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【獣医師警告】台湾は狂犬病の清浄国・地域から削除 日本はどうしたらいいのか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

2月7日、群馬県伊勢崎市で四国犬が小学生を含む12人を噛みました。その犬は、狂犬病の予防注射を打っていなかったので、狂犬病検査を3回しましたが、陰性だったと群馬テレビは伝えています。

この犬の飼い主は、あわせて7頭の四国犬を飼育していて、2月27日までに7頭すべての狂犬病の予防接種も実施しました。その上で、飼い主の意向により7頭すべてが県外の個人に譲渡されたということです。

SNSで炎上してしまう時代であり、この前の犬は殺処分をされませんでしたが、もうこの飼い主は、犬を飼えない状態になりました。四国犬は、中型犬なので散歩に行く必要がありますが、このような事故を起こすと散歩も行きにくくなります。

この四国犬は、狂犬病の予防注射を打っていなかったので、狂犬病の予防注射が話題になりました。

「狂犬病の予防注射は必要ない」などのフェイクニュースがSNSに投稿されています。

お隣の台湾が、2013年7月25日に、農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域から(指定地域以外の条件適用は2013年7月17日から)削除されました。

日本は、台湾と同じように海に囲まれていますが、この狂犬病についてどのように考えたらいいか見ていきましょう。

なぜ、台湾が狂犬病の清浄国・地域から削除されたか?

(農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域)「動物検疫所」のサイトより
(農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域)「動物検疫所」のサイトより

台湾は、日本と同じように、周りが海に囲まれています。なぜ、台湾は狂犬病の清浄国・地域から削除されたかを見ていきましょう。

2013年7月25日から、台湾は狂犬病の清浄国・地域から削除されました。その経緯を見ていきましょう。

「農林水産省 台湾における狂犬病の発生について」のサイトより
「農林水産省 台湾における狂犬病の発生について」のサイトより

台湾は、2013年から野生動物の狂犬病のモニタニングを実施していました。2013年6月に野生動物であるイタチアナグマが狂犬病に感染していることを確認したと発表しました。

それに引き続き、2013年8月14日、狂犬病に感染していたイタチアナグマに噛まれた犬が、9月6日に発症して、安楽死。

その後、狂犬病と確定診断されました。それで、狂犬病の清浄国・地域だったのを削除されたのです。

イタチアナグマの狂犬病が犬へと種を超えて広まってしまいました。台湾では2013年に、1959年以降で初めてとなるイタチアナグマとジャコウネズミと犬の狂犬病の感染が確認されました。

つまり54年ぶりに狂犬病が発生して、野生動物から犬へと感染しました。

台湾では、2023年に捕獲されたイタチアナグマから狂犬病ウイルス陽性が出ています。そのため、野生動物の死骸を発見した場合は、動物管理署に届け出て処理してもらい、検査をおこなってもらう方がいいです。

台湾では、ペットを捨てないこと、野生動物と接触したり、捕獲したりしないことを呼び掛けています。台中市の保健所のサイトによりますと、毎年、犬や猫には狂犬病の予防注射をするように義務付けられています。違反者には、罰金が科せられています。

日本の現状

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イメージ写真写真:イメージマート

日本は台湾と同じように海に囲まれています。1957年以降、日本では狂犬病は発生していません(海外で犬に噛まれて帰国した人は除く)。つまり日本は、もう60年以上、狂犬病が発生していないのです。

こういうことから、日本では狂犬病の予防注射を打たなくていいという人もいるのでしょう。しかし、前述の台湾の例を読んでいただけると、日本も台湾と同じように、狂犬病が発生する可能性があるのです。野生動物が狂犬病ウイルスで陽性ということがあるからです。

まとめ

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イメージ写真写真:アフロ

狂犬病は発症すれば、致死率100%の病気です。

愛犬が、狂犬病になればもちろん治療法はなく、安楽死しかないのです。

群馬県の四国犬が人を噛んだとき、狂犬病の予防注射を打っていなかったので、これだけ狂犬病の予防注射が話題になったのです。

海外の話ですがベトナムでは、毎年70人以上が狂犬病で死亡しており、狂犬病患者のほとんどは狂犬病に感染している犬に噛まれたことが原因です。

毎年四月から、日本では行政により狂犬病の予防注射が始まります。このような背景を知り、犬の飼い主は、ば狂犬病予防法により狂犬病の予防注射を受けさせることが義務になっています。年1回の狂犬病の予防注射を受けさせない飼い主には、20万円以下の罰金が科される可能性があります。

SNSのフェイクニュースを信じるのではなく、科学的に正しい知識を持ち行動しましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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