自体は中国や米国等が圧倒的に多く両国の責任は一際重いものの、安倍政権は温暖化対策として最優先に規制しなくてはいけない石炭火力発電を「成長戦略」に組み込み、インフラ輸出として推進してきた。邦銀メガバンク三行も化石燃料への莫大な額の投融資を行い、パリ協定以後の2016~2018年の、石炭火力発電企業上位30社への投融資額の多さでワースト1位なのが、みずほフィナンシャルグループ、2位は三菱UFJフィナンシャルグループ、4位がSMBC(三井住友銀行グループ)と、石炭火力発電への投融資額は世界でも日本からが最大なのだ。
◯希望はまだある、今すぐ行動を
温暖化の現状は非常に厳しいものだが、希望が全く無い訳ではない。例えば、近年、化石燃料への投資を引き上げる「ダイベストメント」が金融界に広がっている。2018年末の時点で、ダイベストメント参加の金融機関は1000を超え、ダイベストメント総額は約900兆円にものぼっている(関連情報)。日本からも、国際的な批判を浴びていた三菱UFJフィナンシャルグループが、石炭火力発電への新規融資を原則中止する方針を出すなど、不十分ではあるものの、ようやく前向きな動きを見せてきた。
また、太陽光や風力など、CO2排出が少ない再生可能エネルギーは、猛烈な勢いで普及が進み、今月2日に、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の発表によれば、世界の発電容量の3分の1が再生可能エネルギーとなったという。
トゥーンベリさんは「希望も必要だけど、もっと必要なのは行動です」と訴えている(TED x Stockholm 2018年11月24日)。もし、本記事を読んでいる貴方が、この世界や身近な人々の行く末を心配するのであれば、環境に配慮する政治家や企業を投票や消費活動で選ぶ(関連情報1、2)、環境NGOを応援する、自身の生活を見直すなど、具体的な行動を起こすと良いのだろう。
(了)
*本記事は、温暖化に危機感を持つ子ども達や若者達の国際的な動きが中心テーマであるが、あえて、カテゴリーでは「国内/社会」とした。日本の若者達もトゥーンベリさんに賛同して行動を起こし始めているし、なにより、日本の政治やメガバンク等の問題を読者の皆さんに自身のこととして考えてもらいたいからだ。