東京都の病床使用率30%台 緊急事態宣言の発令要件を満たさず違法の可能性も
東京都が新型コロナウイルス感染症の医療提供体制の指標について、現時点では国基準で「ステージ3」に当たると判断していることが、4月22日のモニタリング会議で明らかになった。国の基準では病床使用率が50%以上で「ステージ4」と判断されるが、都の病床使用率は20〜30%台となっているためだ。
特措法の施行令では「医療提供体制に支障が生じている」ことが緊急事態宣言を発出する要件だ。政府は「ステージ4」を宣言の目安とする基本方針を示している。
東京都が「医療提供体制に支障が生じている」という要件を満たしていない間に、緊急事態措置として休業要請・命令などの私権制限を行った場合、違法の疑いが生じると考られる。
東京都の病床使用率は4月21日現在「ステージ3」
4月22日の東京都モニタリング会議では、「人口10万人あたりの新規陽性者数」は33.5人で、国の指標の「ステージ4」(10万人あたりの新規陽性者が25人以上)に当たると報告された。「人口10万人当たりの全療養者数」も「ステージ4」に当たるとした。
一方で、「接触歴等不明者数・増加比」「検査の陽性率」「入院患者の病床使用率」「入院率」「重症患者の病床使用率」については、いずれも「ステージ3」だった。
東京都モニタリング会議の資料(4月22日)より一部抜粋
※病床全体のひっ迫具合を示す、最大確保病床数(都は6,044 床)に占める入院患者数の割合は、4月21日時点で26.6%となっており、国の指標におけるステージⅢとなっている。(20%以上でステージⅢ)
入院率(全療養者数(入院、自宅・宿泊療養者等の合計)に占める入院者数の割合)は4 月21日時点で30.2%となっており、国の指標におけるステージⅢとなっている。(40%以下でステージⅢ)
※重症者用の最大確保病床数(都は1,024 床)に占める重症者数の割合は、4月21日時点で35.9%となっており、国の指標におけるステージⅢとなっている(最大確保病床の占有率 20%以上でステージⅢ)。
(東京都モニタリング会議「感染状況・医療提供体制の分析」より)
緊急事態宣言とまん延防止措置の発出要件の違いとは
改正特措法で新設されたまん延防止等重点措置は「医療の提供に支障が生ずるおそれがある」ことが要件となっているのに対し(施行令5条の3)、緊急事態宣言の発令は「医療の提供に支障が生じている」ことが要件となっている(施行令6条)。
つまり、まん延防止等重点措置と緊急事態宣言の要件は、医療逼迫のおそれがあるか、既に逼迫が起きているか、で区別されている。
これを受け、内閣官房のサイトに掲載された資料にも、緊急事態宣言は「病床使用率50%(以上)」、まん延防止等重点措置は「病床使用率20%(以上)」と記されている。
東京都などへの緊急事態宣言を出すにあたって作成された政府の基本的対処方針(案)も確認したところ、「ステージ4」を目安に緊急事態宣言を出すとの考え方は変更されていない。
関西圏と東京都は状況が異なる
東京都では新規陽性者数は増加傾向にあるものの、65歳以上はほとんど増えていないこともあり、入院患者、重症患者ともに3月初めから横ばいで推移している。
救急の搬送先が20分以上決まらない事案(救急医療の東京ルール)の件数は、3月よりやや減少傾向にある。
一方、大阪府は、軽症中等症病床使用率は79.9%、重症病床使用率は100%に達したと発表。兵庫県、京都府も病床使用率は50%を超えている。
大阪府など関西圏は、医療逼迫の指標が「ステージ4」にあたり、厳しい逼迫状況が現実化しているため、緊急事態宣言の発令要件を満たすと考えられる。
東京都の確保病床数、3月と変化なし
東京都は、病床使用率が50%を下回っている一方で、今後の急拡大に備えた確保病床の拡充を確実に進めているかというと、必ずしもそうではない。
菅義偉首相は3月5日の記者会見で、緊急事態宣言を2週間再延長を表明した際、「次に感染者数が多くなっても、しっかりと病床も確保できる、そういう体制をこの2週間の間にしっかりつくっていきたい、このように思います」と述べていた。
しかし、東京都の確保病床数は3月と4月で全く変化していないことがわかった。
都が3月上旬に確保していた病床数は5048床(国基準の重症者病床1024床、都基準の重症者病床332床)。4月22日のモニタリング会議で公表された資料でも、確保病床数は同じだった。