ついに嵐がやって来た!?不気味な日米両国のスキャンダル
トランプ大統領が「ウクライナ疑惑」で窮地に立たされている。ウクライナのゼレンスキー大統領に電話でバイデン前副大統領のスキャンダルを捜査するよう促したことが米国の情報機関員によって内部告発された。それによって民主党のペロシ下院議長が大統領弾劾に持ち込むことを決断したからである。
その前の「ロシア疑惑」でペロシ議長は弾劾に否定的だった。下院で訴追しても共和党が多数の上院で弾劾される見通しはない。逆に追及する民主党に国民の批判が集まり、大統領選挙を不利にする可能性があった。だからトランプは弾劾するよう民主党を挑発していた。
しかし今度の「ウクライナ疑惑」でトランプは慌てている。なぜならニクソン元大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」と構図がよく似ているからだ。「ウォーターゲート事件」では、大統領の職権乱用に加え、情報のもみ消しを図ったことが批判された。
「ウクライナ疑惑」もトランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話記録をホワイトハウスがアクセスできなくしており、情報隠蔽が図られている。米国では情報のもみ消し、隠蔽が最も嫌われる。国民の知る権利が民主主義にとって「命」だからだ。
まだ共和党内から反トランプの動きが出ているわけではない。このままいくと民主党議員の多い下院で訴追が決まり、上院の弾劾裁判では53人いる共和党議員のうち20人が賛成に回らなければトランプは弾劾されない。
しかしワシントンでは投票が無記名になれば、共和党議員から30人以上の賛成が出て弾劾は成立すると噂されている。世論が弾劾調査の必要性を認める方向に動いているからだ。これから下院の委員会で証人喚問などが次々行われるが、さらなる新事実が明るみに出れば世論の動きは加速される。
あくまでも可能性だが「情報のもみ消し」がトランプの首を絞める可能性はある。共和党内の空気が変わればトランプも危うい。これまで米国ではアンドリュー・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ビル・クリントンの3人が弾劾裁判にかけられた。ジョンソンとクリントンは裁判で無罪となり、ニクソンは裁判の前に辞任した。トランプは歴史上初の弾劾で有罪となる大統領になるのかどうか、米国政治に嵐がやってきたのである。
一方の日本政治に嵐などやってきていないと思っている日本人は多いかもしれない。「安倍一強」で日本の政治は安定している。野党の動きを見ればその思いはますます強くなる。しかし東京電力の旧経営陣3人に、東京地方裁判所が「福島原発事故の刑事責任なし」と無罪判決を下した1週間後の26日、関西電力の経営陣が原発の地元自治体の元助役から分かっているだけで3億2千万円の金品を受け取っていた事実が明らかになった。
共同通信社の先行記事を各社が後追いしたようだが、端緒は内部告発である。今年の3月から怪文書がメディアに出回っていたという。誰の告発か。国税の可能性が高い。国税はいつ事実を掴んだか。去年の1月に原発の地元である高浜町の建設会社を税務調査したところその事実を掴んだ。
その時の国税庁長官は誰か。「森友疑惑」の情報隠蔽で有名になった佐川宣寿元財務省理財局長である。そして現場の金沢国税局が税務調査を始めた2か月後に佐川長官は懲戒免職となり3日9日付で依願退職した。その後は藤井健志国税庁次長が長官心得を兼務し、今年の7月5日まで国税庁長官は不在だった。
国税庁長官が不在の期間はおよそ1年4か月あるが、佐川長官が辞めて丁度1年後の今年の3月10日付で告発文書が関西電力に届いたと週刊朝日のデジタル版が伝えている。関西電力の岩根社長宛てで「関西電力が第2の日産にならぬよう、岩根社長にご忠言申し上げます」とある。
「第2の日産」とはどういう意味か。日産の西川前社長は経済産業省の言うままにゴーン元会長を東京地検特捜部に逮捕させ、それが海外メディアの批判を浴びたことを指すのか。それとも3月6日にゴーン元会長の保釈を東京地裁が認めるという異例の決定があったからそのことを指しているのか。
そして3月はこの金銭スキャンダルの中心人物高浜町元助役の森山栄治氏が死亡した時期である。地元で原発推進に絶大なる力を発揮した森山氏には、原発反対派の町長を「暗殺」させようとしたり、関西電力幹部を脅しつけたり数々の噂があるが、その人物が死亡したことで、これまで封じ込められてきた原発の「闇」が表に出てきたのだろう。
27日の関西電力の記者会見で社長らが、森山氏から贈られた金品を返そうとすると脅されたと言った話は嘘ではないと思う。政治の世界ではよくある話だ。表に出れば手が後ろに回ることをやらないと相手から信用されない。互いに共犯関係にならないと信頼は生まれないのが政治の世界である。
森山氏は政治家ではないが、地方の役人としてそういう手法で大企業や政治家を相手にのし上がってきたのだろう。だから無理にでも関西電力幹部に金品を贈り、それを受け取らせることで共犯関係になり、自分の言うことを聞かせ、裏切りをさせないようにしてきた。
従って関西電力幹部が金を還流させるために森山氏を利用したという見方は当たらない。実態はその逆で金を受け取らせることで森山氏の方が上位に立ってきた。関西電力は言いなりにならざるを得なかった。
官邸も経済産業省も「由々しき事態だ」として電力会社を責めているが、森山氏のような原発推進派を見て見ぬふりをしてきたのは経済産業省の方なのだ。自分は手を汚さずに原発推進が可能になってきたのだから。
今回の税務調査で指摘されているのは、東日本大震災で福島原発事故があった2011年から2018年までの金品の授受である。2011年と言えば原発はもう止めようというのが国民の感情だった。原発推進派は何としてもその危機を乗り越えなければならなかった。
そして安全基準を厳しくして危機を乗り越えようとした。そのためにも電力会社に原発からの撤退を許してはならない。そして安全基準を厳しくすることで地元建設会社も潤う。それがこの金の還流の背景にあるように私は思う。
2011年当時のことを思い起こせば、橋下大阪市長や嘉田滋賀県知事らが原発再稼働に否定的だった。それを変えたのは資源エネルギー庁次長の今井尚哉氏である。今井氏の説得で二人は考えを変えた。その今井氏こそ安倍総理を操り、私の言う「安倍二人羽織」の頭脳部分の人物である。
だから安倍政権は原発輸出政策を推進し、英国、ベトナム、トルコ、リトアニア、台湾、米国などに日本の原発を輸出しようとしたが、それらはすべて失敗した。「今井が頭脳」の「安倍二人羽織政権」は原発再稼働と原発輸出を「成長戦略」と位置付けていたが総崩れとなった。
そして今、原発推進の「闇」が内部告発によって浮かび上がってきたのである。原発は日本の国家事業であり、それに反対する者は非国民である。だから東京電力の福島原発に慎重だった佐藤栄佐久元福島県知事は、特捜検察から「あなたは国家にとってよろしくない。抹殺する」と言われて逮捕され、収賄金額ゼロ円で有罪判決を受けた。
東京電力の福島原発事故の責任を問わない検察も、無罪判決を出した裁判所も原発推進の側であり、森山氏が行った推進工作を断罪する側ではない。本来は国税庁もその側だが、それがなぜこの告発をやったのか。
これは私の想像だが、森山氏に問題のあることを国税は前から分かっていた。そこに「森友疑惑」で情報隠蔽をた佐川氏がなぜか出世をして国税庁長官になった。情報隠蔽のために財務省の職員が自殺に追い込まれたにもかかわらずである。それを許せない気持ちになる国税庁職員がいてもおかしくない。
だから佐川長官の懲戒免職が決まる頃を見計らって建設会社の税務調査に入った。佐川氏に情報隠蔽を指示したのは「安倍二人羽織」の頭脳である今井秘書官と思っていたかもしれない。その今井秘書官は原発推進派の中心人物だ。この際、原発の「闇」を国民に知らしめて自殺した財務省職員を弔おうと考えた可能性もある。
国民は関西電力の幹部たちが悪で、私腹を肥やすために電力料金を還流させたと思うかもしれない。事件は政治とは無関係にその方向で終わるかもしれない。しかし私には内部告発者が権力の中枢を撃つように見せていないが、当人たちにだけは分かるように告発の時期を計算したように思える。
分かる人間だけに分かれば、いずれそれは権力闘争に波及する。目には見えない形だが、日本の政治にも嵐がやって来たと私には思えるのである。不気味なスキャンダルが日米両国で炸裂した。