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ソフトバンク「株主優待」でポイント付与へ その狙いとは?

山口健太ITジャーナリスト
ソフトバンクの株価(PayPay証券のアプリより、筆者撮影)

4月25日、ソフトバンクは株主優待として新たに「PayPayポイント」を付与することを発表しました。

最近の経済圏争いにおいて株主優待を活用する動きが続いている中で、ソフトバンクの狙いはどこにあるのか見ていきましょう。

2万円弱の投資で1000ポイントもらえる

ソフトバンクが新たに設けた株主優待は、1年以上かつ100株以上を保有する株主を対象に、PayPayポイントを1000ポイント分付与するというものです。

また、2024年9月30日を基準日として株式を10分割することも同時に発表しています。ソフトバンク広報に確認したところ、株主優待の対象となる100株の条件は「分割後」の数字とのことです。

この分割を考慮すると、直近の株価で10株分に相当する1万8785円の投資で1000ポイントがもらえる計算になります。株主優待の利回りとしては十分におトクな印象を受けます。

なお、株主優待をもらうには株式を1年間保有する必要があり、初回は2025年3月31日からの1年間とのことから、PayPayポイントがもらえるのは早くても2026年4月以降になるようです。

そのため、この発表を見て関心を持った人は、2025年3月31日までにソフトバンクの株式を買うべきかどうか、検討するとよさそうです。

注意点としては、株価が下落した場合には配当や株主優待を考慮しても損をする可能性があります。どのような投資にもいえることですが、この点は自己責任といえます。

株式の分割や株主優待を設ける狙いとしては、投資家層の拡大や、サービス利用を通じてグループ事業への理解を深めてもらうことをソフトバンクは挙げています。

日本株は最低投資金額が大きい銘柄があり、PayPay証券のように単元未満株で取引できるサービスが人気を博していますが、株式が分割されることでどの証券会社を使っている人でも買いやすくなります。

また株主優待については、100株以上であれば、どれだけ多くの株式を保有していたとしても付与されるのは1000ポイントです。ある程度の資産を築いている人にとっては取るに足らない特典といえるでしょう。

一方、最近ではポイ活やポイント投資から資産形成を始める人が増えていることから、これから投資を始める人や投資に回せるお金が限られる人にとっては、銘柄選びにおいて無視できない要素になるかもしれません。

ソフトバンクの株主数は2024年3月末時点で85万人超とのことから、1000ポイントの付与により、単純計算で8億5000万ポイントが各自のPayPayアカウントに追加されることになります。

今後はさらに個人株主の増加が見込まれることで、コスト増につながる懸念はあるものの、付与されたポイントがPayPayの加盟店などで使われることで経済圏にはプラスの効果をもたらしそうです。

経済圏争いで株主優待の活用が進む

経済圏争いにおいて株主優待を活用する動きとしては、日本電信電話(NTT)が2019年から株主に条件付きでdポイントを進呈してきました。

また、2023年に1株を25株に分割したことで、100株を保有するための最低投資金額は直近の株価で1万6820円に下がり、買いやすくなっています。

これに対してKDDIは、2025年度から株主優待制度を変更し、Pontaポイントなどを選べる特典を提供します。ただ、最低投資金額として直近の株価で43万8000円が必要であることから、分割を期待する声が高まる可能性があります。

一方、ポイント経済圏で先行する楽天グループは、株主優待を楽天モバイルのSIMカードに変更しています。各社がこれから強化したい分野の違いが表れているのは興味深い点といえます。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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