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女子ラグビー始動。浅見HCの初夢は。

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

新しい年が明ける。10日、女子ラグビーの7人制(セブンズ)日本代表候補が始動した。代表選考がかかっているから選手は緊張している。小柄な浅見敬子ヘッドコーチも緊張と覇気を漂わせていた。

今年、“トシ女”。ラグビーをとことん愛し、いつもジャパンをいかに強くするかを考えている。実は初夢はラグビーの合宿風景だった。

35歳は笑いながら説明する。

「ちょっとうなされていました。ラグビーのプレッシャーで。ははは、冗談ですが。合宿が1年の最初(の活動)になるので、どういう風にもっていこうか考えていたようです。しんどそうな練習でしたね」

初夢に見るほどの合宿がスタートした。東京・西が丘の味の素ナショナルトレーニングセンター。みんなで世界のトップクラスの試合をビデオで見て、フィットネステストを行った。陸上トレーニング場でボールを扱いながら、さらなるフィットネス強化に励んだ。寒気の中、パスをつなぎ、走り続ける。スクラムを組み、また走る。まったく、よく走る。

ジャパンの持ち味は運動量とタックルである。これで、ことし6月の7人制ワールドカップ(W杯)の出場権を確保した。継続して体力とコンタクト力を高めていくと同時に、ことしは攻撃力のアップを図っていく。世界トップクラスと比べると、どうしても日本は個々のパワーやスピードでは劣ってしまうので、そこをアジリティ(俊敏性)や緻密な連係プレーでどう補っていくのかがポイントとなる。

「これから強化していくのはアタックの部分です。基本的なポジション取りなども大事にしていきたい。運動量を生かして、攻撃をする時間を増やしていけるようなアタックスキルを身につけていきたい」

ジャパンにとって、いわば試練の年である。2月の米国大会に始まり、3月の香港大会、広州大会と続き、6月のW杯に挑むことになる。タフな相手との試合が続くので、心身のコンディショニングも大事となろう。

「どんなチーム相手にも3トライ以上を目指します。アタックにこだわっていく。すごく強い相手とやれるので、ワクワクしています。半面、選手がけがしないよう、うまくコントロールしていかないといけません。チームマネジメントも重要かなと思います」

あくまで目標は2016年リオデジャネイロ五輪の金メダルである。もちろんW杯でも世界一にチャレンジする。「打倒!中国」、「打倒!コア6」である。

コア6とは、ワールドシリーズの軸となる世界トップクラスの6カ国、つまりニュージーランド、豪州、イングランド、オランダ、カナダ、米国。

浅見HCは昨年3月、都内の学校の保健体育講師を辞め、ジャパンのHCに就任した。女子代表としては初のフルタイムHCである。モットーが「使命と責任」。

先日、色紙には『信念』と書いた。

「信じる念じる、です。やってきたことを貫き通したい。ぶれずに、逃げずに。信念を大事にしていきたい」

では、信念とは。

「(五輪)金メダルまで突っ走ることです」

巳年は脱皮の年でもある。さらにジャパンが一皮むけるのか。飛躍に向け、ことしは「ホップ・ステップ・ジャンプ」の「ステップ」といきたいではないか。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2024年パリ大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。酒と平和をこよなく愛する人道主義者。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『まっちゃん部長ワクワク日記』(論創社)ほか『荒ぶるタックルマンの青春ノート』『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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