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外国人打者が得点に寄与した割合は?助っ人依存の球団は中日と楽天

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

野球の華、ホームラン。

打った瞬間それと分かる豪快な一発には日本人離れしたパワーが必要だ。ケガや不調により純国産打線を組むケースもあるがほとんどの球団で4番は外国人選手が担っている。どれだけチームに貢献したかは打率、本塁打数、打点を並べただけでは人によって意見の分かれるところだが、得点に注目し「どれだけの得点を生み出したか」を示すRC(Runs Created)という共通の物差しを使えば客観的に比べることが可能だ。RCは安打や四球以外にも盗塁や犠打による貢献、盗塁刺や三振、併殺打によるマイナスも計算式に含まれており総合的な得点創出能力を示す。例えば今や球界を代表する打者となったヤクルト・山田のRCは138.74点。これは山田1人で140点近くの得点を生み出したことを示している。チームRCの内、外国人選手が占める割合はどれぐらいかを比べるとその影響力が見えてくる。

ヤクルト

チームRCは595.08点(実際の総得点は574点。チーム得点とチームRCを比べるとRCの方が高くなる。これは他球団も同じ)。外国人選手のRCは

デニング 23.52

ミレッジ 4.84

バレンティン 4.62

本来上位打線を任せるはずのミレッジ、バレンティンをケガで欠き、緊急補強でデニングを獲得したが、2人の穴を埋めたとは言い難い。チームRCの内、3人の占める割合はわずか5.5%。もし今季のヤクルト打線で固定出来なかった1番・センターにミレッジ、不動の4番に万全な状態のバレンティンがいたら恐ろしいことになっていただろう。主軸打者の離脱は計算外に違いないが、山田を筆頭にそれを痛手に感じさせない日本人選手の活躍が大きかった。

巨人

チームRCは532.88点。外国人選手のRCは

アンダーソン 30.46

セペダ -0.32

フランシスコ -0.04

カステヤーノ 0.05

4人のRCの合計は30.15点。これはチームRCの5.7%に過ぎない。リーグ平均の打者と比べてどれだけ多くの得点を生み出したかを示すRCAAで見ると

アンダーソン 4.01

セペダ -3.17

フランシスコ -1.87

カステヤーノ -2.19

アンダーソン以外はマイナスの数字が並ぶ。合計すると-3.22となりもちろんプラスとはならない。外国人選手のRCが占める割合が非常に低いこと、平均的な打者よりもマイナス評価であることはヤクルトと変わらないが総得点では85点もの大差をつけられている。日本人選手、外国人選手共に奮起が必要だ。

阪神

チームRCは520.52。外国人選手のRCは

ゴメス 79.92

マートン 59.13

ペレス -0.62

ほぼシーズン通してクリーンアップを任せたゴメス、マートンの存在は大きく2人で約140点の得点を生み出した。ペレスのマイナス分を入れても外国人選手がチームRCの26.6%を占める計算になる。ただしRCAAで見るとゴメスは18.78と優秀な数字を残しているが実はマートンは-0.18と平均以下という評価。守備に多少目をつぶってでも使う選手としてはやはり寂しい。3試合10打席のペレスも-1.64とマイナスになっているが2軍で絶好調だった春先に昇格していれば違う結果になっていたかも。

広島

チームRCは551.16点。外国人選手のRCは

エルドレッド 38.26

シアーホルツ 30.61

ロサリオ 14.27

グスマン 14.45

チームRCの内、外国人選手の占める割合は17.7%。4人の総打席数はチーム打席数の14.9%だから貢献はしているけれど助っ人外国人選手としては少し寂しい。実際にRCAAを見ても

エルドレッド 7.74

シアーホルツ 5.38

ロサリオ 0.43

グスマン 2.65

と一桁の数字が並ぶ。昨季のエルドレッドのRCは79.72、RCAAは21.99だった。今季の総得点は昨季より143点減少している。原因はいくつもあるだろうが不動の4番の存在はやはり大きい。

中日

チームRCは532.62点。外国人選手のRCは

ルナ 75.66

エルナンデス 60.85

ナニータ 20.77

外国人選手が占める割合は29.5%でこれは12球団トップ。RCAAは

ルナ 18.28

エルナンデス 5.11

ナニータ 3.57

外国人選手には長打力を期待されることが多いがルナはアベレージタイプ。エルナンデスはほとんどの外国人選手が一塁か三塁、または外野のポジションに就く中、強肩が自慢で主に遊撃を守り二塁や三塁もこなす。甲子園での阪神戦では、WBCでも三塁コーチを務めた判断力抜群の高代コーチが本塁突入を指示するもエルナンデスが中継に入ったプレーで刺すというシーンが少なくとも2つあった。二遊間を守れる強肩内野手にアベレージタイプと他球団とは違う路線の助っ人を獲得している。

DeNA

チームRCは546.27点。外国人選手のRCは

ロペス 84.76

バルディリス 61.19

2人でチーム全体の26.7%を生み出した。RCAAは

ロペス 27.28

バルディリス 7.78

この2人の他にも規定打席に到達した筒香は44.79、梶谷は19.06と好成績を残しているが主力クラスの選手でプラスの数値を残しているのは荒波ぐらい。セリーグ球団のチームRCの平均は546.42だからDeNAとは0.15しか変わらない。多くのポジションでマイナスを抱える中、4人が打線を引っ張った。ロペスのRCAA27.28はセリーグ外国人選手のトップの数字だった。

ソフトバンク

チームRCは680.05点。外国人選手のRCは

李大浩 93.58

カニザレス 5.53

打率、本塁打、得点、出塁率、長打率など様々な部門で12球団トップの数字を収める巨大戦力にあって李大浩のRCは柳田、松田に次ぐチーム3位。パリーグ5位だからリーグのトップ5の内3つをソフトバンク勢が占めている。李大浩のRCAAは29.24でこれは外国人選手としては12球団トップ。柳田のRC142.63があまりにも大きいため、これだけ活躍してカニザレスのRCと合計してもチームRCの14.8%にとどまるが貢献度は高い。

日本ハム

チームRCは624.69点。外国人選手のRCは

レアード 70.01

ハーミッダ 16.59

143試合に出場したレアードは打率.231ながら本塁打は34本。打率も出塁率も高くない反面、安打の約30%が本塁打という長打力を示した。札幌ドームを本拠地にしながらリーグ3位の本塁打数は価値があるが、RCAAは8.97で意外と高くない。バリバリの4番としてなら物足りないが一発のある下位打線を打つ選手としてなら及第点か。チームRCの内、外国人選手の占める割合は13.9%と少なめ。チームの特徴としてはRCと実際の得点が非常に近いこと。チームRCが624.69でチーム総得点は615点、比率98.45%は12球団で最も高く、無駄の少ない効率的な攻撃が出来たと言えるだろう。

ロッテ

チームRCは569.01点。外国人選手のRCは

クルーズ 57.78

デスパイネ 57.02

ハフマン 0.11

チームRCに占める外国人選手の割合は20.2%。RCAAは

クルーズ -0.83

デスパイネ 11.95

ハフマン -1.32

主に4~6番のポイントゲッターを任されたクルーズだがその得点創出能力はリーグ平均とほぼ同じ。デスパイネも期待された成績を残したとは言い難い。ロッテも日本ハムと同じでチームRCとチーム総得点が非常に近く、比率は日本ハムの98.45とほぼ同じ98.43%。やりくりの上手さはトップクラスだが、パリーグ上位4球団の総得点はソフトバンク651点、日本ハム615点、ロッテ561点、西武631点。外国人選手の打棒爆発が欲しいところだった。

西武

チームRCは661.77点。外国人選手のRCは

メヒア 65.72

セラテリ 5.66

メヒアは一見活躍しているように見えるがRCAAは7.88でそれほど高くなくセラテリは-2.49。チームRCに占める外国人選手の割合も10.8%と低めだ。

ソフトバンク 打率.267 651得点 141本塁打

西武 打率.263 631得点 136本塁打

分厚い戦力層を誇る王者に肉薄する打線の力があるだけにメヒアがRC82.65、RCAA32.38だった昨季並みの打力を発揮していればペナントレースで一波乱起こせていたかもしれない。

オリックス

チームRCは553.22点。外国人選手のRCは

カラバイヨ 31.89

ヘルマン 26.56

ブランコ 17.81

大型補強を敢行して臨んだ今シーズンだったがチーム総得点はリーグ平均より54点も低く、外国人選手のRCAAも

カラバイヨ 4.67

ヘルマン -0.43

ブランコ -3.01

と軒並み低調。チームRCに占める外国人選手の割合は13.9%で糸井や中島ら中々成績の上がらない主力選手の不振をカバー出来なかった。

楽天

チームRCは513.99点。外国人選手のRCは

ペーニャ 75.43

ウィーラー 42.43

サンチェス 26.50

ムリーロ 5.13

チームRCに占める外国人選手の割合は29.1%。ただしRCAAは

ペーニャ 21.22

ウィーラー 7.95

サンチェス 0.94

ムリーロ 1.05

他球団は外国人打者を起用するのは2人か3人がほとんどだが4人起用しているところと、ペーニャを除けば大きく貢献しているわけでもないのに外国人選手のRCが大部分を占めるというところに今季の苦しい戦いぶりがうかがえる。得点はリーグ平均より110点も少なく本塁打85本もロッテと並んでリーグ最少。チームRCとチーム総得点の比率は90.1%でこれもリーグ最少。最下位脱出へ課題は多い。(本文中に間違いがあったので訂正しておきました。すいませんでした。指摘していただいた方ありがとうございます)

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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