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帝京大学の「緩み」の直し方。奥井章仁が語るチームの「強さ」とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
帝京大学の奥井(写真は対抗戦期間中)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 帝京大学ラグビー部の強さの秘密は。

 1年時から主軸を張る奥井章仁が、「子どもだった」という下級生時代を振り返りながら述べた。

 12月25日、東京・秩父宮ラグビー場。2連覇を目指す大学選手権の準々決勝で、同志社大学(同大)を50―0で破った。

 この日は、加盟する関東大学対抗戦Aを優勝した約3週間前以来の試合となる。試合勘が不十分だったためか、エラーや反則に泣いた。

 渦中、3年目にしてリーダー格の奥井は要所で引き締めた。ナンバーエイトとして、相手のミスを誘うタックルを繰り出した。

 試合後は報道陣に対応するなか、進化の過程について語った。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

——2年生から3年生になる際、自分を見つめ直したと聞きます。

「ふと、自分って、まだまだ全然ダメやなと(感じた)。上級生は周りも見なければいけない。ただ、まずは自分ができていないと周りに示せないと皆が動いてくれない。そこで、色々と考えた時、『自分って、まだまだ子供だったんだな』と。

シーズン中も見返していた自分のプレーを(改めて)見返すと…。全部、ですかね。プレーの幅も狭かった。自分の好きなことだけをして、苦手なことへはあまり好意的ではなかった。先輩方もすごかったので、甘えていたところもあって。

ただ、上級生は周りから頼られる存在にならないといけない。その時、自分はどうだったのかと考えて、だめだったと気づけた。そこから自分を変えられて、地道にやっているという感じです」

——チームは2017年度までの9連覇が途切れたなか、再び黄金期を作ろうとしている。

「ずっと帝京大学にいい文化が残っている。負けて連覇が途切れて、なかなか勝てなかった間も、踏ん張って、頑張って、いまがある。僕たちだけの力で勝てるというのはない。悔しい思いをした先輩方もいて初めて、帝京大学のラグビー部は成り立っている」

——変わらぬ文化とは。

「すでに色々と放送、報道されていることが、残っている(雑用を上級生がおこなうことなどを指すか)。1年生の頃はやりたいようにさせてくれて、2年生の頃も好きにさせてもらって。上級生になった時に『責任感とは』『どうしていかないといけないか』など(を意識)。時間が経つほどに考えは深くなっていく。1年生の頃に聞いた話を、いま聞いたら違うように考えられたりもします」

——奥井選手は試合中、よく具体的な修正点を皆に伝えているように聞こえます。

「スクラムであれば江良(颯=3年生フッカー)が話したり、トライを獲った後なら主将(松山千大)が喋ったりもします。(自身は)獲り急いでいる場面なら落ち着かせて、落ち着きすぎている場面なら締めないといけない、と意識してはいます」

——点差が開いてからも、基本的なことに立ち返るような言葉を発しているような。

「80分間、何があろうと僕たちのラグビーは変わらない。帝京大学は80分間、気を抜かずに、1個、1個、丁寧にプレーするからこそ強さが出せます。絶対に、緩めてはいけないところです。常々、言うようにはしています」

 隙がないように映る。特筆すべきは、隙がないように映る状況を組織的、もしくは主体的に作り上げていることだろう。

 対抗戦終了後、今回の同志社大学戦に向けてやや弛緩したと取れる瞬間があった。ある選手の証言。

「緩んでいたわけではないですが、ブレイクダウンに入る姿勢が高くなるなど、少し(練習中の)プレーが軽くなっていたことがあった」

 今季のリーダー陣は、それをそのままにしなかったのだ。

「最初のほうはまだ(次の試合まで)時間があるからか、少し気の抜けた時間を過ごしてしまったのですが、『このままではいけない』『本当に日本一になるために何が必要か』(と考えた)。相手は何をするかわからない。自分たちは自分たちのできる最大限の準備をしようと」

 この件を問われた奥井は、ある印象的なゲームを話題に挙げた。

「(対抗戦で)優勝して、緩めている気持ちがなくてもどこかで緩んでいた。そこに皆で話して、皆で気づけた。あとは、4年生試合で4年生の思いを感じ取れて…」

 12月中旬、慶應義塾大学と練習試合を実施。いずれも試合のメンバーに絡まない最上級生を出場させていた。奥井は続ける。

「4年生が、本当の帝京大学のラグビーを見せてくれた。こういう人たちがいるから、自分たちもプレーできているんだと感じさせてくれた。自分たちが(試合に)出られているのって、当たり前じゃないんだな…と。そこからはひとつひとつのプレー、1日1日に価値を出していけました」

——それにしても、「緩んでいた部分」に自分たちで気づけたのが大きかった。

「いろんな人が、いろんな角度からアプローチしてくれて、学生に気づかせてくれたところもあったと思います。そこも踏まえて、帝京大学のよさかなと。自分たちで気づかせるようなアプローチがあって、自分たちで気づくからこそ同じミスを繰り返さない」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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