ジンジャー・ワイルドハート、2018年4月にソロ来日。エモーションに酔え
ジンジャー・ワイルドハートが2018年4月、来日公演を行う。
1989年にワイルドハーツを結成、ロック最前線を突っ走ってきたジンジャーだが、近年もその勢いは衰えることを知らない。本国イギリスを中心に精力的にツアーを行っているのに加え、さまざまなバンド/プロジェクトで来日公演も行ってきた。最近では2015年11月、ワイルドハーツとヘイ!ヘロー!でのダブルヘッダー公演、2016年4月にはソロ・バンド、2017年1月にワイルドハーツ、そのまま2月上旬にソロ・アコースティック・ライヴ、同年10月にはミューテイションとしてのライヴも行われている。
今回の来日は2018年3月に発売された最新アルバム『ゴースト・イン・ザ・タングルウッド』に伴う東京2デイズ公演で、セカンド・ギタリストのジェイス・エドワーズを帯同した2人編成のライヴとなる。ウルフズベインの一員でもあるジェイスはジンジャーとは2005年に結成されたソニック・サーカスでも活動しており、気心の知れた仲間だ。
ジンジャー自らが“カントリー・アルバム”と呼ぶ『ゴースト・イン・ザ・タングルウッド』。彼がカントリー・テイストのあるオルタナティヴ・ロック・バンド、ジェイソン&ザ・スコーチャーズのファンであることはよく知られているし(ワイルドハーツの「29xザ・ペイン」歌詞でも言及されている)、アルバムではシンガー・ソングライター、スティーヴ・アールの「マイ・オールド・フレンド・ザ・ブルース」がカヴァーされている。
ただ、本作はジョーディー(イングランド北部出身)がアメリカのカントリーを模倣する試みではない。ジンジャー自身も「ウィリー・ネルソンよりもボビー・トンプソンに近い」と、ジョーディーのコメディアンを挙げて語っており、カントリーだけでなくトム・ウェイツのようなシンガー・ソングライター、リチャード・トンプソンのような英国フォーク・ミュージシャンも引き合いに出している。
さらに言えば本作はジャンルやスタイルを身にまとうのではなく、むしろジンジャーのありのままの姿を露わにしたアルバムだ。ヒネリの効いたユーモアやシニシズムを込めた歌詞で知られてきた彼だが、このアルバムではストレートに彼の心情が描かれている。
鬱の治療で入院した彼が患者たちと一種の連帯感を抱く「ザ・デイライト・ホテル」、他人に手を差し伸べることは未来の自分に“前払い”することだと歌う「ペイイング・イット・フォワード」、愛する人と一緒にいられない寂しさと切なさを描いた「マイナス・ユー」「ドント・セイ・グッドバイ」、親しい人を失って言葉を失う「ザ・ワーズ・アー・ゴナ・ハヴ・トゥ・ウェイト」など、その想いがダイレクトに、それでいて詩的に描写されているのが『ゴースト・イン・ザ・タングルウッド』だ。
今回の来日公演は、彼のエモーションに至近距離から触れることが出来る貴重なライヴとなるだろう。
それは必ずしも暖かく心地よい経験ばかりとは限らない。アルバムでは「ザ・リーパー」や日本盤ボーナス・トラック「イン・リヴァース」のような、どこまでも落ち込んでいく鬱の体験も歌われている。2017年2月に下北沢Rhapsodyで行われたソロ・アコースティック・ライヴは彼が「もう音楽なんて止めたい」とステージMCでぼやく、精神的にどん底の状況で行われたが、それに近いような、観客の胸がズキズキ痛むショーになる可能性もある。
ジンジャーがステージに上がる瞬間までどんなライヴになるか判らない、そんな緊張感がみなぎる公演だが、ひとついえるのは、決してファンを裏切らない、誠実なショーになることだ。
2018年5月にはワイルドハーツとしてリーフ、テラーヴィジョンと“ブリットロック・マスト・ビー・デストロイド”UKツアーを敢行。8月から9月にかけて同じラインアップでオーストラリアのツアーも行われる。そんな多忙なジンジャーゆえ、次に日本のステージでその勇姿を見ることが出来るのは少し先になるかも知れない。そんな意味でも見逃せないライヴだ。
『ゴースト・イン・ザ・タングルウッド』来日公演は、エモーションに酔う2デイズとなる。
【GINGER WILDHEART GHOST IN THE TANGLEWOOD TOKYO 2018】
4月5日(木) 池袋手刀
4月6日(金) 四谷アウトブレイク
開場19時/開演20時
ウェブサイト:Vinyl Junkie Web