オートバイのあれこれ『色とりどりの、ヤマハ製エンジン②』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今朝は『色とりどりの、ヤマハ製エンジン②』をテーマにお話ししようと思います。
ハーレーダビッドソンは空冷Vツイン(V型2気筒)、BMWであればボクサーツイン(水平対向2気筒)、ドゥカティならLツイン(L型2気筒)というように、外国の二輪メーカーはエンジン形式にこだわりを持つ傾向が強い一方、日本の二輪メーカーは発展途上の頃から現在に至るまで、多種多様なエンジンを手掛けてきました。
ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキ…どのメーカーにも「名機」と呼ばれる秀逸なエンジンが複数あるわけですが、今回はその歴史において特にバラエティに富むエンジン作りをしてきたヤマハ製エンジンをいくつか見てみましょう。
◆空冷並列3気筒エンジン
その認知度こそさほど高くないものの、実は70年代にヤマハは4ストロークの3気筒エンジンを作っていたことがあります。
1976年(昭和51年)登場のモデル『GX750』には、空冷4ストロークDOHC2バルブの並列3気筒エンジンが搭載されていました。
当時世界中で売れに売れていたホンダ『CB』シリーズやカワサキ『Z』シリーズへ対抗するために開発されたパワーユニットで、最高出力は66psと、他社の4気筒エンジンにも迫るスペックを持っていました。
ホンダやカワサキが4気筒を選ぶなかでヤマハが3気筒を作ったのは、“車体をスリムにできる”ということと、“独自性をアピールできる”という狙いからでした。
結論から言うと、GX750に3気筒を載せたことは“ヤマハ車らしさ”をアピールするという観点では上手くいったと言っていいでしょう。
4気筒より小さい3気筒エンジンは車体の軽量コンパクト化に貢献し、またそれによって軽快な“ヤマハハンドリング”を獲得。
3気筒エンジン自体のフィーリングも、2気筒的な低中速トルクと4気筒的なスムーズさを兼ね備えた独特のものとなっていました。
しかし一方、商売の面では当たらなかったと言わざるを得ません。
当時はやはり「4気筒こそ至高」「ハイスペックこそ正義」の時代。
4気筒ブームのなかであえて3気筒のGXを選ぶ人は少なく、CBやZの人気ぶりを凌駕することは叶いませんでした。
◆270度クランクのパラツインエンジン
近年、ジワジワと採用例の増えている270度クランクのパラツイン(並列2気筒)エンジンですが、実はこのフォーマットを市販車に初めて持ち込んだのがヤマハでした。
1995年(平成7年)に発売された『TRX850』に、270度クランクが内蔵された水冷4ストロークDOHC5バルブの並列2気筒エンジンが投入されたのです。
270度クランクに関しての詳しい説明は以下の参考リンクから確認していただくことにして、ヤマハはこのクランク角から得られるトラクション(駆動力)性能の良さにいち早く気づき、TRXへ落とし込んだのでした。
並列2気筒自体はありふれた形式ですが、クランク角が270度というのが当時としては斬新だったと言えるでしょう。
ちなみにTRX850は既に生産終了となっていますが、270度クランクのパラツインエンジンは現在も生き残っており、現行モデルの『MT-07』に採用されています。