「成果型労働」「成果で評価する」という誤報が止まらない
労働組合の連合が、残業代ゼロ法案に賛成に転じた?!という報道から、意外なタイミングで再び脚光を浴びている残業代ゼロ法案ですが、その法案の報じ方が、やっぱりちょっとひどいので、改めて解説しておきます。(※連合の件については別の記事で書くので、本稿では触れません)
ちなみに2年ほど前にも同じこと言いました。→【法案版】「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~「成果に応じた新たな賃金制度」との誤報も列挙!
報道を見てみよう
まず、NHK
トップバッターのNHKは「働いた時間ではなく成果で評価する」と報じていますが、この法案にそのような制度は全く一切入っていません。
書いていない点については、全文チェックした記事をご参照ください。→【法案版】「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~「成果に応じた新たな賃金制度」との誤報も列挙!
次、毎日新聞
毎日新聞は、後退しました。
「成果型労働」と表現すること自体、絶対、法案を読んでないだろ!とツッコミたくなります。
2年前は良かったんですが、一体何があったのでしょうか・・・。
優秀な記者が異動してしまったのでしょうか・・。
事情は分かりませんが、とても残念です。
日本経済新聞は、
そして、読売新聞も、
日経と読売の「脱時間給」コンビは健在ですね。
他の報道機関は絶対に使わないこの文言を使い続けています。
ちなみに、「脱時間給」というのは、残業した場合に残業代を払わないという意味での「脱時間給」です。
なぜなら、現行法でも、定時より早く帰った場合に給料を満額出すことは何の規制もありませんので、やろうと思えば実現できますからね。
その意味で、まるでこの法案が通れば早く帰っても給料が満額もらえる制度が導入されるかのような印象を与える言葉ですね。
なお、字数の関係か、2年前にはついていた枕詞「成果に対して賃金を払う」が抜けています。
産経新聞は、
成果型賃金が導入されないことは先ほど指摘しました。
「成果型賃金にする」と断定しているのが、痛々しい気がします。
法案のどこに書いてあるのでしょうか?
産経新聞のこの記事を書いた記者は何を見てこのように書いたのか、とても不思議です。
こうした報道に対し、ちゃんと報道する報道機関も2年前に比べれば多くなりました。
朝日新聞
東京新聞
朝日と東京新聞は労働時間規制から外す制度である、という点、しっかり書いていますね。
サンケイビズ
産経新聞はああなのに、サンケイビズは正確に書いているところが、謎なのですが、とにかくサンケイビズはちゃんと書いています。
日本テレビ
日本テレビはかなり正確です。裁量労働制にも触れているところがいいですね。
岩手日報(たぶん、共同通信?)
これも正確です。
2年前に比べるとちゃんと報道しているところは増えた印象です。
ちなみに、日本労働弁護団はエグゼンプションを「成果に応じた賃金制度」と喧伝することに抗議する声明を出して、報道のあり方を批判しています。
こうした指摘は他にもあります。
・「残業代ゼロ法」を「時間では無く成果に応じて賃金を支払う制度」と報じる罪深さ
本法案をどう表現するか、メディアは頭を悩ませているのかもしれません。
しかし、本法案に含まれていないことを含まれているかのように報じるのは、さすがに問題です。
こうした報道は誤報といってもいいのですが、何度指摘しても、一部メディアの誤報は止まりません。
この法案の核心は「定額働かせ放題」にある
私が代表を務めるブラック企業被害対策弁護団では、この法案を定額働かせ放題法案と呼んでいます。
この法案の危険性は次の動画でまとめてありますので、お時間のある方は是非ご覧ください。