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墜落のウクライナ旅客機はイランが撃墜か。米CBSニュースやNYタイムズ紙が報道。イランは強く否定

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
乗客乗員176人全員が死亡したウクライナ旅客機の墜落はイランによる撃墜だったのか(写真:ロイター/アフロ)

イランの首都テヘランの空港近くで1月8日に墜落し、乗客乗員の計176人全員が死亡したウクライナ国際航空の旅客機は、イランによってあやまって撃墜された可能性がある、と米CBSニュースやニューヨークタイムズ紙が9日に報じた。

CBSニュースは、アメリカの当局者がイランによるウクライナ機の撃墜について確信を得ていると報じた。ニューヨークタイムズ紙も、イランがあやまってウクライナ機を撃墜したと米当局者が強い確信を持っていると報道した

CBSによると、ウクライナの旅客機が爆発する寸前に、イランの地対空ミサイル2発が発射されたのをアメリカの軍事衛星が確認したという。

CBSの担当記者はツイッターで、「アメリカ当局者はウクライナ国際航空752便がイランによって撃墜されたことに確信を持っている。アメリカの情報当局は、起動中のレーダーの信号をキャッチした。そして、おそらく(イラン軍の)SA-15地対空ミサイルである2発の発射時の赤外線を(アメリカの)衛星が探知した。その後すぐに、爆発による別の赤外線探知が続いた」と述べている。

CBSによると、イランの航空当局は「アメリカ当局の結論は全く真実ではない」と述べたという。イラン革命防衛隊に関連するウェブサイトも「アメリカ情報当局の陰謀」と指摘し、イランによるウクライナ機撃墜を否定しているという。

一方、トランプ大統領は9日午前、ホワイトハウスでこのウクライナ機墜落について問われ、「私は疑いを持ってきた」「それは悲劇的なことだ。しかし、相手側の誰かがあやまちを犯したかもしれない」などと述べ、イランによる撃墜を示唆している。

カナダのトルドー首相も同日、同盟国や自国のインテリジェンス(機密情報)に基づき、ウクライナ機がイランによって撃墜されたとの見方を示した。

(関連記事:カナダのトルドー首相「イランがウクライナ機を撃墜」 - Y!ニュース

墜落したのはボーイングの小型旅客機「737-800」型機。イランのメディアは技術的な問題が原因と伝えていた。このため、イランによるアメリカへの報復攻撃とは無関係との見方が広がっていた。ウクライナのプリスタイコ外相のツイッターでの発表によると、国別の死者数の内訳は、イラン人82人、カナダ人63人、ウクライナ人11人、スウェーデン人10人、アフガニスタン人4人、ドイツ人3人、英国人3人となっている。日本人はいなかった。

BBCによると、イラン当局は9日、このウクライナ機から回収したブラックボックスをアメリカ政府やボーイングに渡す予定はないと発表した。

米ミドルベリー国際大学院モントレー校不拡散研究センターのジェフリー・ルイス博士はツイッターで「これ(=撃墜)は驚くべきことではないだろう。軍隊が攻撃に備えて警戒している時に、まさにこの種のミスが起きるのだ」と指摘している。

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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