Yahoo!ニュース

もはや硬貨は厄介者? 「Pocket Change」取り扱い終了で考える

山口健太ITジャーナリスト
日本円硬貨の取り扱いを中止した「Pocket Change」端末(筆者撮影)

2月9日、外貨を電子マネーに交換できる「Pocket Change(ポケットチェンジ)」が日本円硬貨の取り扱いを終了しました。背景として、ゆうちょ銀行による「硬貨取り扱い有料化」の影響があったようです。もはや硬貨は「厄介者」なのでしょうか。

Pocket Changeは、外国の紙幣や硬貨を電子マネーなどにチャージできるサービスで、空港や駅などに端末が設置されています。海外で余ったお金を処分するのに便利なので、筆者も帰国したときに何度も利用していました。

この端末は外貨だけでなく、実は日本円の入金にも対応していました。しかし1月27日には長期メンテナンスを発表。理由としては「昨今の銀行での小銭両替手数料有料化に伴い、Pocket Changeへの日本円硬貨の大量投入による障害が急増」していることを挙げていました。そして2月9日、日本円硬貨の取り扱い終了に至ります。

本来は外貨を対象としたサービスで、日本円はどちらかというとオマケの扱いでしたが、硬貨を手数料無料で電子マネーにチャージできることが過剰に注目を浴びてしまった結果といえそうです(なお日本円の紙幣は引き続き利用可能)。

一方で、積極的に硬貨を受け入れているサービスの例としては「コインスター」があります。コインスターは硬貨を紙幣やギフトカードに交換できる端末で、米国の大きなスーパーマーケットなどによく設置されています。

硬貨から紙幣への交換には約10%の手数料がかかりますが、Amazonギフト券などeギフトへの交換なら手数料無料というビジネスモデルです。

米国のスーパーにあるコインスター端末(筆者撮影)
米国のスーパーにあるコインスター端末(筆者撮影)

日本版のコインスターは、手数料を差し引いた上で買い物券と交換できるサービスとして、一部のスーパーマーケットに導入されているようです。銀行が取り扱い手数料を引き上げる一方、新たなビジネスの可能性が広がるのは面白い現象といえるでしょう。

日本版コインスター。その店舗で使える買い物と交換できる(筆者撮影)
日本版コインスター。その店舗で使える買い物と交換できる(筆者撮影)

1円玉、5円玉は本当に必要?

どんどん厄介者扱いされる小額貨幣ですが、本質的な解決策として「廃止する」という議論もあります。オランダやベルギーなど欧州の一部の国、カナダ、シンガポールなどでは、1円玉に相当する1セント硬貨が廃止されているようです。

こちらはオランダで買い物したときの例ですが、お会計の22.24ユーロに対して筆者が出したのは25ユーロです。引き算するとお釣りは2.76ユーロになるはずですが、端数処理(ラウンディング)によって2.75ユーロに丸められました。

オランダで買い物したときの例。現金のお釣りは丸められる(筆者撮影)
オランダで買い物したときの例。現金のお釣りは丸められる(筆者撮影)

お釣りの金額によって1〜2セント損をする場合と、逆に1〜2セント得をする場合があり、長期的にはプラスマイナスがほぼゼロになります。また数字を丸めるのは現金の場合のみで、キャッシュレス決済では1セント単位で計算されます。

欧州の中にもドイツのように現金を重視する国もあり、温度差は感じられます。しかしキャッシュレス化によって硬貨の重要性が下がるのは先進国に共通した傾向とみられ、日本でもそろそろ小額硬貨の廃止に向けた議論を進めてもいいのではないかと考えています。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

山口健太の最近の記事