トランプ政権、通信分野で中国徹底排除の構え アリババ集団やバイドゥ、テンセント名指し批判
米国務省は8月、米国内通信分野における中国企業の排除に向けた新たな方針を明らかにした。
これは、これまでの「クリーン・ネットワーク計画」と呼ぶ取り組みを拡充するもので、「アプリストア」「クラウドサービス」「アプリ」「通信キャリア」「海底ケーブル」の5分野で中国企業を排除するものだ。
「中国共産党の利益になるような働きをする中国企業を徹底排除する」とし、同盟国の政府や業界にも取り組みに参加するよう呼びかけている。
TikTok以外の中国製アプリも排除
まず、アプリストア分野では「信頼できない中国製アプリ」の排除を目指すとしている。
米CNBCやロイターなどの報道によると、ポンペオ国務長官は、中国に親会社がある「TikTok(ティックトック)」と「微信(ウィーチャット)」を名指しし、「米国民の個人データに対する大きな脅威だ」と説明。
「中国製アプリは我々のプライバシーを脅かし、コンピューターウイルスをまん延させ、プロパガンダや偽情報を拡散させる」と糾弾した。
トランプ米大統領はTikTokが国家安全保障を脅かすとして問題視。8月14日には、親会社の中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)に対し90日以内(今年11月中旬まで)にTikTokの米事業を米企業に売却するよう命じる大統領令に署名した。売却協議が不成立に終わった場合は利用を禁じるとも警告している。
また、トランプ政権は7月、産業スパイの拠点になっていたとして、テキサス州ヒューストンの中国総領事館を閉鎖した。米政府はこの新方針で、中国に対する断固とした措置が広範囲に及ぶことを示したようだ。
中国のクラウドサービス企業を排除
ポンペオ国務長官は、クラウドサービスを手がける中国・アリババ集団や中国・百度(バイドゥ)、中国・騰訊控股(テンセント)も批判している。
「これら中国企業を介して外国の敵がアクセスできるようなクラウドシステムに、新型コロナウイルスワクチンの研究成果のような知的財産や、米国民の大切な個人情報を置いてはならない」と述べている。
クラウドサービスに関する対策については、商務省や国防総省と共同で取り組むという。
CNBCによると、米政府当局者はかねて、中国による知的財産の窃盗は数十億ドル(数千億円)の経済損失と数千人規模の雇用喪失を生じさせ、国家安全保障を脅かしていると批判していた。
中国のスマホメーカーも批判
ポンペオ氏は、中国・華為技術(ファーウェイ)などのスマートフォンメーカーも「信頼できない」と批判。
米国や同盟国の信頼できるアプリを、こうした中国メーカーのアプリストアに提供しないようにするとし、開発者に中国のアプリストアから自社のアプリを削除するよう促した。同氏は「人権侵害者との提携はやめるべきだ」とも訴えた。
さらに同氏は、中国の通信事業者が米国の通信ネットワークに接続できないようにすることも重要だと指摘。このほか、米国と世界をつなぐ海底ケーブルについて、中国の諜報活動に妨害されてはならないとし、各国のパートナーと協力し、不正侵入を阻止するとしている。
- (参考・関連記事)「米中関係悪化の中、中国AI企業がアップル提訴 (小久保重信) -Yahoo!ニュース個人」
- (このコラムは「JBpress」2020年8月7日号に掲載された記事をもとにその後の最新情報を加えて再編集したものです)