大谷と本塁打王争いをする元巨人の問題児。メジャーで2度も戦力外通告を受けたガルシアが大ブレイク
過去2年間で2度も戦力外通告を受けたキューバ人選手が、今季、大ブレイクして大谷翔平とホームラン王争いを繰り広げている。
2016年には読売ジャイアンツでプレーしたホセ・アドリス・ガルシアがその選手だ。
熱心な巨人ファンでも、ガルシアが巨人で活躍した姿を思い出すのは不可能だ。
それもそのはず、『キューバの若手超有望株』として16年の開幕直後に巨人へ加入したガルシアは、一軍で4試合に出場しただけで、7打数無安打と一本もヒットを打つことができなかった。
2軍でも問題ばかり起こし、8月には契約を解除されている。当時23歳だったガルシアは、日本の食事が口に合わず、日本の文化にも適応できなかった。二軍の練習でも怠慢な態度が目立ち、問題児として早々に巨人から匙を投げられた。
日本からパリ経由でキューバに戻るはずだったガルシアだが、乗り換え地のパリでキューバ行きではなく、ドミニカ共和国行きの飛行機に乗って亡命。
2016年12月にメジャーリーグの海外アマチュア・フリーエージェント選手として公示されたガルシアに対して、多くのメジャー球団が興味を示した。ガルシアの才能を高く評価した球団の1つがレンジャースだったが、レンジャースは大谷がアメリカ挑戦した場合に備えて国際ボーナスプール額の確保に動き、ガルシアの獲得を見送った。
ガルシアはセントルイス・カージナルスとマイナー契約を結び、18年にメジャー初昇格。19年はメジャーでのプレー機会はなかったが、3Aで32本塁打、96打点を記録したが、そのオフにカージナルスからDFA(戦力外通告)を告げられてしまった。
2020年はトレードでレンジャースに移籍したが、メジャーでの出場は僅か3試合。今春のキャンプ中に2度目のDFAとなったが、引き取り手がなく、レンジャースとマイナー契約を結び直す。開幕後にケガ人が続出したことで、メジャーに再昇格すると、打線の主軸として大活躍をみせている。
15本塁打は大谷と並んでアメリカン・リーグ2位タイ。40打点は3位タイで、長打率.617は大谷に次ぐ3位にランクインしている。
5月21日(日本時間22日)のヒューストン・アストロズ戦では、延長10回にサヨナラ3点本塁打を放つと、翌22日(日本時間23日)には2本塁打を放ち、23日(日本時間24日)はまたしても延長10回にサヨナラ安打を放つ大活躍で、アストロズとの3連戦で3本塁打、8打点、サヨナラヒット2本とスウィープ勝ちの殊勲者となった。
今季開幕まではメジャーで通算安打が2本、ホームランを1本も打てなかったガルシアが大ブレイクできたのは、打席でのアプローチを変えたから。これまでは辛抱強さに欠け、スイングも大きかったが、スイングをコンパクトにして、悪球に手を出す癖も改善が見える。
2ヶ月前には戦力と見なされていなかったガルシアが、今ではチームで最も信頼できる打者として快音を響かせている。
5月25日のロサンゼルス・エンゼルス戦では、大谷が4回に15号本塁打を打つと、ガルシアも6回に15号を放って、大谷をピタリと追いかけている。
日本でも、メジャーでもどん底を体験した不死身の男が、ついに眠れる才能を開花させた。