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新型コロナでよく聞く「米CDC」てどんな組織? 新たに発表された「6つの症状」とは

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
今年3月6日、ジョージア州アトランタにあるCDC本部を訪問したトランプ大統領。(写真:ロイター/アフロ)

コロナの症状に6項目追加

CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は4月26日、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に感染している可能性の高い症状について、新たに6つの項目を発表した。

感染が疑われる場合の症状について、CDCではこれまで1.発熱 2.咳 3.息切れといった点を挙げていたが、次の症状も「兆候」として新たに追加した。

  • 悪寒
  • 悪寒による度重なる震え
  • 筋肉の痛み
  • 頭痛
  • 喉の痛み
  • 味覚や嗅覚がなくなる

またこれまでの「息切れ」については「息切れまたは呼吸困難」と変更された。

頭痛や味覚障害などについてはこれまでも言われてきたことだが、今回CDCにより「正式な症状」として発表された。これら9つの症状は通常、ウイルスに感染後2〜14日で現れるということが研究でわかっている。

ところでCDCって何?

3月末にアメリカが新型コロナの世界最多の震源地となってことで、さらに耳にすることも多くなった「CDC」。これは、Centers for Disease Control and Prevention(疾病予防管理センター)の略だ。

アメリカ保健福祉省に属する機関で、ジョージア州アトランタ市に本部がある。命を救い人々を守ることを使命に、24時間の無休体制で活動している。

もともと第二次世界大戦下で猛威を振るっていたマラリアの感染対策のために、1946年7月に伝染病センター(Communicable Disease Center)として設立された。以降70年以上にわたり、アメリカはもとより世界中の感染症(マラリア、結核、HIV/AIDS、エボラ出血熱、ジカ熱、MERS & SARSなど)の対処、予防のための指導、難民の健康支援を行ってきた。

アメリカだけの組織かと思いきや、実は世界50ヵ国以上に拠点を持ち、スタッフの数は1万人以上の巨大組織だ。(中国や韓国にはCDCがあるが、日本にはない)

青色がCDCが拠点を置く国。出典:CDC
青色がCDCが拠点を置く国。出典:CDC

半世紀以上に及ぶ数々の実績に基づき、ことさら本拠地アメリカでは絶大な信頼が寄せられている。このコロナ禍においても、連邦政府はCDCの公衆衛生ガイドラインに沿った健康基本方針をそのつどアップデートしながら国民に促している。

指針が方向転換した「マスク」について聞いてみた

世界は新型コロナによりこの2ヵ月ほどの間にさまざまなものの常識や価値観が一転し、ニューノーマル(新しい普通、常識)が誕生している。

マスク着用も然りだ。

マスクとは、アメリカではほんの先月まで「健康な人は不要」とさえ言われていたのだ。それまで「マスク姿=病気持ち」として敬遠される対象だった。

それが感染者数や死者数の増加と共に着用率も増えていき、ニューヨーク州では4月17日、公共の場で社会的距離が保てない場合、マスクやバンダナ含む顔のカバーが義務付けられるまでに至ったのだ。

27日のクオモ州知事の定例会見では、記者から改めてマスク着用についての突っ込んだ質問があった。

「マスク着用を1ヵ月前に法令化していれば被害を最少に抑えることができていたと言われている。そうしなかった責任は州にあると思うか?」との問いに対して、知事はこのように答えた。

「問題提起するだけなら簡単だ。回顧するのであれば、我々は中国でマスクを着けている映像をこれまで見てきて、インフル予防にも良いと誰もが知っていたのに、なぜ去年誰も着けなかったのか。なぜ人々は相変わらず握手をし続けていたのか、という話になる。CDCや専門家がマスクの効用を見直し始め、我が州はほかのどの州より積極的に着用を奨励し、法令化した。それについては良い判断だったと思う」

知事のこの言葉でも、改めてCDCが出てきた。

確かにCDCは新型コロナが大流行し始めた当初でも、「健康な人はマスク不要」と全国民に発表してきた当事者だ。

CDCのグローバル保健保護部門(DGHP)の部門長で、アメリカの医師免許も持つナンシー・ナイト博士(RADM Nancy Knight, MD)がウェビナー「COVID-19に対処するためのグローバルな協力」を4月24日に開いた。この場でさまざまな疑問に答えてくれたので、筆者はマスクについて質問をしてみた。

ナイト博士がCDCに入ったのは2006年。以来10年間アフリカに駐在しナイジェリア、南アフリカ、ケニアでHIVや結核部門ディレクターとして感染症対策に取り組んできた。2017年より現職。
ナイト博士がCDCに入ったのは2006年。以来10年間アフリカに駐在しナイジェリア、南アフリカ、ケニアでHIVや結核部門ディレクターとして感染症対策に取り組んできた。2017年より現職。

「医療用マスクではなく、あくまでも布製のマスクやフェイスプロテクションについてお話しします」とナイト博士。

「COVID-19の感染が拡大する中で、我々CDCが学んだことの中に、この感染症の特性について2つの非常に重要な事実があります。COVID-19が発生した当初、これらについては誰も知りませんでした。

まず1つ目は、COVID-19に感染していたとしても、発症前(症状が現れる前の)段階において、ウイルスが他人に感染しうるということです。

2つ目は、ウイルスに感染していても人によってはまったく無症状で、ずっと気づかない人もいるということです。そしてこのケースでも同様に、ウイルスが他人に感染しうるということです。

したがってマスクなど顔をカバーするものを着用することが重要とされるようになりました。

食料の買い出しに出かける場合など、コミュニティ内では協力し合い、お互いを保護することが大切です。なぜなら、自分は症状が出る前の段階なのか、無症状の段階なのかわからないためです。

つまりCDCの見解は「マスクとは他人を保護するのに役立つもの」ということになります。 これがアメリカで布マスクやフェイスカバーの着用が推奨された理由です。

ただし、布製マスクは医療用マスクやレスピレーター(防毒マスク)にとって代わるものではありません。したがって布マスクを着けていたとしても、他人からの感染を防ぐことはできません。 そのため医療現場において、医療従事者は適切な医療用マスクを着ける必要があります」

日本にはCDCの拠点がないが「ダイヤモンド・プリンセスの集団感染時、乗客を安全に帰国させるためCDCは専門家チームを派遣し日本当局と緊密に連携してきた」と博士。
日本にはCDCの拠点がないが「ダイヤモンド・プリンセスの集団感染時、乗客を安全に帰国させるためCDCは専門家チームを派遣し日本当局と緊密に連携してきた」と博士。

数字の後ろに人がいる

博士は最後に、このようなメッセージで締めた。

「世界中の人々が現在立ち向かっているCOVID-19は、これまでの前例がない公衆衛生上の脅威です。(取材日の時点で)213の国と地域で260万件を超える症例が報告され、18万人以上が亡くなりました。

これらのすべての数字の後ろに、人がいることを忘れることはできません。

どうぞ皆さん、1人ひとりが今できることをしましょう。それは手洗いをし、社会的距離を保ち、家にいて、健康と安全を保つということです」

(Interview and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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