コロナ感染に関する「速報」が生む混乱、メディアは記事に追記や訂正を
日本国内で新型コロナウイルス感染が拡大する中、メディアの「速報」が混乱を生む要因となっています。状況が流動的なため、マスメディアの報道も更新が続いていますが、ソーシャルメディアで古い記事がシェアされてしまい、人々の認識がズレてしまうのです。正確な情報の流通のためには、記事を配信しっぱなしにするのではなく、追記や訂正といった更新履歴を記載することが重要です。
ソーシャルメディアにより、結果的に「誤報」となる
Facebookを見ていたところ、何人かの友人が上段の共同通信の記事をシェアしていました。しかし、たまたま、下段の記事を見ていたので、シェアしているのは古い記事であることをお知らせしたのでした。
- イスラエル、日韓からの入国拒否(共同通信)
- イスラエル、日韓からの入国拒否を撤回(共同通信)
配信の日時を見てもらえば分かりますが、撤回記事は約1時間後の配信です。記事を配信したときは正しくても、記事がソーシャルメディアでシェアされて、人々に拡散している間に、結果的に「誤報」となることがあります。
- イスラエル、日韓からの入国拒否(共同通信:本記事はイスラエルの動向を追う趣旨ではありませんが、念の為2月23日21時45分に追記しました)
記事単位の拡散で、ニュースが断片化
状況が流動的なため、マスメディアの報道も更新が続くのは仕方がないところがあります。特に、共同通信のような通信社は、常に新しい情報を新聞社やテレビ局に配信する必要があるためです。しかしながら、共同通信も記事を配信するようになり、ソーシャルメディアでもシェアされるようになっています。
共同通信の「速報」は、ソーシャルメディアを騒がせた神戸大学の岩田健太郎教授のユーチューブ動画についても混乱を生む要因となっていました。確かに報じたのは事実ですが、「政府の陰謀により削除されたのではないか」などとうわさが飛び交うことになりました。ソーシャルメディアの時代になり、記事単位で拡散するようになり、ニュースが断片化しているのです。
- クルーズ船告発の岩田教授が動画削除(共同通信)
共同通信だけでなく、他のメディアもこのような事例はあるでしょうし、速報を辞めろと言うつもりはありませんが(もう少し、きちんと取材してから配信したほうがいいと思うことはある)、メディアは正確な情報の流通にも目を配るべきです。まず、追記や更新履歴を記載することです。せめて、最新の記事を関連記事として表示するなどの対応をすべきです。
追記や訂正は、読者を守ることにもつながる
日本経済新聞が報じたヤフーの対応では、追記が行われています。私自身、記事を見て驚き、「仕事で訪れるセミナーや、休日のコンサートなどのイベントも対象だ。期間は未定としている。」という部分をピックアップして下記のようなツイートをしました。その後、この部分は記事から消えてしまい、同様のツイートをした人が「間違っているのではないか」という指摘を受けていました。
記事には以下のように追記が記載されました。こうして対応してくれると、ヤフーも間違った情報拡散を抑止できますし、シェアした人も助かります。
いまやメディアにとってソーシャルメディアでの記事拡散は不可欠です。追記や訂正は、記事を広げてくれる仲間である読者を守ることにもつながります。
みんなの力で正確な情報の流通を
メディアは正確な情報の流通に目を配るべきですと言いましたが、ユーザー側も、ソーシャルメディアでシェアする前に最新記事を検索したり、記事に記載されているデータを確認したり、することが大切です。
FacebookやTwitterといったソーシャルメディアを運営する企業は、海外で行っているような、フェイクニュース対策として間違った情報をシェアすると、ファクトチェック結果を出すなどの取り組みを導入すべきでしょう。誰もが発信者の時代は、みんなの力で、正確な情報の流通を実現する必要があります。