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「森三中」大島の妊娠ニュースから垣間見える“妊活”の本音

山田美保子放送作家・コラムニスト・マーケティングアドバイザー

流行りの「妊活」は、子供を授かるために、知識を身につけたり、体調管理をしたり、人生設計を考えたりすることで、ジャーナリストで大学講師の白河桃子さんによって提唱された概念である。

だが、「妊活」という言葉を世に広めたのは、やはり森三中の大島美幸だろう。

昨年1月、妊活のため、芸能活動を休業すると発表した大島。当時大島は、森三中として身体を張った仕事が多いことと、年齢的にも限りがあるということで「決断した」と、その胸中を語っていた。

その大島が、この度、妊娠6ヶ月であることを発表。「タイミング法」を経ての人工授精で授かったことも明かした。

深刻な経済的理由

「ゴールのないマラソン」とも言われる不妊治療でいえば、ごく初期での成功と言えよう。休養や栄養のバランスをとっただけでなく、妊娠の妨げになると言われる子宮筋腫の除去手術に踏み切ったことも功を奏したようだ。 

が、もしそのまま妊娠しなかったら、担当医からは体外受精を薦められることとなる。排卵を誘発するための注射を毎日病院に打ちに行ったり、全身麻酔をして受精卵を体内に戻したりと、負担がいっきに増え、1回の代金も約40万円とヒトケタ増えるのである。

実は筆者は10年にわたる不妊治療の経験がある。その間、多くの“不妊友達”に取材をしたが、彼女たちの大半は、経済的な理由で治療の継続を断念する。

夫婦間のズレも

また、妊娠・出産について十分に話し合っている夫婦も決して多いとは言えず、妻だけが頑張っているケース、逆に夫が熱心なケースもあり、足並みが揃わず悩んでいる女性も数多くいた。なかには、姑に付き添われて病院を訪れる女性もいて、そのプレッシャーたるや、傍から見ても気の毒だった。

最近は男性不妊も増えているのだが、夫に懇願しても、検査や治療を拒まれるというケースもあったし、そんな夫にしびれをきらし、離婚をして、新たなパートナーと共に不妊治療を始めた知人もいる。

経済的にはもちろん、精神的にも追い詰められ、そうこうしているうち、いくら誘発剤を使っても、採れる卵の数や質が低下し、治療終了の決断をするのである。私もその一人だった。

芸能人のニュースに…

そうしたなか、芸能人の高齢出産や、不妊治療の末の妊娠・出産のニュースを婦人科に通う女性たちはどう聞くのか。

まずは、「私だって、こんなに頑張っているのに、どうして?」という焦りの声である。

次は、「いいわよねぇ、芸能人はお金があって」という羨望の声。

そして、「私は仕事をしながら通院しているの。仕事を休んで治療していた人は、妊娠できて当たり前よね」という諦めの声である。

なので、よくワイドショーで言われる「悩んでいる方たちには、きっと励みになるでしょうね」というコメントは大きくズレている、と私は言いたい。

今回、鈴木おさむ・大島美幸夫妻が挑戦した「妊活」は誰にでもできることではない。いや、多くの夫婦にとっては不可能だろう。それを鈴木さん、大島さんもわかっていたからこそ、発表コメントには浮かれた部分が一切なく、同じ悩みを持つ夫婦に対し、上から目線で何か言うでもなかったのだと思う。

しかし、経済的に恵まれ、仕事を休養しても戻る場所がある鈴木夫妻であっても、悩み、傷つき、夫婦で話し合い、協力し合って妊娠にこぎつけたのは厳然たる事実。それが多くの人に伝わったから、今回は、「励みになるでしょうね」という、ある意味、軽々しいコメントが誰からも聞かれなかったのだろう。

サポート態勢の充実を

「妊活」という言葉は流行語になったが、それをバックアップしてくれる人やシステムは、まだそうは整っていない。妊娠を望む女性が焦ったり諦めたりしないで済むサポートの充実は急務だ。

放送作家・コラムニスト・マーケティングアドバイザー

1957年、東京生まれ。初等部から16年間、青山学院に学ぶ。青山学院大学文学部日本文学科卒業後、TBSラジオ954キャスタードライバー、リポーターを経て、放送作家・コラムニストになる。日本テレビ系「踊る!さんま御殿!!」、フジテレビ系「ノンストップ!」などの構成のほか、「女性セブン」「サンデー毎日」「デイリースポーツ」「日経MJ」「sippo」「25ans」などでコラムを連載。「ドデスカ+(プラス)ドデプラ」(名古屋テレビ)などに、コメンテーターとしてレギュラー出演している。

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