藤井聡太竜王を追う次世代が昇級へ前進!ー第81期順位戦B級1組~C級2組は残り2戦ー
第81期名人戦・順位戦は、B級1組~C級2組の各クラスで残り2戦となっている(延期分除く)。
1月の対局で藤井聡太竜王(20)を追う次世代の若手棋士が星を伸ばし、昇級へ近づいた。
各クラスの途中経過と注目ポイントを解説していく。
なお、順位戦A級については24日に記事を掲載したので下記をご参照ください。
藤井聡太竜王、名人挑戦へ一歩前進。残留争いも熾烈に-第81期順位戦A級は佳境へ-
B級1組
注目の直接対決、中村(太)七段(34)ー澤田七段(31)戦は、勝てば昇級が決まる中村七段が終盤でリードを奪うも、決めきれずに逆転負けを喫した。
中村七段の首位は変わらないが、後続との差が縮まって混戦模様だ。
勝った澤田七段は3番手に浮上。中村七段より順位が1枚上なのも好条件で、十分にチャンスがある。
上位陣は中村七段以外、全員勝利した。
4敗勢は、順位の高くない近藤(誠)七段(26)は抜け番の関係で1勝多くあげており、山崎八段(41)は順位最上位、と他者にない優位性がある。
二人とも白星を重ねればまだ十分にチャンスがある。
12回戦では、2番手の佐々木(勇)七段(28)と山崎八段による直接対決がある。昇級争いにかかわる大一番だ。
佐々木(勇)七段か澤田七段が敗れた場合、中村(太)七段は勝つと昇級が決まる。
残留争いでは、丸山九段(52)の降級が決定して残り2枠。
一番苦しいのは未だ2勝の郷田九段(51)で、あと一つ負けると降級が決まる。
そして11回戦で敗れた羽生九段(52)も残留争いに巻き込まれている。12回戦では同じく4勝6敗の横山(泰)七段(42)と対戦する。勝てば残留決定だが、直接対決なので敗れるとピンチに陥る。
B級2組
全勝の大橋六段(30)と1敗で順位上位の増田(康)六段(25)が星を伸ばして抜け出した。
二人とも9回戦に勝てば昇級が決まる。
藤井竜王を追う次世代の若手棋士として注目される二人が、いよいよB級1組の舞台に上がるか。
木村九段(49)は2敗目を喫したが、残り2戦を連勝すれば昇級となる。
最終戦の対戦相手である中田宏樹八段(58)は、体調不良で半年ほど不戦敗が続いており心配されている。仮に復帰出来ても、実力者といえど全力を注ぐのは至難の業だろう。
つまり木村九段にとって9回戦が大勝負で、勝てば大きく昇級に近づく。逆に敗れると厳しい状況だ。
1敗で追っていた佐々木(慎)七段(43)は同学年の松尾歩八段(42)に痛恨の黒星を喫した。振り飛車らしい粘り強い指しまわしをみせたが、松尾八段の攻めが的確だった。
C級1組
藤井竜王と同学年の伊藤(匠)五段(20)がさらに星を伸ばした。もし伊藤(匠)五段が昇級すれば、藤井竜王もなし得なかった初参加からの連続昇級となる。
残り2戦は、実力者ながら今期順位戦では星が伸びていない二人との対戦だ。順位が下なので1敗も出来ない状況に変わりはないが、藤井竜王超えの可能性もかなりあるだろう。
コロナによる対局延期があり、1敗で順位最上位の石井六段(30)は9回戦を未消化だ(2月1日に対局予定)。
その他の1敗勢では阿部健治郎七段(33)以外は星を伸ばしている。
直接対決は最終戦の都成七段(33)ー渡辺(和)五段(28)戦のみで、10回戦には行われない。
ただ1敗勢は全員手強い相手との対戦なので、星を落とすこともありそうだ。
C級2組
C級2組では、藤井竜王を追う次世代の若手棋士がさらに星を伸ばした。
全勝を守った服部五段(23)と斎藤(明)五段(24)は昇級まであと1勝としている。
いまの勢いや実力からいっても、このまま昇級を決めそうだ。
残る1枠は古賀四段(22)以下の3名にほぼ絞られたか。
コロナ感染による対局延期により8回戦を未消化の古賀四段は、最終戦に1敗の今泉五段(49)との直接対決を控える。
1敗勢の順位を考えると、この一戦に勝ったほうが昇級となる可能性が高い。
棋士1年目で高勝率をあげている徳田四段(25)は1敗を守っても昇級できるか微妙な情勢だ。
ただ、昨年も結果的には初参加の伊藤(匠)五段が9勝1敗で3位に滑り込んでいる。徳田四段も諦めずに白星を重ねて追走するよりない。
スケジュール
各クラス、2月前半に対局が行われる。
- 2月2日(木)C級2組の半分(服部五段以外の上位陣は全員対局)
- 2月7日(火)C級1組一斉対局
- 2月8日(水)B級2組一斉対局
- 2月9日(木)B級1組一斉対局&C級2組の残り半分(上位陣では服部五段のみ対局)
2月1日にはA級の一斉対局も行われるため、非常に濃密なスケジュールだ。
なお、羽生九段の対局は出場中のタイトル戦との兼ね合いにより、2月14日(火)に行われる。
今節は一人も昇級者が決まらなかったが、次節では昇級者が複数決まる可能性が高い。
残り2戦で1勝すればいい、という状況は、外野から見れば楽に思えるが、当事者からすればまったくもって安心できない状況だ。
そういうプレッシャーの中で対局をするからこそ、ドラマが生まれる。
光もあれば影もある。
B級2組以下は成績下位者に降級点がつき、降級点がたまると下のクラスへ降級する。
今期はそんなに多くの降級者が出なそうな情勢だが、該当する者にとっては精神的にもキツイ時期といえる。
様々な角度から見ることで、順位戦の面白さもまた見えてくるだろう。
2月前半に行われる多くの対局にご注目ください。