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かつては中間駅だった妙見の森ケーブルの終着駅 能勢電鉄鋼索線 ケーブル山上駅(兵庫県川西市)

清水要鉄道ライター

あと2ヶ月で廃止を迎える妙見の森ケーブル。その山上側にあるのがその名もずばり「ケーブル山上(さんじょう)」駅だ。ケーブルの駅としては山上側だが、駅があるのは山の中腹と言っていいような場所で、かつては「中間(ちゅうかん)」駅を名乗っていた。なぜ「中間」駅が「山上」の終着駅になったのか。その謎にはこの駅の歴史が関係している。

駅舎内
駅舎内

この駅が妙見鋼索鉄道の「中間」駅として開業したのは大正14(1925)年8月1日。今から98年もの昔のことだ。当時は文字通りの中間駅で、ケーブルカーはここからさらに山の上の「妙見山」駅まで伸びていた。山麓の滝谷(現:黒川)から中間までが下部線で、中間から妙見山までが上部線で、中間駅は二つの乗換駅だった。奈良県の生駒ケーブルに乗ったことのある方なら宝山寺駅をイメージしていただければわかりやすいだろう。しかし、乗換駅としての歴史は20年と経たずに断ち切られてしまう。戦時中の昭和19(1944)年2月1日に妙見鋼索鉄道が不要不急線として廃止されてしまったのだ。二つの路線のうち下部線は昭和35(1960)年4月22日に能勢電鉄鋼索線として復活するが、上部線はケーブルとして復活することができなかった。代わりに区間を短縮してリフトとして復活している。

待合室
待合室

では、そんな歴史を持つケーブル山上駅を見ていこう。二階建ての駅舎は昭和35(1960)年4月22日の再開業時に建てられたと思われるもので、平成25(2013)年3月16日の改装でログハウス風のデザインになった。入って左手に切符売り場、右手に待合室があり、待合室の奥には足湯への入口もある。待合室内ではアイスクリームも販売されているが、係員は常駐していないので、購入の際は切符売り場の方へ声をかける必要がある。

改札口
改札口

黒川駅と比べると改札口は狭い。ケーブルカーが到着すると、降車客が全て降りてから乗車客の改札となる乗降分離式だ。降車の際は切符が確認されることはなく、集札箱に自分で入れるスタイルだ。もちろん記念に持って帰ることもできる。

ホームと車両
ホームと車両

ホームは黒川駅同様の階段状。黒川駅と比べるとホームの傾斜はきつく、階段の間隔は狭い。反対側のホームはかつて降車専用ホームだったようだが、近年は使われていない。駅名標は旧降車ホームにのみ掲げられている。

ホーム上屋
ホーム上屋

ホームを覆うのは黒川駅と同じく年季の入った木製上屋。駅舎は再開業時に建て替えられたと思われるものだが、上屋は大正14(1925)年8月1日開業時のものかもしれない。ホームから黒川駅への線路を見下ろすと、あまりの急傾斜に思わず身がすくむ。

日本に二つの標準軌ケーブルカー
日本に二つの標準軌ケーブルカー

令和5(2023)年10月1日現在、日本には24のケーブルカー(※鉄道事業法に基づくものに限る)があるが、そのほとんどはJRなどと同じ1067ミリメートル軌間(狭軌)である。阪急電車や新幹線と同じ1435ミリメートル軌間(標準軌)を採用しているのは日本に二つだけで、そのうち一つがこの妙見の森ケーブルだ。もう一つは十国峠ケーブルカーだが、このケーブルカーは上部線の機材を転用して造られたものである。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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