ARゴーグルでスポーツ生観戦にテレビ中継の体験を提供するアップルの特許について
「アップル、”Vision Pro”などでスポーツ観戦を拡張する特許を取得」という記事を読みました。言うまでもなく、テレビやネットにおけるスポーツの中継放送では様々な情報(得点はもちろんのこと、選手の履歴情報やオフサイドラインなどのガイドなど)を試合の映像に重ね合わせて表示することで、試合をさらに楽しめるようにする体験を提供することが当たり前になっています。
Vision Proなどのシースルー型のARゴーグルを使えば、同じような体験を観客席で生で試合を観戦している観客にも提供できます。今現在、スポーツイベントの観客席でARゴーグルを装着して試合を観ている人がいたら相当不気味でしょうが、将来的にゴーグルが大幅に小型軽量化されれば、そのような感覚も変わっていくかもしれません。
そして、アップルの特許はまさにそのような体験を提供するためのものです。冒頭引用記事には特許番号が記載されていませんが、US11688168号です。発明の名称は”Method and device for visual augmentation of sporting events”(スポーツイベントの視覚的拡張の方法とデバイス)、出願日は2021年7月19日、優先日(実効出願日)は2020年8月3日、登録日は2023年6月27日です。米国外での出願は確認できていません。また、米国において分割出願が審査係属中になっています。
ここで、単に、得点の情報や選手のプロフィールを試合の映像と重ね合わせて表示するだけでは、新規性・進歩性の主張は困難でしょう。アップルもさすがにそのような基本的アイデアでの特許化は断念し、もう少し具体的なユースケースで限定した権利化になっています。
なお、デバイスは特にARゴーグルやHMDと限定されているわけではないので、普通のタブレットであっても、将来的に出てくる新たなデバイス(たとえば、網膜投影ディスプレイ等)でもあっても権利範囲に包含されます。
クレーム1の内容は以下のとおりです。
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