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藤井聡太竜王、名人挑戦へ一歩前進。残留争いも熾烈に-第81期順位戦A級は佳境へ-

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
記事中の画像作成:筆者

 18日(水)の対局をもって、第81期順位戦A級は7回戦の対局を全て終えた。

 挑戦争いは、藤井竜王(20)が6勝1敗でトップを走り、広瀬八段(36)・菅井八段(30)・斎藤八段(29)が2敗で追う展開に。

 残留争いは、佐藤(康)九段(53)の降級が決定。残り1枠をめぐる争いは熾烈だ。

 7回戦の注目局の結果と今後の展望を解説する。

 なお、B級1組~C級2組については、25日に記事を掲載したのでご参照ください。

藤井聡太竜王を追う次世代が昇級へ前進!ー第81期順位戦B級1組~C級2組は残り2戦ー

藤井竜王がトップを守る

挑戦争いはほぼこの4名に絞られた。
挑戦争いはほぼこの4名に絞られた。

 1敗と2敗の直接対決となった藤井竜王ー豊島九段(32)戦は、角換わりから前例の少ない戦いに進み、難解な局面での藤井竜王の正確な読みが光った。

 終盤は豊島九段も粘りを見せたが、藤井竜王の指しまわしが正確でスキがなかった。

 これで藤井竜王は1敗をキープ。残り2戦を連勝すれば挑戦権獲得となる。

 次戦は永瀬王座(30)との対戦だ。後手番でもあり、挑戦に向けて大きな難関が待ち受ける。

 上位陣の直接対決となった永瀬王座ー広瀬八段戦は、均衡のとれた時間が長く続く戦いに。

 中盤で広瀬八段の放った手筋への対応を永瀬王座が誤り、そこからは広瀬八段の指しまわしが冴えた。

 広瀬八段は10月以降、藤井竜王以外に負けたのは一度だけ。勝率も7割を超えており、好調を維持している。

 次戦は同じく2敗の斎藤八段と対戦する。挑戦争いのサバイバルマッチだ。

 この2敗対決があるため、8回戦で挑戦者が決まることはない。

 7回戦では菅井八段も2敗を守り、2敗勢は3名。最終戦に広瀬ー菅井戦が組まれていることもあり、誰か一人は2敗を守ってフィニッシュしそうだ。

 そうなると、藤井竜王が残り2戦を1勝1敗で終えるとプレーオフにもつれこむ可能性が高い。

 なおA級の挑戦争いでは、他のクラスと違って順位だけでは決まらない。

 もし3名以上のプレーオフになる場合、順位が下の人から順に対戦することになる。よって3名以上のプレーオフになると順位が影響してくる。

降級枠はあと1つ

残る枠は1つ。危ない順に、糸谷八段→佐藤(天)九段→稲葉八段
残る枠は1つ。危ない順に、糸谷八段→佐藤(天)九段→稲葉八段

 残留争いの直接対決、佐藤(康)九段ー佐藤(天)九段(35)戦は、秒読みの終盤で二転三転。手に汗握る大熱戦となった。

 競り勝った佐藤(天)九段は残留に向けて大きな1勝をあげた。

 対する佐藤(康)九段は全敗で降級が決まった。

 佐藤(天)九段は残留圏内に浮上。残り2戦を連勝すれば残留が決まる、いわゆる自力の状況だ。

 降級圏内に転落したのが7回戦で敗れた糸谷八段(34)。8回戦では稲葉八段(34)との直接対決を迎える。

 糸谷八段は順位がいいため、勝てば最終戦に希望を持って臨める。

 逆に敗れると即降級が決まる可能性もある(佐藤(天)九段勝ちの場合)。

 稲葉八段も最終戦に藤井竜王との対戦が控えるだけに、なんとしても糸谷八段に勝って残留を決めたいところだ。

 前々期は降級が決まった状況で最終戦に糸谷八段と対戦して敗れた稲葉八段。その借りを返す絶好の機会といえる。

8回戦、9回戦は一斉対局

 改めて全体の表をご覧いただこう。表を見ていると、佳境を迎えていることを改めて実感する。

 8回戦、通称「ラス前」は順位戦の一番面白いところと言っても過言ではない。

 8回戦、最終9回戦の対局は一斉に行われる。

 スケジュールは下記の通りだ。

8回戦:2月1日(水)

9回戦:3月2日(木)

 もう一度8回戦を迎えての状況を整理しよう。

 挑戦争いは、トップの藤井竜王が勝っても2敗同士の直接対決があるため決まることはない。

 残留争いは、佐藤(康)九段の降級がすでに決まっている。8回戦で佐藤(天)九段が勝って糸谷八段が敗れると糸谷八段の降級も決まり、2枠すべて決定する。

 いったいどのような展開になるのか。予想するのは非常に難しい。

 まずは2月1日のラス前にご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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